これまでの放送

2019年1月19日(土)

“生きづらさ”を描いた劇

英語版の動画はこちら
Click to view video in English


小郷
「ちょっとユニークな劇についてです。
病気や障害などがあるために、社会の中で“生きづらさ”を感じている人たちを描いています。
演じるのは、本人たち。
自分の言葉で直接、観客に語りかけます。」

新井
「昨日(18日)から始まったこの舞台。
一体どんなメッセージが込められているのでしょうか。」

社会で感じる“生きづらさ” 本人が語る舞台

“何でそんなに小さいの?”

“うわあ、小せえ!”

“ちーび!”

“うっせーんだよ!てめーら!”

聴覚に障害のある人。
首から下を思うように動かせない人。
そして、自分の性別に違和感がある人。
公募で選ばれた6人が、それぞれの経験や思いを打ち明ける劇、「生きづらさを抱える人たちの物語」です。

“私の未来は、不安との戦いです。
それでも私はダンスを教えています。”

(記憶障害や空間の認識が難しいなど)HARMYさん
「障害のある人たちが舞台に出られるチャンスは日本にはないものだと思うので、本当にいろいろな人に見てきてほしい。」

(低身長)西村大樹さん
「これが僕たち6人の生き方なんだって、いちばん伝わればいい。」

脚本・演出を手がけるのは、ニューヨークを拠点とする演出家、ピン・チョンさんです。
人種や宗教、障害など、マイノリティーの人たちの“声”を舞台化し、世界各地で上演してきました。

今回、ピンさんが着目したのは、日本社会にある、障害を「恥」として隠そうとする意識でした。

演出家 ピン・チョンさん
「私は人々が勇気をもって自分の物語を語れる場を作りたいのです。
この社会で、彼らは必ずしもそのような場を与えられていないからです。」

出演者の1人、視覚に障害がある成田由利子(なりた・ゆりこ)さん。
舞台に立つのは、初めてです。
20代のころから、右目の視力が低下。
もう片方の目を頼りに仕事を続け、2人の子どもも育てました。
しかし2年前からは、見えていた左目も悪化し、今ではほとんど物を判別できません。

(視覚障害)成田由利子さん
「自分としては、生きていける自信がない。
自分はどうなるのか予想がつかない。
本当にすべてが真っ暗な感じでした。」

それでも、できる限り周りと変わらない暮らしを送ろうとしてきた由利子さん。
ところがある日、障害者に対する世間の冷たさを痛感する出来事に遭遇します。
初対面の人から、心ない言葉をかけられたのです。

成田由利子さん
「『(見えなくて)お風呂ちゃんと入ってるんですか?』『トイレは行ってるんですか?』『食事はどうしてるんですか?』。
(何もできないと)誤解されてるんだなって、すごく思った。
悲しくて悲しくて、なぜ私がこんなこと言われなくちゃいけないの?」

そんな中で知った今回の舞台。
自分の気持ちを伝えるまたとないチャンスだと思いました。
台本を読めないため、すべて耳で聞いて暗記。
長いセリフは、紙に書いて覚えました。
文字は見えませんが、書く感覚で文章を頭に刷り込みました。

成田由利子さん
「全部覚えられたのはうれしかった。」

そして、観客に伝わるよう、ひと言ひと言に感情を込めます。

“もし、二度と子どもたちの顔を見ることができなくなったら。
もし、何も見ることができなくなったら、私はどうすればいいのでしょう。”

本番の日。
由利子さんが伝えたかったメッセージです。

“私はあまり『障害』という言葉が好きではありません。
できないことや人間の弱さを思い起こさせるからです。
そこには、力強さを感じることができません。
『障害』という言葉には、可能性よりも、乗り越えられない壁のような響きを感じてしまいます。”

“私はお伝えしたいのです。
障害を隠すことはありません。
障害があっても、できるだけ前向きに、人生を精いっぱい生きることはできるのではないでしょうか。”

最後は全員で訴えます。

“みずからの生きづらさについて。”

“自分自身の物語を、人前で語ることさえできない人たちがいます。”

“たくさん、たくさん、います。”

“障害がある方もない方も、お互いがお互いに思いをはせてほしいのです。”

観客
「感動というか、明るく生きている、大変な思いがありながら。
考えさせられますね。」

観客
「強がっていなければ生きられないような社会だと思うので、もっと弱いところを見せられるような、それを受け止めるような社会だったら、もうちょっとみんながハッピーなんじゃないか。」

成田由利子さん
「すごい才能を持っている人がいっぱいいる。
一般の方はそれを知らないから、そういうふうに(障害者は何もできないと)思ってしまっている。
私たちだってこんなことできるんだよ、こういうふうに生きているんだよ、みんなすごいんだよって知らせてあげたい。」

新井
「偏見や誤解は、私たちが“知らない”ことで、意図せず起こることもあると思うんです。
こうした場を通して、みんなが考えるきっかけになればいいですよね。」

小郷
「舞台は、今日(19日)と明日(20日)、東京で上演され、来週には大阪でも公演が行われるということです。」

Page Top