これまでの放送

2019年5月30日(木)

“経営者になりたい”サラリーマンが急増

高瀬
「今、サラリーマンなどの間で広がる新たな動きについてです。」

和久田
「後継者不足に悩む中小企業を買収し、自ら経営者になろうという人が増えているんです。」

サラリーマンの間で“事業承継”がブーム

都内で開かれたこちらのセミナー。
会社を買収し経営を引き継ぐ「事業承継」に興味を持つ人たち、およそ1,000人が詰めかけました。

セミナー講師
「個人の方々、小さな会社(に勤務)の人たちにも手が届く。
驚くべき事態が起こっている。」

“自分で一から起業するより手軽に経営者になれる”。
サラリーマンなどの間で、事業承継がブームとなっています。

セミナー参加者
「ある程度形になっているもの(会社)を買うのはおもしろいと思う。
とりあえず買っちゃえと。」

セミナー参加者
「M&A(買収)に興味があり、個人でもできるということで聞いてみたいと。」

ブームの背景にあるのは、会社の売買を仲介するサイトの登場。
後継者のいない会社などが次々に売りに出され、数百万円から買うことができます。
個人でも手が届くと、人気を集めているのです。

経営者になって業績を伸ばしている人も

実際に経営者となり、会社の業績を伸ばしている人もいます。

大手製薬会社を退職し、調剤薬局の経営を引き継いだ、西智行さんです。
新たに始めたのが、介護施設などに薬を届けるサービスです。
製薬会社で営業をしていた経験を生かし、売り上げを伸ばしています。

スマイリンク 西智行代表(31)
「売り上げも引き継いだ当初と比べて3倍近くにはなっている。
(事業承継は)良い選択だった。」

背景にあるのが“中小企業の後継者不足”

和久田
「取材した渡部記者とお伝えします。
会社を買っていきなり社長になってしまうというのが、今のサラリーマンの選択肢のひとつになっているんですね。」

渡部圭司記者(経済部)
「背景には、中小企業の後継者不足があります。

こちら127万人という数字、これは後継者がいない高齢の経営者の数なんです。
このまま後継者が見つからずに廃業すれば、売り上げや雇用がなくなり、およそ22兆円ものGDPが失われると試算されています。
しっかりした会社でも後を継ぐ親族や社員がいないばっかりに廃業になる。
そうなるくらいなら、第三者が継いだ方が良い。
そんな時代なんです。
しかし、ネットを通して『個人でも会社が買える』という、その“手軽さ”ゆえに、課題が多いことも分かってきました。」

手軽さに潜むリスク

都内の会社に勤める、小田桐修さんです。
自分の会社を持ちたいと、去年から仲介サイトで買収先を探していました。
今年(2019年)1月、目を付けたのが、都内にあるネイルサロン。
売上が5,000万円以上あって、高い利益を上げており、業績を伸ばせると考えました。

小田桐修さん
「これが基本合意書。」

小田桐さんは自ら会社側と交渉し、1か月後に700万円で買うことで合意しました。

小田桐修さん
「ほかにも(会社を買いたいと)手が挙っていた感じだったので、買えるなという喜びはあった。」

ところがその後、詳しく調べると、サイトに掲載されていた利益に根拠がないことがわかりました。
さらに、家賃や給料の支払いの記録も見つからず、小田桐さんは、買収を取りやめることにしました。

小田桐修さん
「サイトに載っている小粒な案件は、買ったはいいが成功しないだろうという案件が非常に多いという印象は受けた。
疑ってみないとダメなんだろうなと感じた。」

一方、買収の最終段階で、思わぬ事態に直面した人もいます。

専門商社に勤めていた30代の男性です。
この春、金属加工メーカーとの間で、買収について合意しました。

男性
「長年の夢だった経営に携われるので楽しみ。」

ところが、商社を辞め、引っ越し先も決めた後に資金調達に行き詰まります。
金融機関から買収資金の融資を断られたのです。
男性は、メーカーの経営を引き継いだら、商社で培ってきた専門知識を生かして業績を伸ばせると考えてきました。
しかし、金融機関が求めたのは、業績が低迷する会社を再建する手腕。
男性にはそれが不十分であると判断されたと言います。

男性
「(資金調達は)ぶっちゃけハードルじゃないと思っていた。
基本合意は済んで、あとは最終契約、すんなりいくかなと思っていたが、ちょっとまだ甘くみていたのかな。」

企業買収に詳しい専門家は、「会社の経営実態とともに、自らの適正も見きわめる必要がある」と言います。

日本M&Aアドバイザー協会 大原達朗代表理事
「普通に勤めているサラリーマンの方がいま売ろうとしている方(経営者)よりも、その事業で圧倒的に経営力があれば、たぶんうまくいく。
でも、それを多くの方が持っているか、なかなか持っていないと思う。
ここはいちばん大きな問題なんじゃないか。」

今後の課題は

和久田
「言われてみればそうですよね。
個人が会社を買うとなると、それだけ高いハードルがあるわけですね。」

渡部記者
「そうなんです。
仲介サイトは売買の場を提供しますが、十分な審査を行っているとは限りません。」

和久田
「慎重に見ていかないといけないわけですね。」

高瀬
「仲介サイトも、厳密かつ十分な審査をしているとは限らないということですね。」

渡部記者
「買収した後、実際うまくいかないケースも多いんです。

例えば、経営者として信頼が得られず、従業員や取引先が離れてしまったケース。
そして、隠されていた負債が後から見つかって、破産した会社もありました。」

高瀬
「では、うまく経営をどうやって引き継いだらいいんだろうかというところですよね。」

渡部記者
「買い手と売り手を支える体制作りが重要だと思います。
こちらは、多くの企業買収の仲介を手がけてきた会社の代表の話です。

『企業買収の専門知識を持った税理士や会計士の育成を』ということなんです。」

高瀬
「これはどういうことですか?」

渡部記者
「この買収にはどういうリスクがあるのか、個人でも気軽に相談できる専門家を全国的に増やすことが必要だと指摘しているんです。
個人による企業の買収が定着すれば、日本経済の構造的な課題の解決にもつながります。
それだけに、しっかりとしたサポート体制を作って、成功事例を増やしていくことが大事だと感じます。」

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