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2019年4月11日(木)

天皇陛下 研究者としての姿

高瀬
「今月(4月)30日に退位される天皇陛下。
公務で忙しい日々を過ごしながら、先週、魚のハゼに関する新しい論文を発表されました。
研究者としての姿からは、公務に臨まれる顔とは異なる一面が見えてきます。」

ハゼ研究で新論文を発表

先週、天皇陛下が6人の研究者とともに発表された論文です。

天皇陛下の名前が、研究のリーダーとして最初に記されています。
この論文は、京都御苑の池に棲むハゼについて、自然界では珍しく、雑種が繁殖を繰り返していることを明らかにしました。
京都御苑の仙洞御所で、6年前に天皇陛下自ら採取されたハゼ。

琵琶湖に多いビワヨシノボリに、よく似ていました。
DNA解析などを行った結果、天皇陛下は「ビワヨシノボリ」と別の種との「雑種」であることを突き止められたのです。
研究のきっかけは、天皇陛下が背びれの前の鱗の数が多いことに着目されたことでした。
共同研究者の一人、京都大学名誉教授の中坊徹次さんです。

京都大学 名誉教授 中坊徹次さん
「最初のとっかかりは天皇陛下らしい。
研究者は小さな違いに結構こだわる。
(天皇陛下は)そのこだわりを簡単に諦めずに追究されていく。」

“全部見ないと気が済まない”

天皇陛下が研究を始められたのは、皇太子時代のおよそ60年前。

公務で北海道を訪れた時には、研究のために湖を探索するなど、フィールドワークも積極的に行われてきました。
ハゼ類は2,000種を超え、魚類の中でも特に種類が多い仲間です。
天皇陛下は、その「分類」を専門にされてきました。

研究者の中坊さんによると、天皇陛下が好んで観察されるのは、このような小さくて色の薄い地味な種類。
目立たない、わずかな違いを見つけることにやりがいを感じられているからだと言います。
そのためには労を惜しまず、集められた3万以上の標本を、一匹ずつ丁寧に観察されるといいます。

京都大学 名誉教授 中坊徹次さん
「ものすごくよく似ていても、違う種は結構いる。
“その違いの意味って何だろう?”と。
全部見ないと気が済まないという、天皇陛下のご性格は学者にぴったり。」

世界的にも高い評価を得る研究成果

天皇陛下の研究の成果は、世界に広く知られています。
国際会議で、外国の研究者と議論を交わされることもありました。

天皇陛下
「眼窩下管はありません。」

外国の研究者
「眼窩下の骨の有無は、体の大きさと関係するのですか?」

天皇陛下
「体の大小で顕著な違いはありません。
体の小さい種でも見られます。」

これまでに発表された論文は33編。
中でも世界的に高い評価を得ているのが、皇太子時代の論文です。

ハゼ類の頭部に描かれた細かい点は、感覚器官を表しています。
この配置の違いで、種を分類できることを発見されました。
この分類法は、今も世界中で用いられています。

京都大学 名誉教授 中坊徹次さん
「大発見ですね。
世界で魚類学やっているほとんどの方は、天皇陛下の論文をご存じだと思う。
ハゼの学者として“一流”ということばを使わせていただけるならぴったり当てはまる。」

約60年にわたる天皇陛下の研究

さらに、新種も発見されています。
ミツボシゴマハゼ、クロオビハゼなど、その数は8種に上ります。
ハゼは、海でどのような生態を見せているのか。
依頼を受けて、天皇陛下の研究に協力してきた人がいます。
西表島で40年以上、ハゼを撮り続けるカメラマンの矢野維幾さんです。

水中カメラマン 矢野維幾さん
「(ハゼの)標本とは違う、生態的なことを天皇陛下に見せたい。」

矢野さんは、この15年間ほぼ毎年、皇居に呼ばれてハゼの写真や映像を、天皇陛下に見せてきました。
普段見ることのできない生きたハゼの映像を、天皇陛下は、身を乗り出して一つ一つ丁寧にご覧になるといいます。
中でも、4Kで撮影した高精細の映像に、天皇陛下は強い関心を示されました。

オイランハゼが自分をアピールするために巣穴から飛び出す、この映像。
天皇陛下は、すぐに細かいところに目を付けられました。

水中カメラマン 矢野維幾さん
「跳び上がるときに、どのひれを使って跳び上がっているとか、そういうことに関心がおありになった。
よく見ると胸びれだけを使って跳び上がって、胸びれでコントロールしながら戻っている。
そういうのがよく(4K)映像でわかる。」

4Kが映し出す詳細な生態。
「これは研究材料になる」という話になったといいます。

水中カメラマン 矢野維幾さん
「細かい顔の色素胞とかまできれいに見えるので、“研究に使えるんじゃないか”というような話はしました。」

水中カメラマン 矢野維幾さん
「小さい地味なハゼがたくさんいます。」

矢野さんは、天皇陛下が退位された後も、研究を支えていきたいと考えています。

水中カメラマン 矢野維幾さん
「天皇陛下に支障がない程度に、実際にフィールドを歩いてもらって、見てもらったりとか、場合によっては採集をしたりとか。
天皇陛下もぜひそういった方面に時間を使われて、楽しまれたら。」

およそ60年にわたって研究を続けられてきた天皇陛下。
かつて、研究者との懇親会でこう話されています。

天皇陛下
「尽きることのない未知の研究領域のあるハゼ類を研究の対象としたことは、私にとって非常に幸せなことであったと思います。」

公務の合間に礼服で議論に参加されることも

和久田
「天皇陛下は、今回の論文とは別に進められている研究もあるということです。」

高瀬
「これまでは公務の合間に礼服で議論に参加されることもあったと言います。
退位した後は、じっくり研究をされてほしいと思います。」

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