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2019年7月25日(木)

東京五輪 開幕まで1年 熱中症対策は?

東京オリンピックが、いよいよ1年後に迫りました。
課題の1つとなっているのが、観戦する人たちの熱中症をどう防ぐかです。
組織委員会は、会場近くに水を霧状に吹き付けるミスト装置や日よけテント、冷風機などを設置して、熱中症の予防に努めるとしています。
ただ、熱中症対策は、会場周辺だけでなく観客が移動する街中でも必要です。
そのための対策が今、民間でも進められようとしています。

東京五輪 マラソンの観客を熱中症から守れ

熱中症のリスクが特に高いとみられているのが、沿道に多くの観客が集まることが予想される「マラソン」です。
千葉市にある民間の気象会社では、これまでマラソンの日本代表など選手の戦略に役立つ気象データの提供を行ってきました。
今回、大学と協力し、マラソンを観戦する人たちにも活用できるマップを作りました。

街なかを5メートル四方に細かく区切って、気温などを予測します。
気温30度を超える黄色の場所が広がる一方、緑の30度を下回る場所もあります。
場所ごとの暑さが一目でわかるのです。

こちらは、実際のマラソンコースです。
この会社は、マップを作るためにそれぞれの場所の実際の気温に影響する膨大なデータを収集。
沿道の建物の高さや街路樹の有無、エアコンの排熱まで計算に盛り込みました。

ウェザーニューズ スポーツ気象 担当 浅田佳津雄さん
「どこで観戦すると温度が上がりにくかったり、といった情報を観客の皆さんにお伝えすることで、ご自身で熱中症になりにくい観戦場所を選んでいただけるような情報として提供できればと思っています。」

会社では今後、予測の精度をさらに向上させ、来年(2020年)のマラソン本番の暑さの全容を可視化して、広く公開したいとしています。

東京五輪 新国立競技場へ向かう観客に“涼しさ”を

一方、こちらは新国立競技場です。
東京オリンピックでは、開会式や陸上競技などが行われ、こちらも多くの観客で周辺が混雑することが予想されています。
この地域で、熱中症リスクを減らす活動に取り組む都市計画の専門家・堀内正弘教授は今、多くの場所に「ひと涼みスポット」と書かれたステッカーを貼っていこうとしています。
街行く人がちょっと立ち寄って、涼むことができる場所です。

多摩美術大学 環境デザイン学科 堀内正弘教授
「今ある、冷えている空間を開こうという簡単な発想です。
ステッカーがあれば“ここを使えるんだ”ということで、堂々と使っていただいていい。」

堀内さんは“クールシェア”=「涼しさを分かち合う」という考え方を提唱してきました。
これまで公共施設や商業施設などに、エアコンが効いている場所や、木陰がある場所などを提供してもらうよう、全国で呼びかけを行ってきました。
この考え方を、東京オリンピックの熱中症対策に生かそうというのです。

新国立競技場へは、多くの観客がJRや地下鉄の複数の駅から徒歩でやってくると考えられます。
堀内さんはこのうち、競技場からの距離が比較的遠い、外苑前駅や青山一丁目駅周辺の「ひと涼みスポット」の開拓に取り組んでいます。
これまでに登録された「スポット」は、都内だけでおよそ1,000か所。
パソコンやスマートフォンを使って、手軽に検索することができます。

多摩美術大学 環境デザイン学科 堀内正弘教授
「今の熱中症予防対策というのは、点なんですよね。
そこだけ涼しくてもほかが暑ければ、途中で問題が起きる。
民間の知恵というか、普通の人の感覚で、そこを是非補うような流れができればいいなと考えてます。」

東京五輪 最新技術を活用して熱中症対策を!

「どこに行けば安全か」だけでなく、「いつが危険か」についても、意外なデータを使った研究が進んでいます。

日本医科大学の布施明教授は、来年のオリンピックに向けて、熱中症患者が多く出そうな日を予測する研究に取り組んでいます。
ここで活用したのが、ツイッターのつぶやきです。
布施教授は、最初は気温から全国の熱中症患者数を予測することを考え、去年(2018年)のデータで予測してみましたが、実際に消防が搬送した人数のグラフを重ねると、ところどころずれてしまいました。
熱中症になる理由は複雑で、気温だけではなかなか予測しきれなかったのです。
そこで注目したのがツイッターです。
「熱中症っぽい」、「熱中症になりそう」などの言葉を含むツイートの数を気温のデータと組み合わせて予測しました。
すると、グラフの動きは実際の患者数にほぼ一致しました。
来年の大会開催時期には、その日の朝のツイートの傾向から、昼間にどのぐらいの熱中症患者が出そうかを公表して観客に注意を呼びかけたり、消防や医療機関に対応を準備してもらったりすることを検討しています。
布施教授は、こうしたさまざまな研究を総合的に取り入れて、オリンピックに臨む必要があると指摘しています。

日本医科大学 布施明教授
「熱中症という意味で、来年がどういう暑熱環境の年になるか予測がつきませんので、新しいテクニック、新しい技術をどんどん使ってできる限り熱中症を予防する、そして迅速に対応すことは必要だというふうに思います。」

どんなに競技を楽しみにしていても、熱中症になっては観戦を楽しむどころではなくなってしまいます。
あと1年の間にさまざまな形で暑さ対策を進める必要がありそうです。

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