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2019年4月16日(火)

熊本地震3年 南阿蘇村 自慢の名湯 待望の再開

高瀬
「熊本地震で大きな被害が出た場所の1つが、南阿蘇村です。
今日(16日)、村では、地震によって休業を余儀なくされた村自慢の温泉が、3年ぶりに営業を再開します。
3年前、南阿蘇村では各地で大規模な土砂崩れが発生。
車が巻き込まれたり、大学生が住むアパートが倒壊したりして、関連死を合わせ、30人が亡くなりました。」

和久田
「今も復興への歩みが続く村で、地域の人々の励みになりたいと、再開を決めた温泉。
けさはそこに佐藤アナウンサーが行っています。」

「通過点の3年目」 復興への一歩

佐藤
「南阿蘇村を代表する温泉の1つ、『地獄温泉』です。
200年前、江戸時代から湯治場として利用されてきました。
その地獄温泉で今日から入浴が再開されるのが、こちらの露天風呂です。

白く濁ったお湯が特徴です。
お湯の表面、ボコボコとあぶくが出ているんですが、実はこの浴槽のすぐ真下に源泉があって、生まれたてのお湯を楽める、とても気持ちのいい温泉なんです。
さらに、この浴槽の底には、このような泥が沈殿しています。

こうした泥を顔や体に塗る『泥パック』が楽しめると、女性にも好評でした。
地震の前には、年間4万人が訪れる、この地域の観光拠点となっていました。

しかし3年前、状況は一変します。
3年前の4月16日、いわゆる本震が起きた日の朝の様子です。

建物も被害を受け、周囲の道路も寸断されました。
当時、宿泊していたお客さんや従業員の方など、およそ50人が孤立し、自衛隊のヘリコプターで救助される事態となりました。
さらに追い打ちをかけたのが、2か月後に起きた大雨による土石流災害。
この建物のすぐそばまで土砂が押し寄せました。
建物のほとんどは再建不可能となってしまいました。

今も山肌を見ますと、その3年前の被害の跡が残っています。
土砂を取り除く重機などがなかなか入れず、復旧作業は難航しました。
それでも、ボランティアの方の力を借りるなどして、今日の再開の日を迎えることができました。

では、お話を伺います。
この地獄温泉を経営する河津誠さん、謙二さん、進さんの三兄弟です。

まず誠さんに伺います。
今日、入浴を再開された、この4月16日というのはやはり特別な日でしょうか?」

河津誠さん
「そうですね、発災依頼、毎年この日を選んでいろいろなイベントなどをやってきましたけれども、通過点の3年目です。
ただ、残す仕事がたくさんありまして、あくまでもスタートラインがやっと引けたかなというところです。」

佐藤
「そしてこの入浴再開に先立ち、地域の方には一足先に入っていただいたそうですが、進さん、皆さんの様子はいかがでしたか?」

河津進さん
「3年間お待ちいただいたんですが、皆さん入られた瞬間に笑顔になられて、楽しくお話をされている姿を見て、よかったなと思いました。」

佐藤
「この地獄温泉では震災から3年がたって、ようやく1歩踏み出すことができました。
ただ、この南阿蘇村は全体を見渡すと、この復興の道はまだ半ばです。」

“見せる復興” 南阿蘇村はいま

今なお、地震の影響が残る、南阿蘇村。
今年(2019年)3月末の時点で、643人が仮設住宅での暮らしを余儀なくされています。
土砂崩れを防ぐための工事が続き、自宅を再建する土地の整備が遅れているためです。

3年前に崩落した阿蘇大橋。
熊本市方面と南阿蘇村を結ぶ交通の要衝でした。
来年度の開通に向けて、今も工事が続いています。

復興のカギを握るのが、主要な産業である観光業です。
地震後、およそ半分に減った観光客は、いまだ震災前の水準に戻っていません。

トロッコ列車も走り、多くの観光客で賑わっていた南阿蘇鉄道。
地震の3か月後には、一部の区間で運転を再開しましたが、全線の開通にはまだ時間がかかる見通しです。

宿泊施設も、いまだ4分の1が営業を再開できていません。

ペンション野ばら 栗原有紀夫さん
「この辺に玄関があったんです。
こっち全部崩れちゃったんで。」

高台でペンションを経営していた栗原有紀夫さんです。
地震で、建物の下の地面が崩れ、ペンションも倒壊しました。
再建の意思は固めていますが、果たして客足が戻ってくるのか。
不安を募らせています。

ペンション野ばら 栗原有紀夫さん
「当初2年くらいあれば、なんとか再開できるんじゃないかと。
(復興は)とにかく長いですよね。
これは表現できないくらいきつい。」

こうした中で、新たな取り組みが始まっています。
それが、“見せる復興”。
被災した地元の人たちが語り部になって、復興に向けた現状のありのままを観光客に知ってもらおうというものです。

河津さんも、これまでガイド役として参加。
地獄温泉が変わっていく様子を伝えてきました。

地獄温泉 青風荘 河津誠さん
「地獄温泉、復活してほしいと応援してくれます。
やれない理由はありません。
ここから必ず復活できる。」

復興への思い

佐藤
「温泉の入浴ができるようになった地獄温泉も、宿泊を含めた全面再開は、まだまだ時間がかかります。
宿泊施設があった場所には大きな岩が転がって、そうした岩や土砂を取り除く工事が続いています。

こちらは、この宿の本館です。
明治時代に建てられて、100年以上の歴史がある建物です。
この本館も、地震、そして土石流災害で大きな被害を受けました。

中をのぞいてみますと、流れ込んだ土砂は取り除かれましたが、床板や壁などは、はがされたままとなっています。
宿では、この本館を修復して、1年後に宿泊を再開させたいとのことです。
再び、河津さんにお話を伺います。」

高瀬
「先ほどの“見せる復興”に参加した皆さんの反応はいかがでしたか?」

佐藤
「次男の謙二さんが観光協会の会長も務めていらっしゃいますので、伺いたいと思います。」

河津謙二さん
「この震災で、観光協会だけでなく、多くの業者が傷ついています。
それで一生懸命考えて、いろいろなツーリズムを行うさなかで、『入れない所を見てみたい』という声を聞きますので、震災の跡やダム工事の現場を見せるようなツアーも考えて、今実行しているところです。」

佐藤
「最後に誠さん、この温泉の復興、そして村全体の復興についての思いを聞かせてください。」

河津誠さん
「実は私たちの地域、袴野区というところは全滅しております。
一軒も残っていないんですね。
少しずつ復興しておりますが、その人たちの灯りにもなりたいし、それから200年この宿を続けて湯治をやってまいりましたので、新しい湯治の形を提案しながら頑張ってまいりたいと思います。」

和久田
「温泉はこのあと10時にオープンということです。
心待ちにしてきた地元の人や全国からの観光客など、多くの人で賑わってほしいですね。」

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