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2019年7月27日(土)

“闇サイト殺人事件” 娘を奪われた遺族の思い

平成19年に、携帯電話の闇サイトを通じて知り合った3人の男が女性を拉致し、現金を奪ったうえ殺害した、いわゆる「闇サイト殺人事件」。
先週、余罪も含めた一連の裁判が、ようやく終わることになりました。
闇サイト殺人事件で娘を奪われた母親は、今もネットを使った犯罪が繰り返されることに心を痛め続けています。

“闇サイト殺人事件” 娘を奪われた母の思い

12年前の夏に起こった、社会を震撼させた闇サイト殺人事件。
見ず知らずの男3人がインターネットの闇サイトを通じて知り合い、金目当てで犯行に及びました。
被害者は、派遣会社の社員、磯谷利恵さんです。
女手一つで娘を育ててきた母親の富美子さんは、ただ1人の家族を奪われました。

磯谷富美子さん
「今現在もつらいし、会いたいし、それができないというつらさ。
利恵ちゃん会いたかったって言って抱きしめたいし、いっぱいいっぱい話したいこともあるし。」

利恵さんは、帰宅途中に自宅のすぐそばで拉致され、現金を奪われたうえ、殺害されました。
闇サイト殺人事件では無期懲役になった、堀慶末(よしとも)被告。
別の強盗殺人事件が発覚し、先週7月19日、最高裁で死刑が確定することになりました。
12年たってようやく、富美子さんは1つの節目を迎えました。

磯谷富美子さん
「本当にほっといたしました。
これでもう、裁判と関わることがないかと思うと本当にひと安心というか安どしております。」

なぜ娘が殺されなければならなかったのか。
富美子さんは、これまで裁判に欠かさず通いつめ、3人の男が「闇サイト」を事件の前にも繰り返し使っていたことに気付きました。

1人は、偽装結婚や偽装養子縁組、口座売買などで金を稼いでいました。
もう1人は、保険金詐欺などを行っていました。
闇サイト殺人事件の当時、3人のうち2人が執行猶予中でした。

磯谷富美子さん
「もう慣れきっちゃって、あまりいろいろなことに抵抗を感じなくなっていたんじゃないかなって。」

NHKは、3人のうちの1人、無期懲役で服役中の川岸健治受刑者とやり取りを重ねてきました。
その手紙の中に、闇サイトが犯罪の敷居を低くしたことを裏付ける内容が書かれていました。

“闇サイトという軽さと魔力を兼ね備えた一種の麻薬的ツールが加わる事で、より一層の拍車がかかったのだろうと思います”

その後も繰り返された事件

その後も、誰もがアクセスできるツイッターやネットの掲示板が、犯罪に悪用される事件が起き続けています。
去年(2018年)6月、静岡県浜松市で29歳の女性が3人の男に連れ去られ、遺体で見つかった事件。
3人を結び付けたのは誰でも利用できるインターネットの掲示板。
主犯の男が「求人」を呼びかけ、逮捕された2人が反応していました。
一見、犯罪につながるとは分からない書き込みで、仲間が集められていました。

面識のない男たちが手軽な掲示板を通じて集い、女性を拉致して命を奪う。
「闇サイト殺人事件」とよく似た事件でした。

磯谷富美子さん
「娘の死はなんの意味もなかったのかなって。
同じような事件が起きて、じゃあむだ死にをしてしまったような、なんか本当に、悔しいようないたたまれないようななんとも言えない気持ちですね。」

誰もが被害者にも加害者にもなりうるネット犯罪。
川岸受刑者からの手紙には、こうつづられていました。

“闇サイトは、暴力団が消滅しないのと同じで、必要悪なんですね。なので、闇サイトのかもし出すダークな世界には興味を示す人は多いはずで、需要がある限り闇サイトはなくならないし、今後も同様の事件は起きるだろうと思います”

次の被害者を出さないために

富美子さんは、こうした犯罪をなくすためにも事件を風化させたくないと、全国各地で講演活動を続けています。

磯谷富美子さん
「こういう事件のことを記憶にとどめていただいて、同じような事件が起きるたびに、『またか』という思いだけではなく、このままでいいのか、本当に、じゃあ次の被害者を出さないためにはどうしたらいいのかをやっぱり考えていただきたい。」

被害者の母親の富美子さんは、「今はネットで知らない人とすぐに結び付くことができるので、家庭や教育でしっかりネットの怖さを教えていってほしい」と訴えてきました。
一連の裁判は終わったものの、今後もこうした事件をなくすために活動を続けていきたいとしています。

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