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2019年1月20日(日)

変調?世界経済 “家計”に影響も…

年末から乱高下を続けた、ニューヨーク株式市場。
拡大を続けてきた世界経済に今、かげりの兆しが見え始めています。
その火種は、アメリカと中国の貿易摩擦やヨーロッパの政治不信の高まり。
政治リスクが世界経済の波乱要因となっているのです。

アメリカ大手禁輸グループ 調査部門 アナリスト
「最大の懸念は、貿易戦争を含む政治的・地理的なリスク。
この10年続いた景気拡大に、今年は変化が訪れる。」

世界経済はどこへ向かう?

新井
「今日(20日)は、世界の経済がどうなるか、そして、それが私たちの暮らしにどう関わってくるのか、国際部・経済担当の布施谷デスクとお伝えします。」

小郷
「景気はよいというニュースがあるかと思えば、株価の激しい変動がニュースになっています。
一体、世界の経済はどこに向かっているのでしょうか?」

布施谷博人デスク(国際部)
「良い話、悪い話が入り混じっているのは、景気が今まさに分かれ目のところに向かいつつあるからなんです。
こちらは、この10年間の、ニューヨーク市場のダウ平均株価の推移です。
ほぼ一貫して値上がりし、景気は拡大し、世界の経済を引っ張ってきたわけです。
そのアメリカは、今年(2019年)7月には景気の拡大が10年を超え、戦後最長の息の長い回復を達成する可能性があります。

しかしその景気の拡大も、さすがにもう天井だという弱気の見方が広がりはじめたのが、今の状況なんです。
そして、多くの専門家がリスクとして挙げるのが、こちらです。」

新井
「各国の首脳ですね。」

布施谷デスク
「不透明な政治情勢がリスクになっているというんです。
貿易摩擦や、イギリスのEU・ヨーロッパ連合からの離脱、フランスのデモなど。
どれも経済にはマイナスで、人々の暮らしにも影響が及んでいます。」

アメリカ  大手自動車メーカーがリストラ発表

先週、開幕したアメリカデトロイトでのモーターショー。

GM幹部
「みなさん、これが最新のSUVです!」

アメリカを代表する自動車メーカー、GM=ゼネラルモーターズ。
最新の決算は売り上げ・利益ともに市場の予想を大きく上回り、業績は好調です。
にもかかわらず去年(2018年)11月、リストラを発表。
北米で5つの工場を閉鎖し、1万4,000人余りを削減するという衝撃的なものでした。
電気自動車や自動運転の開発資金を確保するため、やむを得ないと説明しています。
閉鎖が決まった工場です。
業績はいいのに、なぜリストラなのか。
従業員には納得できない思いが広がっています。

閉鎖される工場の従業員
「結局、会社は金をため込むだけだった。
私の気持ちは…『裏切られた』という思いだ。」

GMの発表に、トランプ大統領は激怒。

アメリカ トランプ大統領
「今回の発表は気に入らない。
GMに多くの支援をしてきたのに。」

しかし、そのトランプ政権の政策が、あだになったという指摘もあります。
アメリカの製造業を守り、雇用を増やすことを公約に掲げたトランプ大統領。
中国から輸入される鉄鋼などに高い関税をかけました。
ところが、この関税の上乗せで、車の生産に欠かせない鉄鋼が値上がり。
自動車業界には、大きな打撃となったのです。

不安を抱えるGMの従業員の1人、ビル・ノロナさんです。
トランプ大統領が就任して2年、自動車産業の成長に期待してきましたが、思わぬ事態に頭を抱えています。

閉鎖される工場の従業員 ビル・ノロナさん
「みんな打ちのめされる思いだった。
中には怒り出す人もいた」

今回のリストラで、自宅から遠く離れた別工場への配置転換を言い渡されたノロナさん。
この先、景気が落ち込めば、追加のリストラがあるのではと心配しています。

ビル・ノロナさん
「不安はある。
また3年後くらいに『自動運転だ』と言って、突然、工場が閉鎖され、放り出されるかもしれない。」

報告:野口修司(アメリカ総局)

フランス 増税への不満が噴出

「マクロン辞めろ!」

経済の減速のリスクはヨーロッパでも。
去年11月から、マクロン政権に対する抗議活動が続くフランス。
デモのたびに一部の参加者が暴徒化。
商店の略奪なども相次ぎ、混乱の長期化で観光業などへの影響も広がっています。
一昨年(2017年)就任したマクロン大統領が掲げたのは、フランスの再生。

フランス マクロン大統領
「世界は強いフランスを必要としている。」

財政の健全化に取り組むと同時に、景気刺激策を打ち出し、経済の好循環を生み出そうとしたのです。
しかし改革には、増税などに痛みを感じる市民の不満がたまっていきました。
それがガソリンなどにかかる燃料税の引き上げで、一気に爆発したのです。

「今年もよろしく!」

毎週末、地元で、マクロン政権への抗議活動に参加している、ベロニク・シルバンさんです。
地元の公立病院で医療スタッフとして働いています。
シルバンさんは、航空機産業で働く夫と、職業訓練を受けている18歳の息子と、家族3人で暮らしています。
なぜデモに立ち上がったのか。
シルバンさんの給与明細です。
月給1,600ユーロ(約20万円)。
この10年、ほとんど上がっていません。

それにもかかわらず、マクロン政権になってからは、税金の支払いは社会保障だけで月に4,000円近く増えました。
通勤や通学に欠かせない車の燃料費は月7万円余り。
その値上がりは、暮らしを直撃するものでした。

ベロニク・シルバンさん
「燃料税の引き上げが最後の一押し。
燃料税は不公平でしかない。
政府は私たちの生活への影響を考えずに決めた。」

政府は燃料税の引き上げを撤回しましたが、シルバンさんは抗議デモに参加し続けるつもりです。

ベロニク・シルバンさん
「最低賃金の生活より、少しましな程度の暮らし。
自分の子どもたちには、こんな暮らしをしてほしくない。」

報告:小島晋(ヨーロッパ総局)

景気回復 実感できず…

新井
「アメリカとフランス、どちらも、いわば看板の政策が暮らしを直撃しているんですね。」

布施谷デスク
「どちらもやっていることは全然違うのですが、どちらも『こんなはずじゃなかった』という事態を招いてしまっているんです。
トランプ大統領はアメリカの産業を守ろうと、中国からの輸入品に高い関税をかけました。
しかし、中国製品を使う企業にはダメージになっています。
マクロン大統領は、改革を進めてフランスの経済を強くしようと財政の健全化に取り組みましたが、増税などに市民が反発し、一体誰のための改革なんだと怒っているわけです。
アメリカもフランスも経済は成長を続けてきていましたが、こういう状況だと市民はなかなか景気の回復を実感できませんよね。
不透明な政治情勢が続けば、経済にマイナスになるのも明らかです。」

日本への影響は

布施谷デスク
「さらに、こうした海外の動きは、日本も無縁ではいられません。
専門家は、影響は徐々に及んでいると指摘しています。」

BNPパリバ証券 河野龍太郎チーフエコノミスト
「昨年から世界経済の成長ペースが鈍化した結果、日本経済の輸出と生産の拡大はすでに止まっている。
景気が悪くなった印象がなかった理由は、円安で輸出企業の業績がサポートされていたから。
問題は、海外経済が悪化してくると、円高になってくるリスクがあること。
もうひとつは、世界経済の拡大が続くから設備投資をしようとしていた企業が、設備投資を先送りしてくる可能性が出てくる。
2019年後半の日本経済は、下降局面に向かう可能性が出てくる。」

小郷
「海外経済が抱えるさまざまな問題が、日本企業にも及び始めたということですね。
そうなると、日本に暮らす私たちの生活への影響が気になりますね。」

布施谷デスク
「おっしゃるとおり、日本の人たちも不安を感じ始めています。
最近、実はこんな調査が発表されました。

日銀が今月(1月)9日に公表したのですが、1年後、『景気が悪くなる』と先行きを不安に思う答えが増えているんです。
日本の景気も回復を続け、今月には戦後最長の6年2か月に及ぶ息の長い景気の回復を実現しそうなのですが、市民は今ひとつ回復を実感できず、先行きへの不安を強めているようなんです。
どうしてこういうことになっているのか、ある家庭を取材してみました。」

家計から探る 将来への不安

都内で暮らす、主婦の菅原然子(すがわら・のりこ)さんです。
夫は団体職員。
菅原さんはパートをしながら、2人の子どもを育てています。

菅原然子さん
「2012年からつけ始めた。」

今回注目したのは、菅原さんがつけている家計簿。
月々の収入や支出が詳細につけられています。
これを見ることで、意外なことがわかってきました。
夫婦の給料と各種手当を含めた総収入は毎年上がっているのに、税金などを差し引いた「手取りの収入」は、2013年以降、増えていないのです。

菅原然子さん
「景気がよくなっていると目にするけれど、いつになったらわが家にその波が来るのかなって。
実感はないのが正直なところ。」

収入は増えているのに、手取りはなぜ増えていないのか?
税金と社会保険料の負担が増えているからだといいます。
6年間の収支をまとめた表です。
収入に対する税金と社会保険料の割合を見てみると、菅原さん世帯の場合、2012年は12.6%だったのに対して、去年は25.1%。
6年間で負担割合は2倍に増加していたのです。

さらに、家計に追い打ちをかけたとみているのが、食料品の値上がりです。
食費は、2012年に比べて去年、1.57倍に増えました。

菅原さんは今後、先行きへの不安から、積極的な消費は控えたいと考えています。

菅原然子さん
「たとえ収入が上がって手取り分も増えたとしても、貯蓄に回すと思う。
教育費と老後の生活費っていうところでその不安は拭い去れない。」

専門家は、こうした傾向は菅原さん世帯に限らず、多くの家庭に共通したものだと指摘しています。

ニッセイ基礎研究所 斎藤太郎経済調査室長
「実感の伴う景気回復とは、消費がどんどん増えるのが一番分かりやすい回復のしかた。
使えるお金が増えていないん、だから消費が増えていない。
これが一番根本的な問題。」

新井
「手取りが増えないとなると、できるだけ将来に備えたいという気持ちは、よく分かりますよね。」

布施谷デスク
「景気は回復を続けてきましたが、その恩恵が企業や投資家などに比べると、働く人にはなかなか及ばないといわれています。
それが日本はもちろん、今、世界共通で起きて課題になっています。
恩恵が薄い分、経済に何か問題が起きた場合、市民はショックに耐える力がそれほど強くないということなんです。
しわ寄せは市民の暮らしに、より大きく及ぶことになるわけです。」

今後の行方は

小郷
「今後の経済では、どんなことに気をつけなければならないでしょうか?」

布施谷デスク
「こちらをご覧ください。
この先、いくつものハードルがあります。
まず注意しなければならないのは、3月です。

3月1日に米中の貿易協議の期限があります。
米中が歩み寄ることができなければ、摩擦はさらに激しくなる可能性があります。
さらに、3月29日にはイギリスのEU離脱の日を迎えますが、状況は不透明です。
何も決まらないままだと、貿易やビジネスに大混乱をもたらすおそれもあります。
こうした海外の問題がどうなるか気がかりなところで、日本では10月に消費税の増税を迎えます。
景気の減速に耐える力は、日本も決して十分ではないと思います。
だからこそ海外経済の変調には、気をつけていく必要があると思います。」

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