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2019年4月4日(木)

推計61万人 中高年の“ひきこもり”

高瀬
「先週、衝撃的なデータが明らかになりました。
こちら、国内で『ひきこもり』となっている人が推計100万人以上いるというのです。」


和久田
「特に今回、初めて調査が行われたのが、40歳から64歳で『ひきこもり』の人、推計61万人あまりに上ることが明らかになりました。
これまで若者に多いとみられていた『ひきこもり』の問題が、中高年にも広がっている実態が浮かび上がったのです。
こうした状況で、今、危惧されているのが、本人と年老いた親が共に孤立してしまうというケースです。」

親子で追い詰められるケースも

45歳の男性です。
大学卒業後に就職した会社になじめず、2年で退職。
その後、非正規の仕事を転々とし、20年間、断続的にひきこもってきました。
40歳を超えて、親を頼りとする生活。
自分を責め、苦しみ続けると言います。

男性(45)
「思えば思うほど、今日も何も出来ないと落ち込んで、悪循環。
どんどん世間から離れていく。」

こうした、ひきこもる中高年が高齢の親とともに孤立し、追い詰められるケースが相次いで見つかっています。

ケアマネジャーの安達聡子さんです。
高齢の親が、働いていない中高年の子どもの面倒をみている事例を、頻繁に目にするといいます。

地域包括支援センター 安達聡子さん
「息子さんは仕事をしていなくて、ずっと家にいる。」

要介護3の認定を受けた90代の女性。
ごみが散乱した状態の家を訪ねると、ひきこもっていた50代の息子がいました。
およそ1万人の高齢者がいる地域を担当している安達さん。
こうした事例は100件近くに上っているといいます。

地域包括支援センター 安達聡子さん
「実際に地域を回ってみて、こんなに多いと思っていなかった。
ちょっとびっくりした。
氷山の一角なのかなと感じている。」

札幌市では深刻な事態も起きています。
去年(2018年)1月、アパートで82歳の母親と、ひきこもりの状態にあった52歳の娘が衰弱死しているのが発見されたのです。
娘は周囲に助けを求められず、亡くなった母親のそばで生活していたといいます。
ひきこもる中高年を子に持つ親たちは、年を重ねるたびに不安を募らせています。

75歳の男性です。
一緒に暮らす息子は、15年にわたりひきこもり、まもなく40歳を迎えます。
“自分の身に何かあったとき、子どもはどうなるのか”。将来の見通しは立っていません。

父親(75)
「健康でいてあげないと、親子そろって、ひきこもりになってしまう。
私も若くない。
不安だらけ。
はっきりいって、夜も眠れない。」

周囲から見えにくい中高年の“ひきこもり”

高瀬
「取材した高橋記者とお伝えしていきます。
『氷山の一角』という言葉もありましたけれども、中高年の人のひきこもりというのは、なかなか分かりにくいという問題があるんですね。」

高橋大地記者(ネットワーク報道部)
「そうなんです。
学校などに通う年代の人であれば、ひきこもっていることが分かるケースもあるんですけれど、中高年になると、なかなか周囲からは見えづらいというふうに言われています。」

和久田
「そして、一緒に年老いた親も孤立してしまうような事態、これはどのくらい広がっているんでしょうか?」

高橋記者
「ひきこもりの家族の会が、高齢者の介護や支援などを行っている全国の『地域包括支援センター』を対象に調査を行いました。

その結果がこちらで、回答のあった263か所のうち、6割近く(153か所)で“高齢の親と同居する成人の子どもがひきこもっているケースがあった”としています。
ただ、センターは、あくまで高齢者の介護や支援などを専門に行うところですので、ひきこもっている人の支援には結び付きにくいという実情があるんです。」

和久田
「分かったとしても、すぐには手が差し伸べられないという中で、どう対処していけばいいんでしょうか?」

高橋記者
「中には自治体が中心となって、地域ぐるみの支援に乗り出しているところもあるんです。」

どう支える? 本人や家族

リポート:福田元輝(NHK岡山)

岡山県総社市です。
去年、ひきこもりの人たちが集まる居場所を設けました。

住民
「きょうは暖かいですね。」

空き家に作った居場所で、迎えるのは地域の住民です。
この日、来た当事者は2人。
市の専門の相談員がメールや電話、地道な訪問を重ね、来ることができるようになりました。
話し相手になるのは、市の講習で、ひきこもりについて学んできた住民たち。

支援する住民
「かぜは、ひかなかったですか?」

ひきこもっている男性
「どうかな。
ちょっと、のどが痛い。」

今では60人の住民が協力。
“理解ある地域の人であれば、何気ない話もしやすい”と、徐々に通ってもらう回数も増えています。

支援する住民
「ひきこもりというか、しんどい思いをしている人たちに、何か力添えできないか。
自分のしんどさを分かってくれる仲間のひとりになれたら。」

当事者の支援だけはありません。
ひきこもる人たちの家族どうしが語り合う場も、毎月開かれています。

この日、心のうちを語ったのは、87歳の女性。
ひきこもる50代の息子を持つ母親です。

母親(87)
「日々考えながら、元気にだけは暮らさなければ。
自分がへこたれて寝てしまったら終わりだなと思って。
話を聞いたり、自分でしゃべったりすると、ちょっと肩が軽くなったというか、少し楽になる。」

“ひきこもり”支援 複数の機関の連携が重要

高瀬
「近くで受け止めてくれる人がいて、つながりを持てるということが、まずは大事になってくるということなんですよね。
この支援においては、どういったことが大事になってきますか?」

高橋記者
「総社市の取り組みは、地域の民生委員や医師会ですとか、教育委員会などが連携して、複数の部署や機関の垣根を越えて進められています。

ひきこもりの問題に詳しい、愛知教育大学の川北稔准教授は、『ひきこもる中高年の人を見つけて、支援して見守るには、単一の機関だけではなく、複数の機関が連携することが重要だ』というふうに指摘しています。
ひきこもっている中高年の人たちが、再び社会とつながりたい、というふうに思った時に、受け入れていく地域や社会をどういうふうに作っていくのか、今回明らかになった61万人という数字が改めて問いかけていると思います。」

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