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2019年4月10日(水)

企業主導型保育所 制度から3年 多様な働き方は

和久田
「新年度になり、ぜひ皆さんと考えていきたいテーマ、子育てと働き方についてです。」

高瀬
「子育てをする人の多様な働き方を実現するため、国が導入したのが『企業主導型保育所』です。
企業が、主に従業員のためにつくる『認可外保育所』で、認可保育所に比べると、夜間や休日などにも対応したり、年度の途中からの入所が可能だったり、柔軟な保育ができることが特徴です。

制度が始まって3年、多様化する働き方を支えることができているのか、現場を取材しました。」

メリットと誤算

リポート:石川香矢子(おはよう日本)

都内にあるバイオベンチャーです。
オフィスの一角に、去年(2018年)5月、保育所を設置しました。
運営は保育事業者に委託しています。

植木恵子さんです。
地元の認可保育所に入れる補償もない中、確実にスピード復帰を果たすため、会社の保育所を選びました。

植木恵子さん
「戻りたいと思ったタイミング、時期を気にせずに保活(子どもを保育所に入れる活動)に悩まずに預けて仕事ができる。
非常にありがたく思っています。」

会社に保育所があるメリットは、他にもあります。
病気や災害など、何かあればすぐに駆けつけられる安心感の他、職場の仲間が子育てを応援してくれる雰囲気も感じられます。
植木さんのスピード復帰は、会社にとっても有益です。
経験やノウハウのある社員は、即戦力として売り上げに貢献してくれるからです。

植木恵子さん
「市場的にはニッチよりになってくると思うんですけど、女性向けのメニューにもいけて、いろんな切り口があるんじゃない?」

社員
「ま、ま、ありだと思うよ。」

植木さんの上司 安井丈拓営業課長
「年度の途中で、なかなか人を増やすことも難しい。
早期に帰って来られるのは、我々としては非常にありがたい。」

ところが、会社には誤算もありました。
思ったより利用する社員が少ないことです。
現在定員12人に対し、利用者は3人。
多くの社員は、利用したいと思うものの、子どもを連れて通勤することは難しいと感じ、結局、地元の認可保育所を希望しているのが実態です。

執行役員 須佐大介さん
「通勤が非常にハードルになっておりまして、みなさん地元の認可園に入れてしまう。
会社としては、なかなか、いかんともしがたい課題。」

アイデア続々 ITツール活用も

一方、自社の強みを生かすことで、より多様な働き方に対応する企業主導型保育所も登場しました。

都内のITベンチャーが運営している保育所です。
ITツールを駆使し、特色を打ち出しています。
その1つが、専用のアプリを使った、保育士と保護者との連絡の効率化です。
通常はノートでのやりとりですが、子どもの様子をスマ―トフォンなどで随時確認できます。

また、保育所では珍しい、バスの送迎サービスも始めました。
これまで、送り迎えの時間が一定でない保育所は、送迎バスの導入は難しいとされてきました。
しかし、アプリを使うことで、それぞれの保護者の出勤や帰宅時間に合わせた送迎が可能になりました。

開園から2年、30人の定員は満員です。

保育 教育事業 部長
「保育業界の常識が見えてきて、そこからもっと改善できたり、もっと効率化できたり、直せるところが多い。」

企業主導型保育所 急速に広がる背景

高瀬
「取材にあたっている政治部の地曳記者に聞きます。
通勤などの課題はありますが、企業主導型保育所は、多様な働き方の助けになっているようですね。」

地曳創陽記者(政治部)
「少子高齢化が進む中で、『女性の輝く社会』を実現するため、平成28年度に導入されました。
認可保育所に比べて、設置基準は緩やかですが、同じ水準の助成金が国から支給されます。
スタートした平成28年度は、2万人分の受け皿にあたる900の施設が整備され、翌年の29年度には6万人分の受け皿にあたる2,600施設まで増えました。
人手不足が深刻となる中、有能な従業員を確保したい企業側の思惑と、子育てと仕事を両立させたい利用者の利益が一致した形です。」

問われる“保育の質”

和久田
「ただ、これほど短期間に急速に増えたとなると、保育の質など、課題も出てきますよね?」

地曳記者
「そうですね、事業の継続性や保育の質などで、問題も見えてきました。
平成28年度から2年間で、新しく設置された施設のうち、28が経営不振などを理由に経営権を譲渡しました。
また、2つが助成金の不正受給で返還を求められました。

政府が調査したところ、7割以上の施設で、健康診断が適切に行われないなどの問題も指摘されました。
その対応策として、政府の有識者会議は、保育事業者が企業と契約を結ぶ形で新設する場合、5年以上の実績がある事業者に限定するなど、参入基準を厳しくすることなどを取りまとめました。

有識者会議の座長を務めた前田正子教授も、次のように指摘しています。」

有識者会議 座長 前田正子 甲南大学 教授
「素早く、簡単に量を作れるということでは規制緩和ですけれども、事前審査がゆるい分、事後審査を継続的にしなければいけない課題はある。(企業主導型を)重要な保育資源と位置づけて、この事業をうまく育てていくことが必要かと思う。」

ニーズにあった保育へ

高瀬
「今後の子育てと働き方をめぐる問題、取材をして、どういったことが大事だと感じますか?」

地曳記者
「多様な働き方を可能にするためには、利用者の選択の幅を広げる必要があると思います。
軌道に乗っている企業主導型保育所の取り組みを、社会に根づかせていくと同時に、利用者のニーズにきめ細やかに対応した保育の形も模索していく必要があると思います。
専門家は『幼児期の教育や保育は生涯の人格形成の基礎を培う上では大切で、どれだけ愛情を注いで育てられるかに関わってくる』と指摘していました。

利用する親を支えることに加え、子どもの視点から見ても質が高いと言える保育の形を、国だけに任せるのではなく、社会全体で模索する努力が必要だと思います。」

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