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2019年1月31日(木)

中国の急速な技術開発支える“海亀”

去年(2018年)12月、中国が打ち上げた無人探査機。
世界初となる月の裏側への着陸を目指す挑戦は、世界中の注目を集めました。
経済が減速する中でも、人工知能=AIやビッグデータなど、次世代の技術開発競争では依然、急成長を遂げている中国。
その原動力となっているのが、海外で最先端の知識や技術を身につけた「海亀(ウミガメ)」と呼ばれる若者たちです。

高瀬
「『海亀』って、ちょっと変わった呼び名ですけれども、どんな人たちなんでしょうか。」

和久田
「中国の急成長を支える『海亀』の実態を取材しました。」

エリート人材“海亀” 「目標は世界一」

中国・深圳(しんせん)の街を走る、この車。
「海亀」が立ち上げたベンチャー企業が開発した、自動運転車の試作機です。
搭載されたセンサーからの情報をAIが分析し、車を制御しています。

「150メートル先の信号まで識別できます。」

人に代わってブレーキやハンドル操作を行う最高水準の技術「レベル4」を実現しています。
創業からわずか1年で最高レベルの技術まで到達し、アメリカのグーグルやテスラをしのぐ勢いで世界を驚かせました。

創業者の一人、AIの開発を行う、衡量(こう・りょう)さん、35歳。
衡さんも「海亀」と呼ばれる若きエリート人材の一人です。
中国からアメリカなどの海外へと渡り、そこで得た知識や技術を母国へ持ち帰る「海亀」。
彼らの存在が、ハイテク分野での中国の成長を支えていると言われています。
アメリカへ渡ってコンピューターサイエンスを研究した衝さん。
グーグルやテスラなど巨大IT企業を渡り歩き、自動運転技術のプロジェクトに携わってきました。

ロードスター・ai 衡量CEO
「来年には世界トップレベルの企業と肩を並べたい。
目標は世界一です。」

衝さんとともに開発の中核を担っているのも、20代から30代の「海亀」たちです。

元アップル技術者
「いまここで開発しているのは、前の会社でいうと1〜2年前のレベルです。
レーザーや画像を扱う技術は、今の会社でも応用できています。」

そうした「海亀」たちの英知を結集したことで、衡さんたちは独自の技術を生み出すことができたといいます。

ロードスター・ai 衡量CEO
「私たちが開発しているのは、すべて新しい技術です。
前に所属していた会社の技術を直接使うことはできません。
そこで得た経験は生かしていますけどね。」

5年で200万人超 “海亀”を国も後押し

今、中国では、こうした「海亀」たちを国をあげて後押ししています。
背景にあるのは、国家戦略として掲げる「中国製造2025」。
近い将来、ハイテク分野で世界のトップクラスになることを目指しているのです。
起業する際の資金を補助するなど、国が手厚く支援した成果もあって、「海亀」の数はこの5年で200万人を超えています。

“海亀”の囲い込みも活発化

ハイテク企業が集中する、アメリカのシリコンバレー。
ここでは今、「海亀」候補となる中国のエリート人材を囲い込もうという動きが活発になっています。

この中国系のヘッドハンティング会社は、アメリカの企業や大学に在籍する中国人の若者を「海亀」として本国へ送り返すビジネスを手がけています。

担当者
「あなたの職歴を教えてください。」

「私はサンフランシスコの優良企業で9か月ほど働いています。」

担当者
「あなたは本当にすばらしい。
キャリアも仕事に対する姿勢もほぼ完ぺきです。
私たちはあなたのような人を探していました。」

現在、リストに登録しているのは4万5,000人以上。
その中から選りすぐりの人材を中国の企業へ送り込んでいます。
競争が過熱する中、彼らをつなぎとめるために積極的なアプローチが欠かせないといいます。
「海亀」候補の若者一人一人に担当者をあてがい、頻繁に電話や面談を重ねています。

担当者
「あなたにふさわしい仕事が見つかるまで、私がお手伝いします。
もしよろしければ、私と連絡先を交換しませんか?」

「ぜひお願いします。」

担当者
「私の個人の連絡先です。」

ヘッドハンティング会社 ゲーリー謝社長
「優秀な人材は国が成長する原動力です。
彼らがいなければ、新しい技術もビジネスも生まれません。
だからこそ“海亀”への需要が高まっていて、私たちのような会社が人材を供給しているのです。」

“海亀” アメリカ政府は危機感

和久田
「今や、シリコンバレーで働く人のおよそ2割は中国人と言われます。
『海亀』として本国に帰ってしまうことは、人材の損失だけでなく技術の流出にもつながりかねないと、アメリカ政府も危機感を強めています。」

高瀬
「米中の貿易摩擦などの影響で中国経済が減速しつつあると言われていますけれども、こんなふうに徹底して優秀な人材を確保しようという中国の本気度、それから人材の数、それに大変驚かされますが、アメリカ側としてはジレンマもあるんだろうと思います。
日本としては、やはりこの数ですとか国の強力な後押しに正面から太刀打ちするのではなくて、したたかな戦略が必要なのかなという気がしました。」

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