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2019年1月22日(火)

「ガンダム」キャラクター“生みの親” 安彦良和さんが語る

テレビ放送が始まって、今年(2019年)で40年になる「機動戦士ガンダム」。
「地球連邦」と、そこから独立をはかる「ジオン公国」との戦争を描いた物語です。
地球連邦軍のガンダムを操る主人公、アムロ・レイ。
そして、個性豊かなキャラクターが次々と登場し、世代を超えて愛され続けてきました。

この作品でキャラクターデザインなどを務めた、生みの親のひとり、安彦良和(やすひこ・よしかず)さんです。

安彦良和さん
「ちょっと信じられない、40年。
非常に愛着がある。
他の人より愛着が強いのでは。」



高瀬
「こちらには『ガンダム』のプラモデルを一部並べています。
この光景、ずっと見ていたい気持ちになりますね~。
このプラモデル、私たちの世代も子どもの頃に熱中しましたが、真ん中にあるこちら。
『ファーストガンダム』といわれていて、すべてのはじまりでもあったわけなんです。」

和久田
「通の方だと、このフォルムやデザインについて言葉を尽くして表現されると思うんですが…スッキリとした感じでしょうか。」

高瀬
「私、プラモデル作るのが下手で、今も作りかけの『ゼータガンダム』が家に眠っていたりするんです…。
このガンダムですが、40周年を前に、生みの親のひとり、安彦良和さんが手がけたのが、アニメ『機動戦士ガンダム THE ORIGIN(ジ・オリジン)』です。
描いたのは『ファーストガンダム』に至るまでのキャラクターたちの過去。
いわば、ガンダムの原点となる物語です。」

和久田
「ガンダムの魅力、そして原点を描く思いを、安彦さんに聞きました。」

「人間関係のドラマをつくる」

リポート:岩田宗太郎(科学文化部)

40年間、愛され続けている「ファーストガンダム」。
そのキャラクターを作り上げるときに安彦さんが大切にしてきたのは、「人間関係の深み」を描き込むことでした。
安彦さんが最も気に入っているというエピソード。
アムロが、離ればなれだった母親と再会するシーンです。
ジオンの兵士に引き金をひいたアムロに、母は…。


“あの人たちだって子どももあるだろうに、それを鉄砲を向けて撃つだなんて。
すさんだねえ…。”

アムロ
“じゃあ母さんは、僕がやられてもいいっていうのかい。
戦争なんだよ。”

安彦良和さん
「(アムロは)お母さんが好きだし、お母さんも息子をすごく愛しているが、気持ちが通じない。
分かり合えない、分かり合おうとしているが。
“ファーストガンダム”全体のテーマ。
人間の関係が大事、関係のドラマを作る。」

“原点”を描いた理由は…

「ファーストガンダム」に関わったあと、安彦さんは徐々に活動の場をアニメから漫画の世界に移しました。
大きなテーマとしたのが、近現代の歴史です。
旧満州を舞台にした「虹色のトロツキー」。
さまざまな民族の青年たちが異なる立場で歩み、翻弄されていく姿を描きました。

今は、大正時代のシベリア出兵をテーマにした新作も執筆中。
安彦さんは、歴史を見つめ直すことで、人間は善悪ではかれない奥深さを持つことに改めて気づいたといいます。

安彦良和さん
「善悪、二元論的に歴史の出来事を解釈してしまうことが、非常に危険だと。
歴史とは、何千年も積もり積もった、人の営みの分厚い層みたいなもの。」

漫画の世界で、登場人物の複雑な内面を掘り下げてきた安彦さん。
再びアニメの現場に戻り、40年前の「ファーストガンダム」では描かれなかったキャラクターたちの過去に焦点を当てた作品を作りました。
それが、「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」です。
特に描きたかったというのが、赤いモビルスーツでアムロの前に立ちはだかることになる、ジオンのエースパイロット、シャア・アズナブルです。

「ファーストガンダム」では素顔を見せず、ミステリアスなキャラクター。
地球連邦軍と戦いながらも、ジオンの実権を握る一族・ザビ家を裏切っていきます。
安彦さんが「オリジン」で描いたのは、そこに至るシャアの生い立ちでした。
英雄だった父親を失い、母親とも引き離され育つことになったシャア。
ザビ家への復しゅうの気持ちを秘かに抱えながら軍に入り、やがて「赤い彗星(すいせい)」と呼ばれるエースパイロットへと成長していったのです。

安彦良和さん
「(シャアの)人格形成は、やはり描かなきゃダメだろうと。
非常に大きなコンプレックスを背負った人間じゃないかという。
あるいは心の傷みたいなのを背負っているから、それに対する解釈の手がかりみたいなものは、つくり手としてちゃんと描かなければいけない。」

「オリジン」でガンダムの原点を描き出した安彦さん。
次に取り組みたいと考えているのは、40年前の「ファーストガンダム」を最新の技術で作り直し、より魅力ある作品として伝えていくことです。

安彦良和さん
「(描き直さず)残っているのは、本来の“ファースト”の本編。
この部分も今のテクニックと表現力でカバーしたいというのが望み。
僕の責任だと思っているので。
今の技術と手間暇のかけ方でやれば、絶対に昔よりいいものができる。
それをやりたい。」



和久田
「さらに深遠なストーリーが読み解けるということですね。」

高瀬
「安彦さんがおっしゃっていた『分かり合えない、分かり合おうとするんだけど』というのが、深いですね。
これからも安彦さんの作品に期待しています。」

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