これまでの放送

2019年6月3日(月)

安心して社会に出られるように…

高瀬
「虐待や経済的な理由などから、児童養護施設で暮らす子どもたちは、18歳になると原則施設を出て自立しなければなりません。」

和久田
「そうした若者を、民間企業がNPOと手を組んで、金銭面から支援しようという動きが始まりました。」

児童養護施設を出た後も…

2年前、児童養護施設を退所した田中美咲さん(仮名)。
今は、専門学校の夜間部に通いながら、理学療法士を目指しています。
幼いころに母親が亡くなったことがきっかけで、9歳から児童養護施設で育ちました。
18歳で施設を退所し、今はひとりで暮らしています。
学費や生活費をまかなうためには、昼間、医療機関でアルバイトをしなければなりません。
退所したばかりのころは相談できる相手もなく、希望を持てずにいたといいます。

田中美咲さん
「(施設を)出てみると生活が大変。
バイトも大人ばかりで慣れず失敗するし、勉強も頑張らないといけなくて、毎日泣いていた。」

毎月のアルバイト代は12万円。
月5万円の家賃や年間100万円の学費を払うと、手元にはほとんど残りません。
より勉強に力を入れようとすると、高額な参考書代や講習会の参加費などがかかります。
こうした費用を捻出しようとすると、金銭的に無理が生じ、肉体的にも精神的にも疲れ果ててしまうといいます。
実際、NPOの調査によると、児童養護施設の出身者の27%が大学などに進学したものの、卒業できずにいることがわかってきました。

田中美咲さん
「お金の面だけでなく、精神的な面で一番つらい。
なんでこんな大変なんだろうと思う。
精神的な面で一番つらい。」

動き出した民間企業

こうした若者たちに手を差し伸べようと、新たな取り組みを始めた企業があります。
東京スター銀行です。
打ち出したのは、返済の必要のない「給付型奨学金」です。
大学や短大、専門学校を卒業するまで、年間50万円、最大200万円を支給します。
給付金はすべて銀行側の負担です。

東京スター銀行 牛堂望美さん
「今子どもの貧困が増えていて、貧困の世代間連鎖、親から子どもに貧困が連鎖している。
金融機関が恩恵を受けている、経済基盤が崩れるというのがある。
奨学金を受けた若者たちには、未来に希望を持ってもらいたい。」

今回、給付型の奨学金を始めるにあたって、銀行がタッグを組んだのは、児童養護施設などを退所した若者の支援にあたるNPOです。
支給した奨学金を、どうすれば有効に使ってもらえるのか。
率直な不安をぶつけます。

東京スター銀行 牛堂望美さん
「奨学金を数か月で使い切ってしまう、という話を本当によく聞く。」

NPO法人 ブリッジフォースマイル 林恵子さん
「ひとりの頭だと整理しきれず、気付いたら通帳の中にお金がなくなって。」

NPOの担当者が指摘したのは、児童養護施設の出身者たちはこれまで自分でお金をやりくりしたことがないため、管理能力を高める必要があるということです。
そこで、学生には毎月家計簿をつけさせることになりました。
食費や光熱費だけでなく、健康保険の保険料や家賃の更新料など気付きにくい支出も明確にします。

NPO法人 ブリッジフォースマイル 林恵子さん
「なかなか一歩を踏み込んで金銭管理を手伝うことはなかったので、誰かが卒業まで関わっていくことで、(学生たちも)楽になるのではないか。」

社会全体でのサポートが必要

一方、こうした金銭面での支援を必要としているのは、大学などに進学した若者だけではありません。
厚生労働省の調査によると、児童養護施設の出身者のおよそ63%が進学ではなく就職を選んでいます。

4年前に施設を退所し、旅行会社に就職した22歳の女性です。
退所の際、自立のために手渡されたのは、一時金30万円程度。
頼れる親などもいないため、生活基盤が築けなかったといいます。

施設退所し就職した女性(22)
「働いてるから大丈夫と思われるけど、全然そうじゃなくて。
お金をやりくりするだけの自分の力も、稼ぐ力も必要だけど、急に社会に出されても。」

児童養護施設を出たあとの支援をどのように充実させていくか、専門家は給付型奨学金にとどまらない対策が必要だと指摘します。

日本大学 社会福祉学科 井上仁教授
「進学しても就職しても、彼らはひとりになっちゃう。
緩やかにスタートできる仕組みを作ってあげないとだめ。
彼らに対して社会が投資をする、サポートをする仕組みを作らないと。」

高瀬
「これまでこうした若者への支援はNPOなどにとどまっていましたが、今回の銀行のように、民間企業でも増えているということです。」

和久田
「未来への投資と考えて、社会全体で支援するという動きがより広まっていくといいですね。」

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