これまでの放送

2019年4月7日(日)

パイロットが足りない 命救う現場で何が

「橋の下に6人、救助求めてますね。」

地震などの災害、山での遭難。
出動回数が増加する、防災ヘリ。
しかし今、深刻な問題に直面しています。

「パイロットが不足しています。
危機感を持っております。」

命を救う現場で、いったい何が起こっているのでしょうか。

防災ヘリ 運航休止も…

愛知県防災航空隊。
“24時間365日運航”を掲げ、災害救助などにあたってきました。
ところが…。

「お疲れ様でした。」

去年(2018年)4月、日没から日の出までの、夜間の運航を取り止めました。

愛知県防災航空隊 山田雅也隊長
「防災ヘリを運航するため必要な技量をもつ操縦士の確保が難しくなった。」

この隊では、民間の運航会社からパイロットが派遣されています。
これまで昼は1人、夜は視界が悪いため2人のパイロットで運航していました。
しかし、夜の要員が確保できなくなったのです。

愛知県防災航空隊 榊原雄平副隊長
「消防職員として誰かのために何かをする、24時間対応すると誰もが思っている。
非常に残念なことだが、受け入れないといけない。」

パイロット不足 なぜ?

パイロット不足の原因の1つが、ベテラン層の退職です。
防災ヘリのパイロットは、およそ半数が50代以上。
この層の退職が進んでいるのです。

さらに人手不足を加速させているのが、相次ぐ事故でパイロットの増員が求められていることです。
おととし(2017年)3月には長野県で、去年8月には群馬県で防災ヘリが墜落。
いずれも、パイロット1人で運航する中での事故でした。

このため国は、パイロット2人で操縦する体制を整えるよう、全国の航空隊に呼びかけています。

こうした中、思い切った判断にふみきったところもあります。
浜松市消防航空隊です。
去年10月、1年間の運休を決めました。

きっかけは3年前、2人いたパイロットの1人が定年退職したことでした。
代わりの人材は見つからず、年間およそ300時間の運航を1人に任せなければならなくなったのです。

浜松市消防航空隊 植平耕市隊長
「1人で責任を負って飛んでる中で、精神的にも肉体的にも負担をかけているという思いはあった。」

新たに2人のパイロットを採用したものの、防災ヘリは未経験。
訓練を重ね、2人体制での運航ができるようになるまで、運休することにしました。

浜松市消防航空隊 植平耕市隊長
「うちの隊は絶対事故にならないという自信はない。
もしかしたらあるかもしれない。
ならないために、リスクをしっかり管理してやっていく。
2人操縦体制が確立できるまでは、運休をしてしっかり基盤をつくる。」

人材不足 育成に時間が…

なぜ、防災ヘリを担う人材が少ないのか。
理由の1つが、操縦に高い技術が要求され、育成に時間がかかることです。
岐阜県防災航空隊で、若手パイロットの訓練を取材することができました。
この日は、山での救助活動を想定した、操縦訓練を行いました。

「南側から進入します。」

「速度気にして。」

山岳地帯など、複雑な地形での活動が多い、防災ヘリ。
平地にはない気流や気象の影響を受けるため、高い判断力と操縦技術が要求されます。

「もうちょっと右行かないと。
左側に木があるから。」

一般的に必要とされる飛行時間は1,000時間以上。
人の輸送や測量など、ほかの業務のヘリの倍以上です。

「谷間の目標はとりにくいから、木が見えると目標になりやすいね。」

この隊では、3年前に新人を採用し、訓練を積んできましたが、一人前になるには最低でもあと2年かかるといいます。

岐阜県防災航空隊 川木賀仁操縦士
「経験のある操縦士がちまたにいないので、自隊で養成しなければパイロットが確保できない。
処置をとらないと、この先、防災ヘリ組織の運営が非常に難しくなるのでは。」

奨学金制度の導入 未来を担う人材を

こうした中、パイロット不足を解消しようと、新たな試みが始まっています。
6つの県から委託を受け、防災ヘリを運航するこの会社が始めたのは、奨学金制度の導入です。
防災ヘリのパイロットになるまでの、ルートの1例です。

まず養成学校に通って操縦免許をとり、運航会社に就職。
そこで人や物資の輸送など、およそ10年の経験を積んだあと、自治体に派遣されます。
しかし養成学校は、1,400万円の学費がかかります。
そこで、この運航会社では、卒業後、入社することを前提に、学費のうち1,000万円を負担します。
こうした取り組みが、安定した若手の採用につながっているといいます。

パイロット志望者
「奨学金訓練制度がなかったら、確実に全て自己負担になるので、(パイロットの道に)踏み切れなかったかもしれない。」

パイロット志望者
「訓練に励んで、一人前のプロパイロットになれれば。」

中日本航空 ヘリコプター運航部 真木賢一部長
「(人材不足の)危機感を数年前から感じていたので、資金的に援助できて、若い方がこの業界で一歩ずつ経験してもらえれば。
今の仕事を回すためには即戦力がほしいが、5年後、10年後を担っていただく人も育てなければならない。
地道にやっていきたい。」



新井
「人命に関わる現場ですから、体制の整備は急務ですよね。」

石橋
「専門家は、防災ヘリを『社会的インフラ』と捉え、公的にパイロットを養成する仕組みや、奨学金制度を作るなど、社会全体で育てる意識が必要だと指摘しています。

国も、パイロット2人制を実現している航空隊に対して、運航会社に委託するための経費や養成にかかる費用について、財政支援を始めているということです。」

Page Top