
和久田
「けさのクローズアップは、自治体が力を注ぐ結婚支援についてです。」
和久田
「けさのクローズアップは、自治体が力を注ぐ結婚支援についてです。」
続々と誕生するカップル。
今、成婚実績でトップクラスを誇るのが、愛媛県。
この10年で、実に1,043組を結婚に導きました。
「とっても幸せです。」
人口減少に歯止めをかけるため、お見合いの席になんとサポーターを同席。
サポーター
「ひと組でも多くのカップル誕生、がんばるぞ!」
えひめ結婚支援センター 事務局長
「適切なアドバイスと、背中を押すことが重要。」
結婚に踏み切れない今どきの男女を後押しする秘策とは。
リポート:菅美可子(松山放送局)
昨日(28日)結婚式を挙げた、41歳の藤田将さんと、28歳の千晶さんです。
実は2人、AIによって引き合わされました。
これが、愛媛県が4年前に全国の自治体に先駆けて導入したAI搭載のシステムです。
「意外な相手」とのお見合いの機会を増やすためです。
AIが選ぶ「意外な相手」とは?
利用者は、まず自分のプロフィールや趣味、相手に求める条件を入力します。
例えばハナコさん、希望年収は400万円以上、身長は1m65cm以上、映画と旅行が趣味と打ち込みます。
すると、条件に合うイチロウさんが選び出されます。
今度はAIが、イチロウさんを好きな他の女性たちを探し出します。
イチロウさんを好きな女性には、カラオケとゲームが趣味のユミさんがいます。
ユミさんは趣味が重なるジロウさんともマッチしました。
AIは、ユミさんにマッチした相手なら、きっとハナコさんも好みが合うだろうと考え、例えジロウさんがハナコさんの条件には全く合わなくても引き合わせます。
こうしてお見合いの機会を増やした結果、お見合い成立の確率がAI導入前に比べて2倍になりました。
藤田さんも、妻の千晶さんは、当初考えていた条件と違う意外な相手だったと振り返ります。
藤田将さん
「不安でいっぱいだった、年の差もあるし。
とりあえず会うしかない。」
AIは確実にお見合いの相手を探し出してくれますが、問題はそこからです。
交際をうまく進められない男性がほとんどなのです。
藤田さんも、その1人でした。
現在41歳の藤田さん、どこか自分に自信が持てずにいました。
およそ20年前、バブル崩壊後の就職氷河期。
藤田さんは、希望していた大手企業には入社できませんでした。
その後、就職したものの、収入面に不安を抱えるなど、前向きになれないまま時間が過ぎていきました。
藤田将さん
「こんな収入の人間に言い寄られたら嫌だろうなと勝手に思っていて、それを逃げ道にしていたところは正直ある。」
そんな藤田さんのようなコンプレックスを抱える人たちの背中を押そうと、愛媛県が打ち出したもう1つの秘策が「おせっかい」をするボランティア集団です。
主婦、教師、離婚調停員など、286人が最初の出会いからゴールインまで、とことん世話を焼くのです。
その「おせっかい」には、この地域で育まれた独特の精神が根づいています。
四国霊場を巡る、お遍路さん。
「どうぞお接待です。
おあがりください。」
お遍路さんの心を癒やしてきたのが、おせっかいならぬ「お接待」です。
結婚支援の「お接待」を行う、山本美枝子さん。
この日、あるお見合いに同席します。
山本美枝子さん
「どうぞおかけくださいませ。」
2人だけだと、いつの間にか会話が続かなくなり、気まずい雰囲気になりがちな今どきの男女。
しかし、山本さんが同席すると…。
山本美枝子さん
「結構、趣味が同じのが多いんですよ。
映画鑑賞、どんなジャンルが好きですか?」
女性
「幅広く…。」
山本美枝子さん
「話題になった?」
男性
「泣ける系がいい。」
巧みに話題を提供し、2人の距離を縮めました。
「お接待」さんのきめ細かなサポートは、まだまだあります。
時には、こんなことまで。
プロポーズされたものの、仕事が忙しいと悩んでいる女性には…。
“仕事も大事でしょうが、最も大事なのは彼との将来ではないでしょうか。”
自信をなかなか持てずにいる男女の気持ちに寄り添い、1歩踏み出す勇気を後押しするのです。
山本美枝子さん
「まず一歩自分で行動起こしてくださいって、だけです。
こんなことはどうしたらいいんだろうと聞いてくれたら積極的に答えるので、『もう任せてね』って感じ。」
幸せをつかむことができた藤田さん夫妻です。
「お接待」さんの存在が、新たな扉を開いてくれたと言います。
妻 千晶さん
「初対面のときからボランティアさんが一緒にいてくれたので、安心感があり、相談しやすかった。」
藤田将さん
「ボランティアがいてくれるから、いいかげんなことはできないというのもあったし、しっかり真面目に向き合わなければいけない。
人生観が変わった。」
和久田
「取材した、松山放送局の菅キャスターです。
AIとお接待さんという両面からのアプローチで、愛媛県の本気が伝わってきましたけど、肝心の、家族を増やして定住っていうところの効果はどうなんでしょうか?」
菅
「愛媛県は、今年度はおよそ3,000万円をかけて結婚支援に取り組んできました。
県によりますと、カップルの多くが県内に定住しているとみられるということで、人口減少対策につながっているのではないかとしています。」
高瀬
「なかなか自分では踏み出せない、背中を押してもらいたいという人たちが結構いるということも驚きましたね。」
菅
「そうですね。
行政の結婚支援に詳しい専門家は、『今の30代や40代は、非正規雇用が広がるなど、不安定な社会で生きてきたこともあり、傷つくことを恐れ、何事にも消極的になって、結婚をためらう傾向が強い』と話していました。
取材してみますと、最近は、適齢期になっても周囲が、結婚に関して不用意に触れることを避ける傾向が強い中で、実はもっと構ってほしいという思いを持った方が多いんだなというふうに感じました。
愛媛県の取り組みは、まさにこうした心理にマッチしたからこそ、成果を上げているのだなと感じました。」