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2019年4月26日(金)

平成に広がった“所得の格差”

高瀬
「平成から令和へと持ち越される課題、『格差』についてです。
和久田さん、お願いします。」

和久田
「平成の時代に格差はどう拡大したのか、データで振り返っていきます。

平成の30年間で、平均世帯所得はそれほど変化していないんです。

しかし、その実態についてよく見ていきますと、青の平成元年と比べて増えているのが400万円以下、そして1,200万円以上の人たち、これが増えているんです。
その代わりに中間層が減っているんです。

この背景の1つが、非正規社員として働く人の増加です。
去年(2018年)は2,120万人。
2.5倍以上になりました。」

高瀬
「多くの人が時代に翻弄され、格差を感じながら生活してきました。」

正社員になれない40代 抜け出せない現実

リポート:松尾恵輔(社会部)

今まで300社以上、正社員採用の試験を受けてきた、木村武さん(仮名)46歳です。

木村さんが就職活動を始めたのは、平成11年。
就職氷河期まっただ中でした。
この年は、大学生の5人に1人が就職できずに卒業しました。
木村さんも出版社や小売業など50社以上を受けましたが、正社員にはなれませんでした。

木村武さん
「雇用情勢が良いときに社会に出るのと、悪いときに出るのとでは、えらい違いなんですよ。
本人にとって選べないことではありますからね。」

アルバイトを転々とする中、平成13年、28歳の木村さんにようやく正社員の道が開かれます。

就職活動の時に取得したワインの資格が役に立ち、酒の輸入販売の会社に入社します。
給料は手取りでおよそ18万円。
暮らしも安定しました。

木村武さん
「正社員で雇ってもらうことには相当気合いが入りました。
多少無理してでもサービス残業したり、そういうのも平気だったんです。」

しかし、上司からのパワハラが続き、結局1年3か月で退職しました。
この頃、社会は小泉内閣が進める構造改革まっただ中。
派遣業の規制緩和を進め、非正規雇用が増大しました。
会社を退職した木村さんは、工場などの派遣や契約社員として働き、非正規雇用の職をつなぐしかありませんでした。

そうした中、平成20年9月、リーマンショックが起きます。
この時、木村さんはスーパーで契約社員として働いていましたが、不況のあおりを受け、雇い止めになりました。
この状況から抜け出したい。
木村さんは、大学院に通うことを決意します。
フランス文学を専攻し、ワインの知識もより深めることにしました。
しかし、この時すでに38歳になっていました。

木村武さん
「普通の人だった落ち着いて家庭を構えてる。
自分は取り残されている感じがしました。」

念願の正社員に 再スタートの40代

大学院を卒業して4年、木村さんに再び朗報が届きました。
今年(2019年)2月、都内の老舗フレンチレストランに正社員として採用されたのです。
社員5人の小さな会社です。
ワインの知識を生かし、店で扱うワインの選定や接客など、専門性が期待されています。
手取りは22万円。
契約社員の時とほとんど変わりませんが、それでも憧れだった正社員の仕事です。

雇用情勢改善も縮まらない賃金格差

高瀬
「木村さん、ようやく正社員になれたということなんですが、社会部の松尾記者に聞きます。
正社員になれた背景には、雇用情勢の改善ということがありますか?」

松尾恵輔記者(社会部)
「そうですね。
最近は人手不足が深刻で、正社員の求人も増えています。
まず、こちらをご覧ください。

非正規社員から正社員に転じた人がどれだけいたかを示すグラフです。
赤がマイナス、青がプラスとなっています。
つまり赤から青になった平成25年以降は、非正規から正社員に転じる人が多いことを示しています。
ただ、こんな現実もあるんです。

1人あたりの求人数を示す求人倍率を企業規模別に見ていきます。
大企業は1.04倍、中小企業は9.91倍。
求人は中小企業の方が圧倒的に多いんです。」

和久田
「先ほどの木村さんも社員5人の小規模な会社でしたね。」

松尾記者
「そうですね。
その上で、こちらを見てください。

これは、正社員と非正規社員の賃金格差を示しています。
大企業は37万円、そして非正規社員だと平均で22万円、平均で1.7倍の差があります。
小企業だと平均で1.4倍の差となっています。
規模の小さな企業では正規で働いても非正規で働いても、あまり待遇は変わらないんです。」

和久田
「こうなると、わざわざ転職しようという気がなかなか起きないかも知れませんね。」

松尾記者
「そうなんです。
木村さんの場合も、契約社員の時と賃金はほとんど変わらないといいます。
そして体力的にも厳しいものがあるとして、実は会社に対して、退職をしたいと申し出ているんです。」

木村武さん
「周囲から寄せられる期待とか、自分が負う責任とか、私自身、耐えていけるのかという問題も浮上する。」

正社員になったのに離職してしまうケースも

高瀬
「せっかく正社員になれたのに、なかなかうまくいかないですね。」

松尾記者
「一般的に、40代以降に正社員になると、新たな環境になかなか順応できないことがあったり、同じ世代の正社員が求められるスキルを持ち合わせていなかったりして、結果的に離職してしまうケースも珍しくありません。」

和久田
「でも、この結果、将来の年金額も変わってきますよね、正社員と非正規の場合。
この先も心配が続きますね。」

松尾記者
「非正規のまま年を取ると、正社員の半分の年金額となるというデータもあります。
年金だけで暮らせず、生活保護を受ける可能性もあるんです。
こうしたケースを『自己責任』として切り捨てるのは簡単なんですが、それでは社会全体の負担が増すだけです。
今後どうしていくべきか、3人の専門家に聞きました。
まずは、非正規で働く人をどう底上げしていくかという提言です。」

労働時間の短縮と賃金の引き上げ

早稲田大学 教授 橋本健二さん
「進めていって頂きたいと思うのが、労働時間の短縮です。
短縮すれば正規雇用として働く人数が増えます。
すると非正規から正規に転換できる人たちが増えます。
現在の非正規雇用の職は人手不足になり、時給を上げなければ人が集まらない。
最低賃金の大幅引き上げをして、非正規雇用の待遇を改善することも必要。」

正規・非正規 問わない 同じ待遇を

人事コンサルタント 城繁幸さん
「正社員と非正規雇用を同じ土俵で健全に競争して、そこから落ちてしまった人には非正規・正社員関わらず、同一のメンテ(処遇)をするような社会保障の整備が重要。
全ての労働者が自身の能力を発揮して報われる仕組み・ルール作りが必要。」

日本の産業構造を変える必要も

松尾記者
「さらに、日本の産業構造そのものを変えていく必要があると指摘する専門家もいます。」

千葉商科大学 専任講師 常見陽平さん
「もうかる産業・次世代の産業が日本になくなった弱くなったということが論点。
次の産業つくるのと、まっとうなビジネスが日本企業に求められる。
僕はものづくりだと信じたい。
IT×ものづくりで、何か新しいものを生み出せないか。」

松尾記者
「格差の放置は、令和の時代につけをまわすことになります。
いかに格差をなくすことができるのか、待ったなしの取り組みが求められています。」

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