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2019年8月13日(火)

認可外施設で簡単検査 課題は?

新型出生前検査は、妊娠中の女性の血液を採取するだけの検査で、おなかの中の赤ちゃんに重い障害の原因となる染色体の異常があるかどうかが分かります。
この検査を受けられるのは、主に染色体異常のある赤ちゃんが生まれる確率が高いとされる35歳以上の妊婦です。
検査の目的は、生まれてくる赤ちゃんをどう迎えるのか、出産に備えることです。
検査の前と後では、遺伝に関する専門知識をもった医師によるカウンセリングがあります。
検査を本当に受ける必要があるのか、もし異常が分った場合にはどのような支援を受けられるのかなどを知ることができます。
検査は、学会の認可を受けた、大学病院などで行われ、6年前に始まって以来、7万人以上が受けてきました。
ところがいま、学会の認可を受けずに、いわば簡単に検査を提供する施設が急増し、新たな問題が起きているといいます。

“認可外施設で簡単に” 広がる新型出生前検査

都内のある産婦人科の診療所では3年前、認可外で新型出生前検査を始めました。
これまで延べ7,000人が検査を受けたといいます。
静岡県に住む37歳の女性は高齢出産の不安を解消したいと新型出生前検査を受けることにしました。

「検査できるんだったら先に知って、安心して妊婦生活を送りたいなというのがきっかけです。」

この施設では、ほかの妊婦たちと一緒に、検査の説明が行われます。
女性は、年齢的には認可施設で検査を受けることもできますが、あえてこの施設を選びました。
選んだ理由は手軽さです。
説明はおよそ10分。
検査の結果は10日前後で郵送されます。
費用はおよそ20万円です。

「短時間でうれしいです。
やっぱりこの期間ってつわりがひどいので、本当に10分でも1分でも早く帰りたいので。」

妊婦が抱える不安を取り除くことができる。
この施設の院長は、認可外でも検査を行うメリットを強調します。

奥野幸彦院長
「ある程度正しく、安全に検査ができると。
で、妊婦さんの不安を解消できるメリットがある。」

認可外の施設では、採血をしたら、海外の検査会社に送るのがほとんどです。
簡単に行えることもあって、新型出生前検査はいま、精神科や美容外科にまで拡大しています。
しかし、認可外の施設では、おなかの中の赤ちゃんに障害があると分かった場合のサポート体制が不十分だと、学会は指摘します。

日本産科婦人科学会 藤井知行前理事長
「最悪の状態だと思っている。
多くの妊婦さんが非常に混乱して右往左往している状況。」

39歳だった2年前、認可外施設で検査を受けた女性は、妊娠10週のとき、インターネット広告が目にとまり、検査を受けました。

2年前 認可外施設で検査受けた女性
「なんとなく受けてみようかなと思ったのがきっかけです。
早く安心しておきたいなと。」

しかし、後日、施設から送られてきた結果通知を見て、混乱に陥りました。
「陽性」という赤い文字。
「13トリソミー」と書かれていました。
重い障害や死産につながることもある染色体の異常です。
すぐに検査した施設に電話をしましたが、医師からは思わぬ言葉が返ってきました。

2年前 認可外施設で検査受けた女性
「珍しいものにひっかかったねって言われて、13トリソミーというのがどんなものなのかというのは、インターネットを見れば分かってもらえると思うから、わざわざ受診しに来なくていいよって。」

重度の障害のある子どもを産んで育てることができるのか。
認可施設なら受けられるはずのカウンセリングは全くありませんでした。

どうしたらよいか、分からなくなった女性。
別の施設で診察を受けると、おなかの中の赤ちゃんは、すでに亡くなっていました。
女性は、赤ちゃんを迎え入れる準備のためではなく、自分の不安を解消する手段として検査を受けてしまったと、いまでも後悔しているといいます。

2年前 認可外施設で検査受けた女性
「1人の大切な命を考えないといけないのに、簡単な検査を受けてしまったことを深く反省しましたし、何より亡くなった赤ちゃんに申し訳ないことをしたなと、それは今でもずっと思います。」

赤ちゃんの障害が分かった場合、人工妊娠中絶を考える家族が多いのも現実です。
専門家は、判断材料が少ないまま、検査を受けた女性や家族が戸惑うことのないよう、サポートが必要だと指摘します。

生命倫理に詳しい 櫻井浩子東京薬科大学教授
「親御さんたちが判断できるだけの情報を、しっかりと担保することが一番大事かなと思います。
技術だけが進むのではなくて、それを支える支援も共にセットにしてこの検査自体を議論していく土壌が必要かと思います。」

日本産科婦人科学会は、検査の実施に関する指針を緩和して、認可施設の数を増やそうとしています。
また、国も今の状態を問題視していて、この秋にも検討会を設けて検査のあり方を協議することにしています。
ただ認可施設でも、カウンセリングを行う医療者が、障害のある子どもがどう成長していくのかや、どのような生活を送るのか、などについて知らず、妊婦が最も知りたい情報が十分に提供できていないと専門家は指摘しています。

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