これまでの放送

2019年7月18日(木)

「君の名は。」から「天気の子」へ 新海誠監督の格闘 “称賛” “批判”を受けとめて

新海誠監督の3年ぶりの新作映画「天気の子」は、異常気象で雨が降り続く東京が舞台です。
離島から家出してきた少年が、空を晴れにできる不思議な力を持った少女と出会い、物語が動き出します。
公開前の会見で、「エンターテインメント大作として絶対におもしろい、損をさせない」と語った新海誠監督。
3年前に発表した「君の名は。」が、観客動員数1,900万人を記録するなど大ヒットし、一気に、日本を代表するアニメーション監督の1人となりました。
一方、「君の名は。」には数々の批判も寄せられ、新海監督は、次にどんな映画を作るべきか悩んでいました。
「君の名は」から「天気の子」へ、3年間、格闘を続けた新海誠監督の思いを、高瀬キャスターがうかがいました。

「君の名は。」から「天気の子」へ 新海誠監督の格闘

高瀬
「今回、新作が『天気の子』だとわかったときに、これまでの新海さんの作品を見ていると、いつも空が印象的に描かれていて“天気”ということで妙に納得した方も多かった気がするんですが、どうして“天気”なのでしょうか?」

新海誠監督
「朝起きて天気を見るだけで気分が変わる。
すごく落ち込んじゃうこともあれば、勇気づけてくれることもできる。
天気っておもしろいなと思っていたんですけど、特に『君の名は。』を作り終えた2016年あたりから、天気というのがだいぶ変わってきたなという実感も、おそらく僕だけじゃなくてみんなあると思うんです。
季節の移り変わりが楽しみなものというよりは、備えなければ危ないものになってきた。
その、今感じる感覚を、エンターテイメント映画でどう語ることができるだろうと。」

前作の「君の名は。」で日本中に名が知られるようになった新海監督。
しかし、この映画では、あるシーンが思わぬ批判を受けました。
すい星が衝突して多くの人が亡くなってしまった町で、時空を超えて少年と少女が出会い、この運命を変え、人々を被害から救う、というシーンです。

新海誠監督
「例えば『君の名は。』というのは、『災害をなかったことにする映画』だと言われ、結構大きなショックを受けたんですね。
『代償もなく死者をよみがえらせる映画である』あるいは『災害をなかったことにする映画である』という批判は、すごくずしんと重くくるものがあって。
そういう言葉を浴び続けて、じゃあ次に作る映画をどういうものにしようと。
僕の映画『君の名は。』を強く批判した人たちに批判されないようにするべきなのか。
あるいは違うやり方があるのか。
その時に僕が出した結論は『君の名は。』を批判してきた方々たちが見て『もっと批判してしまうような映画』を作らないといけないと思いました。」

高瀬
「より踏みこんで、ですか?」

新海誠監督
「そうですね。
より叱られる映画を作らなければいけないんじゃないか。
きっと自分自身に作家性のようなものがある、描きたいものがあるんだとしたら、その中にこそあるはずじゃないかと思いましたし。
あるいはもっと叱られる映画を作ることで、自分が見えなかった風景が見えるじゃないかという気もしたんですよね。」

自らが描きたい世界を描く。
その決意は、風景の描き方にも表れています。
登場人物の気持ちを、周りの風景に巧みに描き込むことで知られる新海監督。
その描写の美しさには定評があります。
今回描くのは、都会の路地裏や雑踏です。
ここに雨や光を重ね、若者たちの生きづらさを映し出そうとしました。

新海誠監督
「東京の新宿を描いているんですけど、今回は歌舞伎町がけっこう出てくるんですよね。
歌舞伎町の路地裏であったり、東京の、なんでもないいわゆる観光名所でない場所もたくさん出てくるし、(登場人物が)少し怖い目にあったりするシーンもあったりするんですけど。
こんなこと描いちゃっていいの、というところも含まれている映画だと思います。」

主人公の少年と少女は、生きづらさの中にあっても、どこまでもまっすぐに、純粋さを貫こうとします。
そして、時には世の中の常識や大人たちと激しく対立していきます。

新海誠監督
「この『天気の子』という映画、全力で組み立てたエンターテイメント映画であると同時に、例えば政治の言葉、報道の言葉、教科書の言葉では、絶対に言えないことを叫ぶ映画でもあるんですね。
それを映画館で見てどう思った?
『共感した』、『反発を感じた』どういう気持ちでもいいので絶対何か持ち帰っていただけるもの、大きな感情があるはずだと思うんです。」

高瀬
「(40代の)私たちがとうに過ぎ去ってしまった時代をあえて描くことで、もしかしたら私たちの世代にもまた響くかもしれない。」

新海誠監督
「初期衝動の強烈さっていうものがあるじゃないですか。
だから大人にとって、もう走り出して止まらなくなってしまった少年少女の勢いを目の当たりにするというのは、大人にとっても背中を蹴られるような、背筋が伸びるようなそういう体験にはなると思います。」

Page Top