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2019年7月13日(土)

人口減少による税収減 どうなる?行政サービス

こちらの日本地図は、今週発表された人口減少の推移をもとに、減少している自治体を青で、増加している自治体を赤に着色したものです。
日本人の人口は1億2,470万人余りで、10年連続で減少し、減少数も調査開始以降、最も多くなりました。
こうした自治体の中には、人口減少による将来的な税収の減少を懸念しているところもあります。
総人口の減少数が多い自治体のうち、税収の予測を公表している函館市では、住民税や固定資産税などが2年後に9億円余り、秋田市では10年後に26億円余り減少すると試算されています。

自治体の中には、将来を見据え行政サービスを縮小する動きも出始めています。

行政サービス縮小へ 背景には税収の減少が

住民
「住民をちゃんと守ってほしい。」

「現にサービスの低下になっているのではないですか。」

先週、大津市が開いた住民説明会です。
市が提案した「行政サービスの縮小」に対して、住民から反対意見が相次ぎました。

市は36か所ある支所のうち、25の窓口で、来年度から、公共料金の支払いを受け付ける業務をなくしたいと提案。
さらに、多くの窓口では、業務時間を2時間45分短縮し、午前9時から午後3時までにする方針です。

しかし、高齢者を中心に、不便になるという声が上がっています。

住民
「反対であるということはしっかりと覚えておいていただきたい。」

市が提案した行政サービスの縮小。
背景にあるのは、将来的な税収の減少です。
市は、2015年度には、208億円あった住民税の歳入が2050年度には40億円余り減ると見込んでいます。
その一方で、高齢化に伴う社会保障費は年々増加しています。
住民生活に配慮しつつも、行政サービスの縮小は避けられないというのです。

大津市 市民部 井上佳子部長
「その時代時代に応じた行政の形に変えていく必要は大事かなと思っていますので、市民のみなさんにご理解いただけるように私たちも説明を尽くしていきたい。」

行政サービス維持へ 非正規公務員に依存で

人口減少を背景に縮小が進む行政サービス。
自治体は、なんとかしてそれを維持しようとし始めています。
茨城県守谷市が頼っているのが、臨時や嘱託といったいわゆる「非正規公務員」です。
その数は全職員の半数を占めています。

中でも割合が高い職場が、市立図書館。
職員のうち、非正規が8割に上っています。
市が非正規公務員に依存する理由は、予算の15%を占める人件費の削減にあります。
いったんは運営を民間に委託したものの、司書の資格を持つ人が集まらないなど、問題が相次いだため断念。
今年度から再び市が図書館を運営することになりました。
将来の人口減少を見込んで、契約の期限のある「非正規公務員」を新たに37人採用したのです。

守谷市 総務部 川村和彦次長
「経費を削っていかなければならないというところで、一番手を付けやすいというか注目される部分が人件費。
職員だけで運営することは、財政運営上なかなか難しいところもございますので、非常勤職員は欠かせない存在です。」

行政サービスを維持するため「非正規公務員」に依存するケースは全国で増えています。
総務省の調査では2016年には48万8,000人余りに急増。
実に3人に1人が非正規となっています。

行政サービスの危機 “非正規”が辞めていく

非正規公務員なしでは、成り立たなくなっている地域の行政サービス。
現場からは不安の声も上がっています。
西日本のある自治体で、非正規公務員として働く40代の女性です。
女性が働く部署は児童虐待などを担当。
虐待の通報を受けて、子どもに危険が差し迫っていないかを確認します。
7人の職員のうち5人が非正規だといいます。

非正規公務員の女性
「業務量にあった報酬はないですし、責任の重さにギブアップになってしまう職員さんもいらっしゃいますし、心を病んでしまう方もいらっしゃいます。
今の状況でいくと自分の体も壊れそうです。」

しかし、非正規の多くは、経験が1年未満。
正規職員と同じように責任が重いのに待遇が悪いため、次々と職員が辞めて入れ替わっているということです。
このため、緊急の対応や難しい判断でのノウハウが共有されず、初期の対応が十分でなかったケースもあったといいます。

非正規公務員の女性
「お子さんの命を守る立場としてやるべきことがあると思っているので、きちっと対応できるようにしないと救えた命が救えなかったということがありえる。」

行政サービス維持へ “非正規”の待遇改善を

公務員は民間企業と違い、5年働くと正規雇用に転換できるといったルールはありません。
こうした不安定な処遇の職員が、行政サービスを将来にわたって続けていくことには限界があります。
専門家は、行政サービスのあり方そのものを見直していく必要があると指摘します。

地方自治総合研究所 上林陽治研究員
「行政サービスを、どこに何が必要なのか、どのように転換していったらいいのかということを住民と一緒に考えていくような仕組み作りが必要です。
専門的な仕事、経験を要する仕事についている非正規公務員を無期転換・無期雇用にして、その仕事だけを担っていくようにしていく必要があると思うんです。」

非正規公務員について総務省は、役割に応じた業務量となるように来年度からは新しい制度を始めるとしていて、この中で待遇などを見直すよう自治体に働きかけています。
これまで当たり前のように受けてきた行政サービスを、これからは命に関わるような必要不可欠なものと見直しができるものを私たち自身が選択していく、その岐路に立たされているのではないでしょうか。

報告:齋藤怜(NHK水戸)/寺島光海(NHK福岡)

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