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2019年8月1日(木)

“家を相続したくない”

皆さんは、ご自分の親が亡くなったあと、残された家をどうするか、考えていますか?
今年(2019年)発表された統計で、空き家がまた、過去最多を更新し、およそ850万戸に上りました。
この空き家を巡って新たな問題として浮上しているのが、「相続放棄」という親が残した借金の相続などから子どもを守るため、民法で定められた手続きです。
これが今、空き家対策の障害になったり、思わぬ親族トラブルを引き起こしています。

“家を相続したくない” 急増する相続放棄

富山市内に住む50代の男性は1軒の空き家の管理に頭を悩ませています。
この家はもともと、男性の伯父の家。
一度も住んだことはありません。
親族が相次いで「相続放棄」をしたため男性が管理することになってしまったのです。

7人兄弟の長男だった伯父が7年前に不慮の事故で亡くなり、本来、第1に引き継ぐべき息子が相続を放棄。
すると相続権は、兄弟に等しく及びます。
しかし、県外に住む兄弟や親族はみな、相続を放棄しました。
同じ市内に住む男性の母親だけが、さまざまな事情から放棄の手続きを取っていなかったことから、男性と母親が管理することになってしまったのです。
愛着も責任感も持てない、伯父の家。
ほとんど手入れをしてきませんでした。

食器や洗剤も、当時のまま放置されています。

男性
「住んだこともない家にお金をかけるなんて、お金を捨てるようなものなので。
正直な話、運が悪いと思いました。
こういうふうに空き家を持ってしまったのは。」

不動産会社を通して7年前から売りに出していますが、買い手がつきません。
もし火災でも起きれば、自分が責任を問われることになるため、男性は先月(7月)、この家を解体することを決めました。
工事にかかった費用は150万円。
仮に土地が売れても解体費用を回収することはできないと告げられています。

男性
「本当は8人の方に権利があるわけだから、誰がどれだけお金を出しますとかいう話になるべきですよね。
本当のことを言うと全く、納得していません。」

今、空き家の相続放棄が全国で急増しています。
こちらは、大阪市にある、相続放棄を専門に扱う司法書士事務所です。
この数年、空き家の荒廃が社会問題となる中、借金ではなく、「家」の相続を放棄したいという相談が急増。
受注する案件のうち、不動産に関するものがおよそ3割に上っています。

司法書士事務所 代表 椎葉基史さん
「これまで借金がメインだったのが、どうやら借金よりもややこしいものがあるぞと、それがこの不動産、売れない資産の問題となって、今、表に出てきている。」

空き家の相続放棄は、自治体を悩ませる問題にも発展しています。
富山市では、去年(2018年)、相続放棄を巡って前例のないケースに直面しました。

富山市 居住対策課 高森隆課長
「このように、建物が大きく傾いて隣接の家屋にもたれかかっている状況で、非常に危険が切迫している。」

この建物は、所有者が亡くなったまま、10年にわたって放置されていました。
戸籍を調べると、相続すべき親族が21名いることが判明。
しかし市の職員が調べる中で、相続放棄をしていた人や、相続放棄をする人が相次いだと言います。
21名のうち、連絡がついた20名全員が「相続放棄」の手続きを取ったのです。
相続する人がいなくなった不動産は、国庫へ帰属させる手続きがあります。
しかし、手続きが煩雑で高額を要するため、うまく機能しておらず、所有者がいなくなった家もそのまま放置されているのが現状です。
荒廃し、危険度を増す空き家に対し、富山市は異例の対応に踏み切りました。

今年3月、やむなく富山市が解体。
税金で支払われた費用は、回収のめどが立っていません。

富山市 居住対策課 高森隆課長
「行政が税金で何とかしてくれるだろうと、管理を放棄するという考えに至られるのは本意ではない。」

この4年間で、全国の自治体が解体した165件の空き屋のうち、124件が、所有者が特定できない空き家でした。
空き家の相続放棄は定められた権利ですので、一概に否定はできませんが、制度の見直しが必要ではないかと指摘する声もあります。
専門家は、相続が発生してからではなく、生前から前もって準備しておくことが重要だと指摘します。

東洋大学 野澤千絵教授
「相続が発生する前の段階から、相続人と被相続人の間、あるいは親戚家族の間で共有していくことから始める。
早め早めに準備することが大事で、残念ながら住まいを終活することが必要な時代になった。」

具体的には、・自治体の空き屋対策窓口・地域の不動産会社・空き屋問題に取り組むNPOなどに生前から相談をすることが大切だと言います。

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