これまでの放送

2019年5月28日(火)

“特別養子縁組”で育つということ

生まれたばかりの赤ちゃん。
千葉県にある保育施設には、経済的な事情などで「生んでも育てられない」と、多くの赤ちゃんが預けられています。

ベビーライフ 篠塚康智代表理事
「3・4人(の赤ちゃん)が常時いる。」

こうした子どもたちを、実の子として迎え入れる制度があります。
「特別養子縁組」です。
不妊に悩み、子どもを諦めかけていた夫婦にとって希望となっています。

子どもを迎えた夫婦
「幸せすぎてよかったね。」

「生活が180度変わった。」

和久田
「『特別養子縁組』は、経済的な理由や虐待などで、生みの親の元では育てられない子どもを安定した家庭環境で育てるための制度です。
大きな特徴は、戸籍上、生みの親との関係を断ち切って、育ての親と実の親子関係が結ばれることです。
その点が、生みの親との関係はそのままに後継ぎなどとなる『普通養子縁組』とは異なります。」

高瀬
「制度ができて30年余り。
どのように“家族の形”が築かれてきたのでしょうか。」

「“特別”ではない “普通の家族”でありたい」

リポート:中川早織(首都圏センター)

横浜市に住む川口さん一家です。
長男の一貴(かずき)さんは25年前、特別養子縁組で家族になりました。
不妊治療の末、子どもを授からなかった徹さんと博子さんに迎えられました。
その後、特別養子縁組で妹もできました。

川口一貴さん
「本当に、楽しく明るく育ててくれてありがとうみたいな気持ちは強い。」

一貴さんが川口家に迎えられたときの映像です。
両親は、戸籍上も実の子とすることで、責任を持って育てていくと決意していました。

父 徹さん
「『家族として生きていきたい』というのがあった。」

母 博子さん
「『産んでくれたお母さんのほうに行くよと言われたらどうする』と言ったこともあるけど、一緒にいられた時間を大切にしていれば、それで十分。」

両親は、物心がつく前から一貴さんに伝えてきたことがあります。
「産んでくれたお母さんが別にいる」という事実です。
すべてを包み隠さず共有することで、“特別”ではない、“普通の家族”でありたいと願ったのです。

父 徹さん
「特別養子縁組だという事を、恥ずかしい事として生きて欲しくない。
そのためには、親が隠して、恥ずかしい事なんだと思わせないようにだけはしてきたつもり。」

それでも、事実を伝えているからこそ直面した“壁”がありました。
一貴さんが6歳のころ、「産んでくれたお母さんに会いたい」と突然泣きだして、両親に訴えたのです。

父 徹さん
「あ、来たか、そう来るかっていう。」

悩んだ両親が出した結論は、一貴さんが生まれた神戸の産院に連れて行くことでした。
自分のルーツを目の当たりにするとともに、両親の思いを感じた一貴さん。
これ以降、生みの親のことを口に出さなくなったといいます。

川口一貴さん
「(産院に)行ってよかったと思う。
十分消化できたのかな、そこから(会いたいと)言った覚えはない。
大きくなってからは一度も。
そこで、すぱっと消化できたのかな。」

社会人として、今年から1人暮らしを始めた一貴さん。
普通の家族として当たり前に育ててくれた両親に、改めて感謝の思いを感じています。

川口一貴さん
「(中学生のころ)『お前なんか本当の父親じゃないだろ』とで言った時は、あとで反省するけど、“この人たちが家族だ”と本気で思えていたから言えたのかな。」

仕事が休みのこの日。
一貴さんは、社会人になって初めての母の日のプレゼントを用意していました。

川口一貴さん
「これ、母の日のプレゼント。」

母 博子さん
「え?何だろう、うそでしょ。」

両親にゆっくりしてもらいたいと選んだのは、旅行券でした。

川口一貴さん
「渡してないなと思って。」

母 博子さん
「もらってないなと思ってた。」

特別養子縁組で家族になって25年。
今、家族それぞれが同じ思いを共有しています。

父 徹さん
「(親子が)きっちり向かい合って話すしかなくて、『特別養子縁組だからダメ、実子だったら成功』、それほど甘いものではない。
一人の人間としてつきあっていくしかない。
それ以上のことはありえない。」

川口一貴さん
「(いまの両親で)よかったと思う、率直に。
何かあったときにすぐ助けを差し伸べてくれる、あるいはこっちが助けを差し伸べるのが家族だと思うので、(家族は)やっぱり大事な存在だと思う。」

“特別”ではない 家族のカタチに

高瀬
「取材した中川記者です。
ごく自然な家庭が築かれていましたね。」

中川早織記者(首都圏センター)
「私は今、2人の子どもを育てているんですが、一貴さんのご両親のように、しっかり向き合えているか考えさせられました。
ただ、特別養子縁組ならではの悩みも、少なからずあるんです。
例えば、学校現場で『特別養子縁組という特殊な家庭環境だからトラブルを起こした』と言われるなど、なかなか周囲の理解が進んでいない家族もいます。
川口さん家族を結び付けた支援団体は、社会の理解が必要だと指摘しています。」

NPO 環の会 星野寛美代表
「特別養子縁組は、子どものため(の制度)なので、子どもにとっていい環境を探す1つの方法であるという理解を進めて欲しい。
多くの方に『こんな家族もあるよね』という受け止め方をしてもらえると、子どもたちにとっては生きやすい社会になるだろうと思う。」

和久田
「子どもを守る選択肢として、特別養子縁組が理解とともに広がっていくといいですよね。」

中川記者
「経済的理由や虐待などで生みの親と暮らせない子どもは、全国におよそ4万4,000人います。
その一方で、特別養子縁組で結ばれる家族は増加傾向にはありますが、年間600程度にとどまっています。

特別養子縁組の家族も、“特別”ではない家族のカタチとして、理解が広がっていってほしいと思います。」

Page Top