これまでの放送

2019年1月15日(火)

ペットと高齢者 一緒に暮らし続けるために

高瀬
「ペットと暮らす高齢者が直面する問題についてです。」

和久田
「自身の体が思うように動かなくなると、ペットの世話をするのが難しくなります。
その結果、保健所に送るなど、不本意なかたちで手放さざるを得なくなることもあり、高齢者は心身に大きなダメージを受けてしまいます。」

高瀬
「そこで、高齢者が少しでも長くペットと一緒にいられるようにと、今、さまざまな取り組みが始まっています。」

ペットの往診 増え続ける高齢者からの依頼

リポート:田中志穂

白井(しらい)エツさん、87歳です。
チワワのタロウと10年以上一緒に暮らしています。

白井エツさん
「大事な大事な、タロウが子どもみたいなもん。」

タロウのケアのため、病院に連れていきたくても、白井さんは去年(2018年)、自宅で骨折してから、外出が難かしくなってしまいました。
そこで、今では時々、獣医師に来てもらっています。

獣医師 天野謙一郎さん
「若干(目が)白くなっていますけど、視力に関しては問題ない。」

都内で動物の往診を行う、天野謙一郎さんです。
高齢者からの依頼は、年々増えているといいます。

獣医師 天野謙一郎さん
「ご自身がペットを連れて動物病院に行くのが大変な方とか、車を手放してしまって、運ぶことができなくなってしまった方とかが多い。」

ペットと暮らせる 特別養護老人ホーム

近年、病気などでペットの世話が難しくなったという高齢者が増えています。
昨年度、東京都の保健所に持ち込まれたペットのうち、およそ7割が、飼い主の健康問題が理由でした。

そんな高齢者を救おうと作られた施設があります。
全国で初めての、ペットとともに暮らせる特別養護老人ホームです。
100室のうち40室で、犬や猫と一緒に暮らすことができます。

「名前は何ですか?」

「佑介です。」

(ニャ)

「返事するんです。」

この施設を作った、介護福祉士の若山三千彦さんです。
施設を作ったきっかけは、かつて介護を担当していた、ある高齢者の存在でした。
それは、80代だった男性。
長年、ペットの犬と暮らしていましたが、1人で生活することが困難になり、老人ホームへの入居が決まりました。
男性は身寄りがなく、犬のもらい手が見つからなかったため、苦渋の決断で犬を保健所へ送ったといいます。

施設長 若山三千彦さん
「“自分の家族を自分で殺した”と号泣していた。
老人ホームに入ったあとも、“ずっと毎日泣いていた”と聞いている。
結局半年もたたないうちに、生きる気力を失って亡くなってしまった。
ワンちゃん、ネコちゃんと別れないで暮らすことができる社会を作りたい。」

一緒に暮らし続けることの大切さ

高齢者とペットを支える取り組みは、さまざまなかたちで広がってきています。

亀本雄一さん
「父親と、犬の小力(こりき)。」

去年8月に亡くなった、亀本正幸さん。
フレンチブルドッグの小力とともに暮らしていましたが、ここ数年は病気が進み、自分の身の回りのことも、小力の世話もできなくなってしまいました。
息子の雄一さんは、日中働いているため、父親の介護ができません。
デイサービスをすすめましたが、行くのをためらっていたといいます。

亀本雄一さん
「“(小力を家に)ひとりで置いておくのがかわいそう”。
誰もいなくなるのか、ここに誰もいなくなるのか”、そればかり気にしていた。」

そんな中、たどり着いたのが、ペットと一緒に通えるというデイサービスでした。
亀本さんが通った、東京・大田区にあるデイサービスです。
通常のサービスに加え、看護師の付き添いの元でペットの散歩ができるほか、有料でペットの入浴やトリミングまで行ってくれます。

利用者
「コロンちゃん、べっぴんさんに撮ってもらいましょうね。」

家ではなかなか笑うことのなかったという正幸さん。
しかし、デイサービスから送られてきた写真には、優しい笑顔が写っていました。
諦めていた、小力との散歩もすることができました。

亀本雄一さん
「この笑顔、家でこういう顔はしない。
帰って来て“また明日、何時だ”というぐらい、すごく楽しみにしていた。」

デイサービスに通って1か月。
正幸さんは、小力の側で息を引き取りました。
その後、小力は孫に引き取られていきました。

亀本雄一さん
「充実した1か月、すごい濃い1か月だった。
(デイサービスに)一緒に行けたのはよかった。
おやじにとっても、犬にしても。」

高齢者にとって、大事な心のよりどころとなっているペットの存在。
一緒に暮らし続けることの大切さが、今、改めて見直され始めています。



高瀬
「ペットと一緒にいるときの高齢者の皆さんの、やさしい表情が印象的でした。
取材した老人ホームでは、飼い主にもしものことがあっても、ペットは飼い続けてくれるということです。
こうした施設には、福祉関係の見学者が多く訪れ、今後、増えていく見通しです。」

和久田
「選択肢が広がっていくといいですよね。
こうした動きに加え、健康問題などでペットが飼えなくなってしまった場合、相談できるボランティア団体なども全国各地にできています。
地域によっては、自治体に問い合わせると、そうした団体を紹介してくれるということです。」

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