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2019年4月17日(水)

セウォル号事故から5年 亡くなった友達へ 生存者の手紙

和久田
「韓国で旅客船セウォル号が沈没した事故から5年となった昨日(16日)各地で追悼式が開かれました。」

5年前の4月16日、韓国南部の沖合で旅客船セウォル号が沈没した事故。
修学旅行中だった高校生を含む299人が死亡し、今も5人の行方が分かっていません。
昨日は各地で追悼式が開かれました。
このうち、高校生たちが通っていた学校のあるソウル近郊のアンサンでは、参加者たちが黙とうをささげました。

高瀬
「この追悼式に参加し、亡くなった同級生に向けて手紙を読んだ女性がいます。
あの日、セウォル号に乗りながら奇跡的に一命を取りとめた生徒の1人です。」

和久田
「多くの同級生が亡くなる中、生き残ったことへの罪悪感を抱えながらこの5年間を生きてきました。」

亡くなった生徒250人の卒業式

事故に巻き込まれた高校生たちが通っていた学校です。

今年(2019年)2月、亡くなった生徒250人の卒業式が行われました。
事故がなければ卒業しているはずだった生徒たち。
今年、式を行ったのは行方不明者の捜索終了を待っていたためです。
その様子を見つめる女性がいました。

チャン・エジンさん、あの日助かった生徒75人の1人です。
事故が起きた時、エジンさんは同級生たちと一緒に船内の部屋で待機していました。
ところが近くにあった棚が倒れてきたため、非常口付近に避難。
救助の呼びかけが聞こえ、海に飛び込んだことが運命を分けました。

チャン・エジンさん
「突然『船から飛び降りろ』という声が聞こえました。
でも、ドアの外はすぐ海だったので、怖くてそのまま立っていました。
そうしたら急に水が押し寄せてきたんです。
その時、飛び降りようと思いました。」

自分を責め続けた5年間

多くの生存者がトラウマに苦しむ中、エジンさんは1人先頭に立って事故の記憶を伝える活動を続けてきました。

チャン・エジンさん
「セウォル号事故の生存者、チャン・エジンです。」

チャン・エジンさん
「初めての消防実習の時です。」

卒業後の進路は幼いころから憧れていた保育士ではなく、救急救命士を目指しています。
「亡くなった同級生のために生きる」、そう決めたのは、あの日、友達を船内に残し、海に飛び込んだ自分を責め続けているからです。

チャン・エジンさん
「今でも時々思います。
私が船から出た時、後ろを一回…、後ろを一回でも見ていたら、ひとりでも一緒に助かったかもって。」

遺族から生存者へ 「自分の人生を生きてほしい」

卒業式の5日後、エジンさんは事故で亡くなった同級生の母親と会うことになりました。

チャン・エジンさん
「こんにちは。
はじめまして。」

娘を亡くした、ノ・ヒョンヒさんです。
SNSなどを通じて、エジンさんの事故の記憶を伝える活動を見守ってきました。

ノ・ヒョンヒさん
「どこに住んでいるの?」

チャン・エジンさん
「この近くです。
事故のあと、引っ越しました。」

エジンさんはこの5年間、生き残ったことに罪悪感を抱えてきたと打ち明けました。

チャン・エジンさん
「4月になると、友達を思い出して涙が出ます。
苦しみに耐えられたのは、友達のために活動していたからです。
気持ちが前向きになりました。」

ノ・ヒョンヒさん
「何も言わなくても私にはわかるよ。
とてもつらかったね。」

ヒョンヒさんは、「自分の人生を生きてほしい」と勇気づけてくれました。

ノ・ヒョンヒさん
「あなたたちが生きる姿は、私たち遺族の支えになる。
でも、重荷に感じないでほしい。
忘れることはできないと思うけど、未来の足かせにしないでほしいの。」

亡くなった友達への手紙

そして昨日、エジンさんは追悼式に参加。
生き残った同級生と一緒に書いた手紙を読みました。

チャン・エジンさん
「最近は桜の花を見ると、つらい気持ちになります。
ただ咲いて散るのが美しいと思っていました。
どうしてこうなったんだろう。
遠い将来、あなたたちに会いに行きます。
恥ずかしくない私になって会いに行きます。
私たちも忘れないから、あなたちも忘れないでね。」

あの日から5年、今の正直な気持ちでした。

チャン・エジンさん
「会いたい気持ちをことばにしました。
事故がなかったことにはできないし、罪悪感も消えないと思います。
私は罪悪感を抱えながら、明るく生きていきたいです。」

事故を語り始めた生存者たち

高瀬
「今も多くの生存者がトラウマに苦しんでいるということですが、エジンさんの言葉を聞いて、生存者や遺族の声に耳を傾け続けることが大切だと感じます。」

和久田
「事故当時高校2年生だった生き残った生徒たちも今は大人になり、取材に応じるなどして、少しずつ事故のことを語り始めているということです。」

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