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2019年4月9日(火)

“10代で出産” 母親たちの孤立

高瀬
「10代で出産した母親についてです。」

和久田
「その数は、年間およそ1万人。
今、そうした母親たちの社会的な孤立が大きな問題となっています。」

「甘え方がわからない」 社会の偏見の目も

リポート:村山世奈ディレクター(NHK沖縄)

綾さん
「お手伝いしてよ。」

子ども
「いやだ。」

15歳で子どもを出産した、綾さん(仮名)です。
シングルマザーで、2人の子どもを育てています。

綾さん
「なんで泣いているの?」

綾さんは、幼い頃から父親に暴力をふるわれ、中学生のときに家出。
友達の家を渡り歩く中で、恋人ではない男性の子どもを妊娠しました。

綾さん
「中絶は全く(頭を)よぎることもなく。
(子どもは)自分の中で唯一、自分を認めてくれる存在だし。
自分のエゴかもしれないけど、この子がいることで、生きてていいのかなって思えた。」

パートナーもなく、頼れる家族もいないという綾さん。
生活のための仕事も育児もひとりで抱えこんで、重度の「うつ」を発症。
働けなくなり、今は生活保護で暮らしています。

綾さん
「(残高は)62円までいっている。」

綾さんは、どんなに追い詰められても、他人に助けを求めることにはためらいを感じると言います。

綾さん
「(ずっと)家族がいないような状況だったので、(他人に対して)甘え方がわからない。
感覚が無いんです、つらい、きつい、助けて(という感覚)。
もう死んだ方が楽じゃないか。
ただ、子どもを残しては死ねない。」

10代で出産した女性の中には、綾さんのようにひとりで問題を抱え混んでいる人が少なくありません。
10代で出産した女性102人に聞いた調査によると、およそ4割が婚姻届は未提出。

また、ひとり親家庭で育った人も多く、実家にも頼れず、ひとり追い詰められている姿が浮き彫りになっています。

さらに、専門家は、女性たちの孤立を深めているのは、10代の母親に向けられる社会の偏見の目だと指摘します。

東京女子医科大学 看護学部 小川久貴子教授
「『10代の妊婦さんってどう思いますか?』と私たちは聞くが、ネガティブな思考が皆さん多い。
偏見があると、10代はすごく敏感な方が多いので、心を開かない。
なかなか本当のこと(悩み)を言ってくれないことも多い。
そのへんの大きな課題は、社会的に取り組んでいかないといけない。」

孤立する若い母親 社会とどうつなぐ?

孤立する若い母親を、どう社会とつなぐのか。
2年前まで、少年院で法務教官をつとめていた、武藤杜夫さんです。
今は、孤立しがちな10代の若者を支援する活動をしています。

日本こどもみらい支援機構 代表 武藤杜夫さん
「晩飯、食った?」

少女
「ううん。」

親やパートナーとの関係が絶たれたまま出産し、困窮する10代の女性を数多く見てきました。

日本こどもみらい支援機構 代表 武藤杜夫さん
「放っておいても(悩みを)彼氏に言えないとか、親に言えないとか、そういう子たちが多くて。
本人たちからは(人と)つながりきれないので、どんどん孤立していってしまうし、誰かが寄り添わないと。」

この日、武藤さんは、ある少女と待ち合わせをしていました。
高校には行かずアルバイトをしている、16歳の美咲さん(仮名)です。
妊娠したかもしれないと相談があったのです。

日本こどもみらい支援機構 代表 武藤杜夫さん
「妊娠しているかもっていうのは、最初なんで分かったの?」

美咲さん
「生理が来なくて。」

美咲さんには、頼れる家族がいません。
母親は未婚のまま美咲さんを出産し、今は別の家庭を作って遠くに暮らしています。
武藤さんが産婦人科へ付き添いました。
検査の結果、美咲さんは妊娠2か月でした。

美咲さん
「産みたい。
今まで家族とかが自分に無かったから、自分からしたらこの赤ちゃんしかいないから。
だから産む。」

武藤さんは、美咲さんをそばで支える人が必要だと、交際している同い年の少年に連絡をとりました。

少年
“はい。”

美咲さん
「もしもし。
病院行ったわけよね、(妊娠)9週目だった。」

少年
“うん。”

日本こどもみらい支援機構 代表 武藤杜夫さん
「もしもし。
(これから)どうしようかなと思っているんだけど、おまえ親に話せるか?」

少年
“一応、大丈夫です。”

日本こどもみらい支援機構 代表 武藤杜夫さん
「話しにくいようだったら、自分も間に入るから。」

少年
“はい、OKです。”

産まれてくる子を無事に育てていくために。
少年は後日、武藤さんと一緒に自分の親に相談する場をつくると約束しました。

日本こどもみらい支援機構 代表 武藤杜夫さん
「出産して子どもを育てていくって、あれだけ決意しているんだったら、僕たち大人がそこに寄り添って、どうやってこの子が出産するために、子育てしていくために見守っていくのか。
その子を孤立させない大人の姿勢、それが必要だと思います。」

支えるための仕組みづくりを

高瀬
「取材した村山ディレクターです。
自らが育った環境の中で孤独を感じていたからこそ子どもをもちたい、生みたいという思いが印象的でしたね。」

村山世奈ディレクター(NHK沖縄)
「私も取材するまでは、なぜ、苦労が多いのに、それほど若くして出産するのだろうと思っていました。
でも実際に話を聞いてみると、家族との関係や暴力に悩んできたからこそ、早く新しい家庭を持ちたいと出産に臨んでいる人もいて、支えたいと思いました。」

和久田
「VTRに出てきた武藤さんのように、そばで支援してくれる人がいたらいいなと思うのですが、全国的な状況としてはどうなのでしょうか?」

村山ディレクター
「一部の自治体では、支援の動きも始まっています。
例えば、全国でも特に10代で出産する人の割合が高い沖縄市では、去年(2018年)から、10代で妊娠・出産した人の居場所をもうけ、母親同士や支援者とつなげるなど、支える体制をつくっています。

また、東京の世田谷区や八王子市でも、10代で出産した人が優先的に保育施設に子どもを預けられるようにしています。
しかし、こうした取り組みはまだごく一部です。
孤立しやすい10代の母親を支えるための仕組みを、社会全体に広げていく必要があると感じました。」

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