これまでの放送

2019年4月12日(金)

人口減少で急増 人が住まない“無住集落”

和久田
「人口減少が進む中、限界集落の増加が問題になってきましたが、今、さらに深刻な、人の住まない『無住集落』が各地に生まれています。」



高瀬
「国の調査で、無住集落は過去5年間に190か所増加したことがわかりました。
そして、2025年には、さらに570か所増えると予測されています。」

和久田
「こうした中、集落を離れた元住民たちが通いながら維持管理する取り組みが各地で始まっています。
住めなくてもふるさとを守りたいという人々の活動を取材しました。」

ふるさとを守る元住民たち

リポート:丸山健司(NHK福井)

福井県小浜市の中心部から車で30分の深い山中。

冬には2メートルの雪に閉ざされる、上根来集落です。
かつては100人以上が暮らしていましたが、高齢化や豪雪のため、年々減少。
5年前、完全に人が住まなくなりました。

しかし今も、落ち葉やゴミも目に付かないほど、きれいに保たれています。
実は、集落を離れた元住民が団体を作り、自分たちの手で維持しているのです。

団体の代表、岸本長三さんです。
移転先から頻繁に通い、およそ30棟の家や倉庫などを見回っています。

こちらは岸本さんが暮らしていた、かつての自宅。

岸本長三さん
「この家は上根来で一番古い、江戸時代の家。
170年はたっているのでは。」

やむなく離れた今も家は使えるようにしています。
先祖が代々守ってきたふるさとを荒らすわけにはいかないと、管理を続けているのです。

岸本長三さん
「(移転先で)夜パッと目が覚めて、なぜこんなところで寝ているんだろう。
普通なら上根来で寝ていなければいけないのに。
思い出がつまっているから。」

この日、岸本さんの呼びかけで元住民20人ほどが集まりました。

目的は、お寺の「雪囲い」。
屋根から落ちる雪の重みで建物が壊れるのを防ぎます。
人手が必要な時は、元住民たちが力を合わせています。

つながりを保つことの大切さ

こうした活動の原点には、ほかの無住集落から得た教訓があります。

上根来から車で5分のところにある集落です。
こちらは廃屋だらけになっています。

元住民
「(この集落の人は)出るのもバラバラだった。
あっちこっち、みんな違う所に行った。」

住民がバラバラになると、ふるさとは荒れる。
岸本さんたちは、つながりを保つことの大切さを学びました。

岸本長三さん
「(隣の集落を)近くで見ていたので、ああいうことはいけないなと。
コミュニティーも無くなってしまうので、できるだけまとまって出ようと話し合った。」

まとまって移転 コミュニティーを維持

そこで目指したのが、ふもとの地区にできるだけまとまって移転することでした。

岸本長三さん
「これが私の家で、これが上根来の人の家。」

最盛期の昭和の中頃にいた20世帯のうち11世帯がここで暮らし、コミュニティーを維持しています。

岸本長三さん
「一番向こうの山を越すと上根来。
あの山の向こうが上根来。」

元住民
「ふるさとに近い所へ行きたいと思っていた。
絶やしたくないし。」

つながりを保つことで伝統の風習 守る

元住民がつながりを保つことで伝統の風習も守られています。

「還暦のお祝いです。」

始まったのは、還暦や厄年を迎えた人が餅を振る舞い、無病息災を願う伝統行事。
上根来が無住集落になって5年たった今でも、途切れることなく続いているのです。

元住民
「年いくと昔のこと思い出すわ。」

元住民
「みんな仲よくしています。
住民がいなくなっても懐かしくて、いいなと思って来ています。」

次の世代にどう引継ぐか “無住集落”の課題

しかし、この活動がいつまで続けられるかは不透明だと言います。
親戚との集まりで、岸本さんは若い世代の気になる様子を目にしました。

元住民
「浩輔、上根来の家の屋根の補修。」

「屋根の補修?」

移転先で生まれた若い世代が増えるにつれ、上根来への愛着が薄くなっているのです。

「僕の世代になると上根来のこと知ってる人がほとんどいないんで、(維持活動は)協力できる仲間がいるからできることで、だんだん縮小していくしかないよな。」

岸本長三さん
「ここで生まれた人はいいけど、(若い人は)上根来で生まれていない。
将来は難しいけど。
帰る所があるのがいちばん。
そういう所にしたい。」

ふるさとを次の世代にどう引き継いでいくべきか。
全国で増え続ける無住集落が問いかける課題です。

“無住集落”の約2割 元住民が維持・管理

高瀬
「離れて暮らしていても何とかふるさとをできる限り守るために、結果として、コミュニティーとかつながりが維持できているということでもあるんですね。」

和久田
「移り変わっていくことはごく自然なことかもしれませんが、1つの気持ちで一緒になれる場所があるということはいいですよね。
実は上根来のような活動は決して特殊ではないんです。

集落を離れても通いながら農業を続けたり、寺や神社など、心のよりどころを維持したりと、ふるさとの大事なものを守る取り組みというのは、全国の無住集落のおよそ2割で行われているということです。
人口減少の中、こうしたケースは増えていくだろうと見られています。」

Page Top