これまでの放送

2019年2月19日(火)

薬を多く服用 副作用の危険

高瀬
「薬をたくさん服用することで、思わぬ副作用を引き起こす危険性についてです。」

和久田
「副作用による症状を『認知症』だと勘違いされるケースもあり、厚生労働省が注意を呼びかけています。」

副作用で“認知症”?

リポート:田中ふみディレクター(おはよう日本)

神戸市内の病院。
脳神経内科に認知症の検診に来た、小池斐太郎さん、85歳です。
小池さんは3年前、ガスやタバコの火を消し忘れるなど、物忘れが急に増えたことから、他のクリニックを受診。
「認知症」と診断され、薬も処方されました。

小池さんの長女
「1日寝ているような状態が続いて、認知症になったのかと。
歩くのもふらついていて、ちょっとおかしい。」

ところが、この病院で診察した医師・平田温さんは、認知症ではないと考えました。
脳のCT画像に、認知症が疑われるような萎縮が見られなかったからです。

吉田病院 脳神経内科 平田温医師
「隙間が多いと脳が縮んでいるんだけれど、あなたの場合は年相応ぐらい。」

そこで平田さんが疑ったのが、薬の副作用でした。
腰痛と帯状ほう疹、不眠症を患う小池さん。
外科と内科、2つのクリニックから処方された薬が合わせて16種類あります。
このうち、4種類の睡眠薬や痛み止めを変更したり、量を減らすことにしました。

吉田病院 脳神経内科 平田温医師
「そもそもそれだけ飲む必要があるのかと。」

小池斐太郎さん
「素人だから何の薬か分からない。」

薬の量を減らして2か月ほどで、物忘れの症状がほとんどなくなったことから、改めて認知症の検査を行いました。

吉田病院 脳神経内科 平田温医師
「今年は何年だか分かりますか?」

小池斐太郎さん
「平成31年。」

吉田病院 脳神経内科 平田温医師
「何があったか隠すので、覚えてください。」

小池斐太郎さん
「スプーン、歯ブラシ、時計…。」

吉田病院 脳神経内科 平田温医師
「すごい!30点満点で27点。
前回23点だったので、点数はよくなったね。
頭がよく働いています。」

検査の結果は、「認知症の疑いなし」。
薬の量を見直すことで、改善したのです。

小池斐太郎さん
「あまり前みたいに忘れるものもない。」

こうした薬の見直しで認知機能が改善したケースは、平田さんが診察した患者のうち、およそ2割に上るといいます。

吉田病院 脳神経内科 平田温医師
「1種類やめることで症状が劇的に改善するのを、現実に体験する。
医師が知っていないといけないことだが、現実にはそれがやめるという行動に至らなく、(薬を)足してしまう、追加してしまう。」

薬 6種類以上で副作用のリスク

多くの薬を飲む「多剤服用」。
それによって副作用のリスクが高まることが、最新の研究で分かっています。
東京大学の研究グループが行った調査の結果です。
高齢者が6種類以上の薬を服用すると、副作用のリスクが高まることを示しています。

そこで、厚生労働省は去年(2018年)、高齢者に薬を処方する際の注意点を初めてガイドラインにまとめました。
「多剤服用」によって、記憶力の低下の他、ふらつきや意識障害、抑うつ、食欲低下など、さまざまな問題が起きると指摘。
高齢者に新たな症状が出た場合には、まず多剤服用の副作用を疑うよう、警鐘を鳴らしています。

高齢者に多い “多剤服用”の副作用

なぜ、高齢者に「多剤服用」が多いのか。
ガイドラインをとりまとめた、東京大学大学院の医師・秋下雅弘さんです。
多くの薬を処方する医師と、薬を飲むことで安心する患者の、両方に問題があると指摘します。

東京大学大学院 教授 秋下雅弘医師
「不安解消のための手段として薬を出すという、医者の安易な処方態度もある。
高齢者は“医者に文句を言ってはいけない”という古きよき日本の考え方、意識の人が多いので、何となく(薬を)もらって帰ってきてしまう。」

薬剤師を中心に防ぐ “多剤服用”の副作用

多剤服用の副作用を防ぐため、先進的な取り組みを始めた病院があります。
ここでは、患者の処方を見直す専門チームを2年前に立ち上げて、毎週、検討会議を開いています。
医師や看護師などを前に、中心となって議論を進めるのは、薬剤師です。
この日は、心不全と脳梗塞を患う男性の薬9種類が本当にすべて必要なのか、検討しました。

国立長寿医療研究センター 薬剤師 溝神文博さん
「血圧が下がってきているのと、利尿薬による有害事象が起こっているのではないか。」

薬剤師は、血圧の低下を引き起こしている利尿薬を見直すよう、医師に求めました。

老年内科 医師
「心機能が落ち着いているのであれば、利尿薬がいるか。」

循環器内科 医師
「本来、利尿薬は切ってみるべき。」

経過に注意しながら、利尿薬など4種類の薬を中止することになりました。
この病院で、薬を3種類以上減らした患者の9割に、副作用がおさまる結果が出ています。

国立長寿医療研究センター 薬剤師 溝神文博さん
「薬物のことなので、薬剤師が率先して関わらないと変えられない部分も大きい。
病院全体の意識が少しずつ変わっている。」

医師・薬剤師に相談を

和久田
「取材した田中ディレクターです。
薬をたくさん服用する『多剤服用』の高齢者は多いと思いますが、改めてポイントは?」

田中ふみディレクター(おはよう日本)
「多剤服用の問題は、『高齢者に起きやすい』ことが特徴です。
6種類以上の薬を飲むと、副作用が出やすいことが分かっています。
そのため厚生労働省は、認知機能の低下など、新たな症状が出た場合には、まず多剤服用の副作用を疑う必要があると注意を呼びかけています。」

高瀬
「高齢者が自分で確認することも大切ですが、複数の医療機関から薬を処方してもらっている場合は、どうすればいいのでしょうか?」

田中ディレクター
「まず大切なのは、自分で勝手に判断して薬をやめることはしないでください。
必要な薬をやめて病気を悪化させる可能性があって、危険です。
その上で、『かかりつけ医』がいる場合には、その医師に相談してください。
『お薬手帳』を持って行き、他の医療機関で処方されている薬と合わせて判断してもらうことが大切です。
かかりつけ医がいなかったり、相談しにくかったりする場合は、薬局の薬剤師に相談してください。」

和久田
「確かに、行きつけの薬局で相談できるといいですね。」

田中ディレクター
「薬局の薬剤師は、医師の処方に見直しを提案することができるのですが、これまではあまり多くありませんでした。
日本薬剤師会は、『医師の処方に薬剤師が意見するためには、時間をかけて連携を図り、信頼関係を築く必要がある』としています。

病気を治すための薬が、健康を害する原因になっては本末転倒です。
医師、薬剤師とともに、患者自身やその家族も多剤服用の問題に意識を持つ必要があると思います。」

Page Top