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2019年5月20日(月)

“恋愛・結婚禁止”? 外国人技能実習生に何が…

高瀬
「『恋愛・結婚禁止』。
アイドルの話ではありません。
実は、外国人技能実習の現場で、こうしたルールが科されるケースが相次いでいます。」

和久田
「働きながら技術を学ぶために来日している外国人技能実習生は、農業や漁業、製造業などの分野で年々増えていて、およそ32万8,000人に上っています。
事実上、人手不足の業種を支える労働力の供給源にもなっている実習生たちに、今、何が起きているのか実態を取材しました。」

恋愛・結婚禁止 技能実習生 縛るルール

リポート:大野桃記者(国際放送局)

技能実習生に渡された、1枚の紙。
『解雇予告通知書』です。

結婚することを理由に、実習先を解雇すると記されています。
解雇通知を受けた技能実習生のケオ・サメアンさん、30歳です。
岐阜県内の縫製会社で技術を学ぶため、カンボジアから2年前に来日しました。
日本で知り合った男性と交際を始めたケオさん。
その相手と“結婚したい”と実習先の会社に申し出たところ、思いがけず、解雇を通告されたのです。

技能実習生 ケオ・サメアンさん
「社長から“実習生は結婚するなら、会社として雇い続けることはできない”。
“もうカンボジアに帰るしかないよ”と言われました。
ただ交際して、結婚したいだけなのに、国に帰らされるのはおかしい。
納得できません。」

実習先の会社は今年(2019年)2月、NHKの取材に対し、“実習生が結婚をする場合、制度上、『実習生』として雇い続けることはできないと判断した”と答えました。
しかし、外国人技能実習生には、日本人の労働者と同様の法律が適用されます。
結婚の自由はもちろん、出産休暇や育児休暇の取得も認められていて、解雇することはできません。

それにもかかわらず、なぜ、こうした問題が起きるのか。
労働問題に詳しい弁護士は、技能実習生を安い労働力としてしか見ていないことが背景にあると、指摘します。

労働問題に詳しい 指宿昭一弁護士
「恋愛もしない、結婚もしない、子どもも産まない存在でいる方が、雇用する側にとっても、それを管理する国の側にとっても便利。
だから人権侵害については、見て見ぬふりをしてきたと思う。」

縛るルール 私生活の細部にまで

実習先を解雇され、住む場所がなくなったケオさんは、外国人労働者の支援をする労働組合の施設に身を寄せました。
施設の責任者を務める、中国出身の甄凱(けん・かい)さんです。
これまで、実習生たちのさまざまな相談に応じてきました。

外国人労働者を支援 甄凱さん
「結婚する予定の人で、会社から解雇された事案が相談に来ています。」

外国人労働者を支援 甄凱さん
「いつ日本に来たんですか?」

この日、相談に来たのは、愛知県で農業の実習をしているカンボジアの女性です。
日本で知り合った男性と交際していて、妊娠3か月です。

技能実習生
「妊娠したんですが、日本で働きながら結婚できるでしょうか?
カンボジアに、帰らなくてはいけないのでしょうか?」

“妊娠すると強制的に帰国させられる”と同僚から聞いて、誰にも相談できなかったと打ち明けました。
支援施設によると、実習生を縛り付けるルールは結婚や恋愛にとどまらず、私生活の細部にまで及んでいると言います。
携帯電話やパスポートを取り上げる。
外部の人との接触や、インターネットの利用を禁止する。

外部との交流を禁じられていたという、この中国からの実習生は、ストレスから脱毛症やうつ病を発症し、通院をしています。

技能実習生
「会社の人と一緒に外出したときに、“外部の知り合いに会っても口をきくな”と言われました。」

この施設には、多い年で200件を上回る相談があります。
その大半で、こうした制約を受けているといいます。

外国人労働者を支援 甄凱さん
「結婚してはいけない。
恋愛してはいけない。
1人で外出してはいけない。
労働者たちの権利が侵害される、社会的に不安定な状況が作られることは心配。」

外部の情報を遮断 受け入れ企業側の思惑が…

なぜ受け入れ企業は、私生活まで制約するのか。
実習生を企業にあっせんしている人物が、取材に応じました。
実習生が、より高額な報酬を求めて逃げ出すケースが相次いだため、外部の情報を遮断したいという、受け入れ企業側の思惑があるといいます。

実習生を企業にあっせんしている人物
「日本人だと、嫌だったらやめるんです。
実習生は(嫌でも)3年間いてくれるから、ありがたいので使っていた状態。
ここに来て変わってきたのは、“途中で実習生に辞められる”というケースが出てきた。」

この人物によると、こうした制約は、来日前に約束させる仕組みになっていると言います。
実習生が来日前にサインさせられた承諾書です。
証拠を残さないため、通常本人には渡されないものを、実習生が写真に収めていました。
“受け入れ企業の許可無く、部外の中国人と会ってはいけない”と、書かれています。

実習生を企業にあっせんしている人物
「やってはいけないと、監理団体(日本の受け入れ側)も、送り出し(側)も分かっているが、これは暗黙のルールで続いている。」

国の対策は?

高瀬
「取材した、大野記者に聞きます。
人権無視とも言えることが、この日本で起きているとは驚きました。」

大野桃記者(国際放送局)
「ここで取り上げた事例というのは、氷山の一角にすぎません。
取材した中には、妊娠したことを企業側に伝えたところ、中絶するか直ちに帰国するか、選択を迫られたというケースもありました。
実習生たちは、解雇や嫌がらせをされるとおそれて被害を訴えられず、実態がなかなか把握できていません。」

和久田
「実習生とは言っても、法律上は労働者としての権利が認められているわけですよね?
それなのに、国は対策を講じていないんですか?」

大野記者
「国はこうした事態を重くは見てはいるものの、法務省などのホームページで、結婚や妊娠などを理由とした解雇や、私生活の自由を不当に制限することは違法だと、注意喚起をするにとどまっています。」

高瀬
「ただ、今年(2019年)4月からは、新たに『特定技能の在留資格』も加わって外国人人材の受け入れをさらに拡大していますので、人権侵害とも言える状況は放置、看過できないですね。」

大野記者
「そうですね。
新しい制度の下でも、日本人の労働者と同様の権利があることを、受け入れ企業側が理解しないと、同じようなトラブルが起きるおそれは十分にあると思います。
一方で、人材獲得競争というものが世界的にも、しれつになっています。
外国人が働きたいと思うような環境を早急に整備しない限り、いくら日本が門戸を開放しても、外国人たちに働きに来てもらえない国になってしまうと思います。」

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