稽古が始まったのは1月。
演出や振り付けなどを手がけるスタッフの大部分は、社内公募で選出。
現場では、経験が少ない中でどう作り上げていくのか、模索が続いていました。
演出を担当する山下純輝さん。
山下さんの本職は俳優。
演出を手がけるのは初めてです。
演出担当 山下純輝さん
「ゼロから作っている分、より良くするために、みんな挑戦してくれていると思う。」
稽古場では、みんなが山下さんにアイディアを出しあってサポートします。
この日も、中盤に出てくる歌の長さについて、音楽担当者から意見が出ました。
♪(歌)~
音楽監督
「私の印象的には短くした方がだれないっていうか、キュッとしてる感じなんですけど。」
演出担当 山下純輝さん
「(振り付けの)動き、もう一度考えないとですよね?」
振付担当
「そうだね。」
演出担当 山下純輝さん
「各セクションのエキスパートが意見を言ってくれるのは、僕の知識がない分野のことなので、それはすごく大事にしたいと思っている。」
俳優たちも、どうすればそれぞれの役にリアリティーを出せるか、試行錯誤を重ねていました。
ダブルキャストで主役のゾルバを演じる、笠松哲朗さんと厂原時也さん。
2人の動きは、同じシーンでも大きく違います。
例えば、生まれたばかりのひなに、「ママ」と呼ばれて戸惑うシーン。
笠松さんは…。
ひな:「ママ。」
笠松:「だから、ママじゃないって。」
ひな:「ママ。」
笠松:「違う、せめてパパだ!俺は男だって。」
一方、厂原さんは…。
ひな:「ママ。」
厂原:「違うってば!まいったな。ブブリーナ(雌ネコ)!違う、俺はママじゃない!」
動きもせりふも大きく違う2人。
しかし、これはどちらかが間違えているわけではありません。
それぞれが役になりきって考え抜いたからこそ、自然と出た動きやことばなんです。
こうしたことは、新作のオリジナル作品だからこそできることだと言います。
笠松哲朗さん
「(既存の作品では)もともと演出が決まっていて、定められた段取り、ルートの中でどう演じていくか。
そういうことを僕たちは日頃考えるが、これはもう本当にーから作っているので、その道筋すらまだないという状態から始めているので、本当に今まで経験したことがない、オリジナルミュージカルならではのことだなと思う。」
厂原時也さん
「自分にうそなく、芝居の、その時のセリフをしゃべる、一個一個そうやって積み重ねていくという行動が、ストレートに人間くささとかがにじみ出て、いい物語が積み上がっていってるというところに行き着いている。
一つ一つのシーンがしっかり伝わればいいなと思う。」
本番初日。
子どもたちも含め、多くの方が幕が上がるのを楽しみにしていました。
15年ぶりに作った、オリジナルミュージカル「カモメに飛ぶことを教えた猫」。
物語は、ひなが無事に飛び立つことで幕を閉じます。
ひなの姿は、今後の劇団四季と重なるといいます。
♪“勇気を出して ふみ出そう
顔をあげよう 胸を張って
怖がるな 大丈夫
自分を信じて”
劇団四季 吉田智誉樹社長
「浅利慶太さんの次をつなぐ世代が、本当に全身全霊で劇団運営をしなければならなくなった。
ちょうど劇に出てくる生まれたばかりのひなが、我々なのかもしれない。
彼女のようにしっかり羽ばたいて、大空を飛べるように頑張らなきゃいけない。」
このミュージカルは、全国を回って上演される予定です。