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2019年1月27日(日)

濃厚!“幻のカキ” ~三重・紀北町~

小郷
「おいしそうなカキですね~。」

保里
「『旬体感』、今回訪ねたのは、三重県南部の紀北町です。
ここでは、他の地域にない『幻』とも言われるカキが作られているんです!」

“幻のカキ” おいしさの秘密は

保里
「ありました。
いかだが一面にたくさんありますね、奥にも続いていますね。」

カキが養殖されているのは、実は小さな湖なんです。
太平洋に面した紀北町。
周囲を山々に囲まれ、付近には2つの川が流れています。
“幻”とも言われるカキは、この独特な地形を利用して作られているんです。

カキ養殖を営む、畦地宏哉さんです。
20年前、代々続く家業を継ぎました。
この土地でしか育たないというカキ。
早速、生でいただきました。

保里
「ぎゅ~っと甘みが詰まっていますね。
磯臭さみたいなのが全くなくて、カキの味が濃くて凝縮されていますね。」

このおいしさの秘密は何なのか。
鍵は、カキを育む水にあります。
こちらは、夏に撮影された映像なのですが…。

小郷
「なんだか、水がゆらゆらしてますね。」

実はこれ、淡水、川の水と海の水との境目なんです。
この湖には、海と川の両方から水が流れ込んでいるんです。
比重の違いから、淡水が海水の上に乗っているんですが、大雨が降って、川から水が一気に流れ込むと、カキが淡水に浸かります。

実はこの瞬間こそ、おいしさの秘密。
ふだん海水で生きているカキは、淡水に浸かると異変を感じ、グッと殻を閉ざします。
このとき、うまみのもととなる「グリコーゲン」を、その身にたっぷり蓄えるんです。

保里
「通常のぬくぬく育っているカキと違って…。」

畦地宏哉さん
「いじめられています、かわいそうなカキなんです。
息ができる状態になるまで(殻を)グッと閉じて、耐えて耐えてというカキです。」

しかし、ひと筋縄ではいきません。

畦地宏哉さん
「死んでいるのが分かるかな?」

中身が空っぽになってしまったカキ。
川の水に長く浸かりすぎてしまうと、カキは死んでしまうのです。

うまみを蓄えつつも、死なせてしまわないように、つるす深さを調整しなければならないんです。

新井
「カキが死なないように気をつけながら、一方で、うまみを引き出すために淡水を利用すると。
微妙なさじ加減が求められるんですね。」

畦地さんが管理するロープの数は3,400本。
川から流れ込む水量を気にしながら、1本1本手作業で上げ下げしているんです。

畦地宏哉さん
「年によって出来が全然違うので、例年よりも身の入りがいい、生存率がいいときは、よっしゃ自然に勝った!みたいな。
面白い、飽きないです。」

畦地さんが生産するのは、年間およそ1、2トン。
その大半は、事前に注文を得た個人客に直接販売しています。
市場などでなかなか出回らないことから“幻のカキ”と呼ばれているんです。
この時期に発送が集中するため、夫婦2人で、日に1万個近くの殻むき作業に追われます。
そんな中、ささやかな楽しみが…みそ汁です。
小ぶりで出荷できないカキを、ふんだんに使います。

保里
「いい香りですね。」

畦地宏哉さん
「おいしい。
いつもありがとう。」

受け継がれる味

実は、この地域とカキとの関わりには古い歴史があるんです。
江戸時代の古文書にも、そのことが記されていました。

海山郷土資料館 家崎彰さん
「“カキを瀧原神宮(伊勢神宮 別宮)に奉納する。そのあと一般の人がそれを食べる。それが昔からの習いです”と書いてある。」

まさに、地域でしかとれない“宝”として、人々は慈しむようにカキを育ててきたのです。
今、地元でしか味わえないカキの味を守り、伝えようという動きも高まっています。

畦地さんと長年取り引きしている、寿司店の大将・浅尾智治さんです。
とれたてのカキを使って何ができるんでしょうか…。
しょうゆベースの特製のタレで煮込みます。

なんとこれ、丸ごとカキを使った、「にぎり」なんです!
さらに、わさびではなく、からしをつけるのが地元流。
昔からお祝い事の席には欠かせない一品です。

保里
「ぷるぷる、こりこり、カキの食感も残りながら、甘辛く煮てあって、おいしいです。」

さらに、カキのうまみをより引き出す、新たなメニューも生み出しました。

こちら、カキのひつまぶし。
エキスがしみ出し、口の中でじゅわ~っと広がるんです。
畦地さんは、こうした浅尾さんの工夫が励みになっているといいます。

畦地宏哉さん
「伝統は伝統で文化は続けていきたい。
頑張って作ります。」

浅尾智治さん
「頑張ってもらわないとね。
生産者がいないと(料理を)作っていくことができないからね。」

保里
「2人のどちらが欠けても…。」

畦地宏哉さん
「できないですね。」

独特の地形を生かし、長年人々に受け継がれてきた「幻のカキ」。
かけがえのない味を守ろうという心意気を感じた旅でした。



新井
「私、カキ大好きなんですよ。
食べてみたい!」

保里
「この『幻のカキ』、今は全部で9軒の養殖業者しか生産していないので、本当に貴重で、なかなか手に入らないんです。」

小郷
「だからこその『幻』なんですよね。」

保里
「畦地さんは、長年受け継がれてきたこの養殖技術を守って、ぜひ次の世代にも伝えていきたいと話していました。」

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