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2019年8月4日(日)

ラグビーW杯での躍進へ 進化する“桜ジャージ”

来月(9月)に迫った、ラグビーワールドカップ。
日本代表のジャージ、通称「桜ジャージ」の、ワールドカップを戦う新たなデザインが先月(7月)発表されました。
武士道の精神で世界と戦うという意味を込めて、「かぶと」をモチーフにしたデザインとなっています。


ラグビーのジャージといえば襟付きを想像する人も多いかもしれませんが、歴代の日本代表ジャージでは2000年以降、動きやすいように改良が重ねられ、今では襟もなくなり、選手の体にフィットした形状が主流となっています。
さらに素材や機能も年々、進化しています。
極秘に進められてきた開発の舞台裏を取材しました。

進化する“桜ジャージ” 開発の舞台裏に迫る

先月、岩手県釜石市で行われたテストマッチで、日本代表の「桜ジャージ」が実戦で初めて披露されました。
従来に比べて最大12%の軽量化を果たした新たなジャージは、選手の力を最大限引き出す機能や工夫が盛り込まれています。

この桜ジャージを作ったのは、富山県小矢部市に開発拠点を置くスポーツアパレルメーカーです。
このメーカーは、ワールドカップ過去4大会にわたってジャージを手がけてきました。
今大会に向けては3年前から開発を始め、素材や形状をいちから見直してきました。

桜ジャージ 開発リーダー 石塚正行さん
「他国に負けないラグビージャージを作りあげようと、新たなテクノロジーも含めて、いろいろな力が結集したすばらしいジャージができたと思います。」

今回、新たに挑んだのが、3種類のジャージの開発です。

およそ5億円を投じて最新の「3Dスキャナー」などを導入し、代表選手たちの体格を細かく解析。
フォワードやバックスなど、体格の異なったそれぞれのポジションに合わせた理想的な形を見つけだしました。

さらに形だけではなく、ポジションごとに求められる力を発揮できるよう、生地にもこまやかな工夫を施しています。
頑丈なスクラムを組むために、がっちりと仲間をつかむことが求められる、フォワードのジャージ。

強度を上げるため、硬い生地をつくる経編(たてあみ)と呼ばれる北陸伝統の編み方を初めて採用。
丈夫なものの柔軟性に乏しく、スポーツウエアに不向きな編み方とみられていましたが、伸縮性のある糸を組み合わせることで適度なストレッチ感を維持。
前回より強度を9%向上させた生地を完成させました。

肩や尻の部分には、スクラムに力が入りやすいよう、すべりにくい特殊な生地を使いました。
相手選手のタックルをかわし、トライを狙うバックスのジャージ。

胸の部分はボールをしっかり保持できるよう樹脂で加工し、胴体には、相手に掴まれにくくするためすべりやすい生地を採用しました。

こうして設計した「桜ジャージ」。
フィット感を高めるため、試作品ができるたび試着を重ねてきました。

この日、試着するとウエストの部分に微妙なだぶつきが出ていました。
これまでにない厳しい強化合宿の結果、選手たちの体が想定以上に絞られていたのです。
とはいえ、わずかなだぶつきでも、相手につかまれるリスクを高めてしまいます。
試着の度に、こうした微妙な体の変化や動きやすさを求める選手の細かい要望に応えていかなくてはなりません。

浮かび上がった課題を解決するのが、沼田喜四司さん、71歳。
50年以上前からスポーツウェアの開発に取り組んできた、国内の第一人者です。
沼田さんの仕事は、ジャージの設計図となる型紙の製作です。
ジャージのだぶつきに対しては、全体のシルエットを保ちながらミリ単位で型紙自体を作り直します。
ポジションごとに異なる動きを頭の中で計算しながら、長年の経験と熟練の技で理想のジャージに近づけていきます。

沼田喜四司さん
「限界までフィットさせ、体に沿わせながら動きやすさを追求していきます。
そこはいちばん心を砕いているところです。」

こうして迎えた、初めての実戦の機会。
世界ランキング9位、格上のフィジーと戦います。
試合では、桜ジャージの効果がさっそく現れます。
バックスの松島選手に対し相手選手がつかみにかかりますが、見事にすり抜けトライを決めました。
その後もバックスの選手は巧みにタックルをかわしていきます。
さらに、スクラムでもジャージがすべることなく、体格に勝るフィジーの選手に押し負けません。
桜ジャージの後押しもあり、試合を通して日本代表は強豪フィジーを圧倒し、見事勝利をおさめました。

松島幸太朗選手
「動きやすくて、違和感がありませんでした。」

福岡堅樹選手
「ジャージがつかまれなかったのは、ポジティブな結果だったと思います。」

試合にかけつけた沼田さんも、ジャージの出来に手応えを感じました。

沼田喜四司さん
「ジャージが、ある程度勝利のお手伝いをできたと感じましたし、本当にうれしく思っています。
ジャージがチームになじんで、前回大会の2015年の実績を上回ってもらえるよう、選手のみなさんと一緒に頑張りたいと思います。」

これから日本代表は大会本番までテストマッチを繰り返しますが、日本代表の勝利に少しでも貢献するために、沼田さんは大会ギリギリまで選手の要望に応じて調整を続けたいと話していました。
ラグビーワールドカップ日本大会は来月20日に開幕します。

取材:松本裕樹記者(大津放送局)

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