これまでの放送

2019年5月23日(木)

感覚過敏の子どもたちを競技場へ

高瀬
「楽器を使った応援や大歓声。
スポーツを生で観戦することで味わえるだいご味ですが、こうした競技場での大きな音に耐えられない人もいます。」


和久田
「発達障害のある人に多く見られる『感覚過敏』によるものです。」

こちらは自閉症の人たちを支援する団体が制作した映像です。
「感覚過敏」の人たちがどう感じているのか、ショッピングモールに来た男の子の目線で描いています。

コインが床に落ちる音、テレビモニターの光、周囲から入って来るあらゆる情報に敏感に反応し、男の子は冷静さを失ってしまいます。

高瀬
「2020年、東京オリンピック・パラリンピックで『共生社会ホストタウン』に選ばれている神奈川県の川崎市が『感覚過敏』の子どもたちのために動きだしています。」

川崎市が設置目指す 感覚過敏のための観戦ルーム

リポート:清水彩奈記者(NHK横浜)

先週、川崎市などのプロジェクトチームが訪れたのは、地元のサッカーチーム「川崎フロンターレ」の競技場です。
7月の試合で、感覚過敏の子どもたちでも観戦できる部屋を設置しようとしています。

橋口亜希子さん
「感覚過敏で音が苦手な子たちが、いすを並べて見ることが出来ます。」

プロジェクトを提案した、橋口亜希子さん。
発達障害のある子どもの母親で、同じ境遇の子どもや家族の支援活動に長年携わってきました。
橋口さんの長男は、小学1年のころに発達障害と診断され、感覚過敏があることがわかりました。
サッカーが好きで少年サッカーチームに入っていましたが、パニックになってしまうため、試合観戦には行けず、次第にサッカーからも遠ざかっていったといいます。

橋口亜希子さん
「たくさんの人や大きな音が苦手で、見たくても見ることができない。
(親として)息子の世界を広げるために頑張っていければよかったけど、行けないところをいっぱい作ってしまっていた。」

先進地イギリスで導入 特別な観戦ルーム

橋口さんたちが参考にしたのが、ロンドンパラリンピック以降、障害のある人への理解が進むイギリスでの取り組みでした。
サッカープレミアリーグで導入が進んでいます。

清水記者
「ロンドンのアーセナルスタジアムです。
スタンドから見える2階のあの部屋『センサリールーム』と呼ばれる特別な部屋なんです。」

このセンサリールーム、感覚過敏の子どもを持つ親からの要望もあり、2年前に設置しました。
客席の近くにありますが、ガラスで仕切られ、防音設備が施されています。

こちらは、子どもたちが気持ちを落ち着かせるための部屋です。
刺激が強そうに見える照明ですが、子どもたちにとって安心できるといいます。
さらに、障害のある人に対応する専門のスタッフが常駐します。

アーセナルFC 障害者支援担当 ルーク・ハワードさん
「子どもや家族が『自分たちも参加できる』と思える環境づくりが大切です。
(センサリールームでは)座席の場所は違っても、同じ試合に参加していると感じます。」

みんなで応援 “センサリールーム”のチカラ

この日、センサリールームに観戦に来た、ハリー君と父親のジェイミーさんです。
自閉症で、感覚過敏の特性もあるハリー君。
大勢の人がいる雰囲気に落ち着かない様子です。

父親 ジェイミーさん
「落ち着いて。」

こうした子どもたちに配慮して、センサリールームへは別のルートで向かいます。

音の感じ方は子どもたちそれぞれ。
気になった時のため、音を遮る耳当ても用意されています。
いよいよ試合開始。
外の大声援に比べると、部屋の中はこの通り。

ハリー君も食い入るように観戦します。
ハーフタイムになると、隣の部屋へ移動。

思うように過ごして気持ちを落ち着かせます。
そして、ゴールの瞬間、観客席と同じように盛り上がりました。

ジェイミーさん
「ハリーはサッカー観戦が大好きです。
ここに来て、みんなと会うのを本当に楽しみにしています。」

ハリー君は試合の観戦ができるようになってから、少年サッカーチームへの挑戦も始めています。

“センサリールームで希望を広げたい”

日本で初めてとなるセンサリールームの設置。
当日は発達障害のある子どもや、その家族60人に観戦してもらう予定です。

橋口亜希子さん
「東京オリンピック・パラリンピックを控えて、見た目にわからない発達障害の感覚過敏という特性に着目して、ここがきっかけとなって、全国に種がまかれて花が開いていくように広がっていくことを、あつく希望します。」

センサリールームから目指す社会

高瀬
「取材した清水記者です。
実際にセンサリールームに入ってみて、どうでしたか?」

清水記者
「入り口では少し不安そうで落ち着かなかった子どもたちが、センサリールームでは笑顔で楽しく観戦しているのがとても印象的でした。
また、一緒に来た家族が同じくらい安心して楽しんでいて、こうした安心できる場があるというのがすてきだなと思いました。
イギリスでは、取材したアーセナルというチーム以外でもセンサリールームを導入するチームが増えてきているということです。」

和久田
「スポーツ観戦ももちろんですが、日常の中の他の場所でももっと過ごしやすくなるといいですよね。」

清水記者
「そうですね。
今回取材したのはスポーツ観戦の場での取り組みなんですけれども、今、ご覧いただいているように、イギリスでは他にも商業施設などで店内の照明を暗くしたり、BGMを切ったりして、感覚過敏の人たちも落ちついて買い物ができる時間帯を設けることが日常的に行われています。」

高瀬
「イギリスでは、ロンドンパラリンピックをきっかけに理解が一気に進んだといいますから、日本もまさに今、そういう種をまいて花を咲かせるような、そういう時期にあるということが言えそうですよね。」

清水記者
「川崎市のように障害のある人もない人も、誰もが住みやすい街作りをめざす自治体を国が『共生社会ホストタウン』に指定しています。
日本でも来年(2020年)の東京オリンピック・パラリンピックをきっかけに、まずはこうした見た目にわかりにくい障害を持つ人がいるということに気付いて、誰もが暮らしやすい社会になってほしいと思います。」

【川崎フロンターレのセンサリールームについて 問い合わせ先】
川崎市オリンピック・パラリンピック推進室
044-200-2347

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