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2019年5月27日(月)

はしか ワクチン拒否の実態

高瀬
「今、日本で極めて強い感染力を持つ『はしか』が広がっています。
感染者は現在の時点で486人、過去10年で最悪のペースで増加していて、厚生労働省は警戒を呼びかけています。」

和久田
「実はこのはしかは、アメリカをはじめ、世界各国でも流行しています。
通常、はしかを予防する『ワクチン』は、生後12か月に1回、4歳から6歳の間に1回の接種が行われていますが、これほど流行が広がっている原因のひとつとして指摘されているのが、『ワクチン』の接種を拒否する人たちの運動です。
一体、何が起きているのでしょうか。」

ワクチンの誤情報 ソーシャルメディアで拡散

添徹太郎記者(国際部)
「はしかの流行が起きているニューヨーク州の議会前です。
ここでは、ワクチンの接種を拒否する人たちが集会を開いています。」

「(安全性を)検証しろ!」

アメリカでは、すべての州で公立学校に通う子どもたちにワクチンの接種が求められています。
しかし…。

「子どもには、もうワクチンを接種させません。」

「ワクチンの接種は安全ではありません。」

訴えているのは、ワクチンの危険性です。
ところが、実はその主張のほとんどが、ソーシャルメディアで拡散した誤った情報なのです。

ワクチン拒否の運動に参加しているターシャ・ウィニンガムさんです。

ターシャ・ウィニンガムさん
「この人のページは、すばらしい情報源です。」

最もよくチェックするのが、ある女性のフェイスブックです。
科学的には不正確な内容も含まれています。

しかし、2人の娘を育てているウィニンガムさんは、子どもがワクチンで被害を受けたと訴える、この女性の考えに共感し、ワクチンを打ちたくないと考えるようになりました。

ターシャ・ウィニンガムさん
「ソーシャルメディアでワクチンが危険かどうかについての情報を得ています。
そのような情報は隠されていて、大手メディアは取り上げようとしないからです。」

こうした情報は、なぜ簡単に信じられてしまうのか。
専門家は、危険をあおる過激な情報ほど、不安を抱える親の心に響きやすいと指摘します。

例えば、イギリスの医師が発表したこの論文。
はしかなどの混合ワクチンが、自閉症の原因だと指摘しました。
しかし後に、論文のデータが、ねつ造されていたことが判明します。

それでも、一度広がってしまった情報は、今も、親の恐怖心をあおり続けています。
さらに、専門家は、ワクチン拒否運動は、政治や科学への不信感も増幅させているといいます。

ベイラー医科大学 ピーター・ホッテズ教授
「反ワクチン運動が発しているメッセージは、“政府を信用するな”“政府は製薬会社と手を組んで有毒なワクチンを押しつけようとしている”というもの。
その結果、全国の親たちがワクチンに疑問を持つようになっています。」

ワクチン拒否の動き 政治的対立にも

ワクチン拒否の動きは、政治的な対立にも発展しています。
ワシントン州では、公立学校に通う子どもに対し、健康上の理由がある場合を除き、ワクチンの接種を事実上、義務づける法案が出されました。
これをめぐり、ワクチンを打たない自由を優先するのか、感染症の流行を防ぐための「公共の健康」を優先するのかという議論が起きたのです。
激しい議論の結果、「公共の健康」を支持する側がかろうじて上回り、法案は可決されました。

ワシントン州知事
「われわれの健康を保つのは、恐怖ではなく、科学と真実です。」

ポール・ハリス議員
「これは政治問題にすべきではありません、公衆衛生の問題です。
感染症に関しては、個人の自由より地域の安全のほうが勝るのです。」

ワクチンの誤情報 日本でも…

日本でも、「ワクチンは危険だ」という誤った情報を信じる人が増えています。
2歳と6か月の2人の子を持つ父親です。
去年(2018年)、2人目を妊娠中の妻から突然、子どもにワクチンを接種したくないと言われました。

父親
「正直、寝耳に水でした。
(妻は)慣れない育児で、周りにヘルプを出す(助けを求める)こともなかったので、追い込まれていた状況だったのかなと思う。」

妻は、子育てや食べ物についての話題を発信する人から情報を得ていました。
よく見ていたページでは、「ワクチンは効かない」と断言されていました。
また、ワクチンと関係がある病気として、「自閉症」も挙げられていました。

妻と話し合いを持ちましたが、意見は対立。
2人目の子どもに必要な予防接種を受けさせることができませんでした。

妻の考えが変わりはじめたのは、ある医師が発信している医療情報に触れたことでした。
ワクチンと自閉症に関係がないことや、ワクチンの成分が安全であることの理由が丁寧に解説されていました。

何が信頼できる情報なのか、夫婦でともに考えるうちに妻の不安も和らぎ、子どもたちの予防接種を再開できたといいます。

情報を発信した、アメリカの研究機関で働く医師、峰宗太郎さんです。

アメリカ国立衛生研究所 峰宗太郎フェロー
「正しい情報をしっかり伝えることと、不安を取り除ける情報提供がいちばん大事。」

どう立ち向かう “ワクチン拒否”の誤情報

高瀬
「取材にあたった国際部の添記者です。
ワクチンに対する誤った知識が広がらないようにするためには、何が必要なのでしょうか?」

添記者
「取材して感じたのは、子育てに熱心で、健康に敏感な親たちほど、誤った情報に惑わされやすいということでした。
『ワクチンは危険だ』などと単純化されたり、『打ってはいけない』などと断言されると信じてしまいがちですが、そうした分かりやすい情報ほど気をつけるべきだと感じます。」

和久田
「ただ一方で、ワクチンにはわずかなケースですが副作用もありますよね。
不安を感じる人もいると思いますが、そういう人はどうしたらいいでしょうか?」

添記者
「副作用の話はどうしても避けられませんが、はしかをはじめとした感染症は、命にかかわるケースもあります。
ソーシャルメディアの情報に頼らず、不安や疑問があれば、かかりつけの医師などの専門家に直接話を聞くことが大事だと思います。
さらに行政や医療機関も、ワクチンの効果について正確な情報をもっと積極的に発信していく必要があると思います。」

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