これまでの放送

2019年1月13日(日)

“情報不足”で救えなかった命 教訓生かす試み

小郷
「阪神・淡路大震災から、まもなく24年。
当時、現場で救助に当たった消防は、情報が限られた中での活動を余儀なくされ、必ずしも効率的な救助を行うことができませんでした。」



新井
「救える命をどう確実に救うのか。
当時の教訓を生かそうという試みが始まっています。」

あの日 消防の動きは

24年前のあの日。
震度7の揺れに襲われた神戸市では、12万棟が全半壊。
多くの人ががれきの下敷きになりました。

「消防に連絡が取れないため、付近の住民が生き埋めになった方たちを助けようとしています。」

助けを求めても、消防による救助が来ないという事態が相次ぎました。
当時、何が起こっていたのか。

震災直後、電話はつながりにくい状況が続き、119番通報もほとんど機能していませんでした。
住民たちは、消防署に直接、救助要請に駆け込んでいたのです。
神戸市で最大の被害が出た東灘区。
震災当日の消防の動きです。

黄色い点が救助を行った場所。
救助要請があった場所にはかけつけましたが、消防に情報が届かなかった場所には救助が及びませんでした。

その結果、被害が甚大だった赤い部分では、救助の空白地帯が生まれていたのです。

がれきの中から声が…

当時、東灘消防署で指揮をとっていた菅原隆喜(すがはら・りゅうき)さんです。
被害状況の把握がままならない中、消防隊員の数も限られ、救助は思うように進まなかったといいます。

東灘消防署 救急隊係長(当時) 菅原隆喜さん
「通報のない場所でも、相当の倒壊家屋はあった。
そこには、生き埋めになった方々もたくさんいたけれども、通報できなかったエリアがたくさんあると思う。」

被害の大きかった地区で救助を待つ人たちがいました。
震災当日、消防による救助が1件もなかったとされる深江北町です。

母親を亡くした山中美樹(やまなか・みき)さん。
母親の鐵子さんは当時、マンションの1階で一人暮らしをしていました。

山中さんが撮影した映像です。
駆けつけたとき、マンションの1階は完全に潰れていました。

山中美樹さん
「名前を呼んだ。
そうしたら『はい』とひと言、声がした。
でも、コンクリートがすごいんで、どうしようもない。」

一刻も早く助け出したいと、消防隊員を探そうとしましたが、地区に隊員の姿はなく、地震発生から3日目、鐵子さんは自衛隊によって遺体で発見されました。

山中美樹さん
「消防とか自衛隊が来たのは、3日目が初めて。」

「なぜ、もう少し早く来てくれなかったかという思いは?」

山中美樹さん
「あります。
それを言ってもしかたない。」

東灘消防署 救急隊係長(当時) 菅原隆喜さん
「がれきの中で、助けを待ちながら亡くなっていった方は、多かったんじゃないか。
あのときにたくさんの命が、助かる命が助けられなかった。
本当につらかった。」

SNS上の救助要請 どう取り扱うか

救助に必要な情報をどう集めるのか。
今、注目されているのがSNSです。

去年(2018年)7月の西日本豪雨。
救助要請が次々とSNSで発信されました。
地元の消防局には、SNS上の救助要請が市の職員によって持ち込まれ、その数は100件を超えました。
しかし、救助に活用することはできなかったといいます。

倉敷市消防局 警防課主幹 山﨑敏隆さん
「どの情報が正しい情報なのか、精査するのに緊急時であればあるほど、困難さを感じる。
ただ実際に、こういった(SNSによる)通報があるのも事実なので、どう取り扱っていくか考えていかないといけない。」

SNSの活用 被害状況の把握や安否確認も

震災から24年がたった今、神戸市では、かつての教訓をふまえた取り組みが始まっています。

SNSの一つ、LINEを使って被害の把握をしようというのです。
先月(12月)、実証実験が行われたこのシステムでは、災害が起こると、LINEで市民に被災状況を尋ねるメッセージが自動的に送られます。

市民は自分がいる場所の被害状況について、メッセージや画像を送ります。

被害状況は市民の現在位置の情報とともに送られ、瞬時に地区ごとの情報として地図に表示されます。
情報が曖昧な時や足りない場合は人工知能=AIがさらに細かく被害状況を尋ねます。
たとえば「建物の倒壊が激しい」という情報があれば、そこでのけが人の数を尋ね、情報を収集していくのです。

こうして整理した情報を元に被害の大きな地区を割り出し、限られた消防力を優先的に割り振ることを目指しています。

阪神・淡路大震災で東灘区の救助を指揮した菅原さんです。
現在、神戸市の消防局長となった菅原さんは、情報不足で命を救えなかった苦い経験を、繰り返したくないと考えています。

神戸市 消防局長 菅原隆喜さん
「災害の時の判断、決断はいかに正確に、早くやるか。
いかに多くの情報を集めて、正確で早い判断をするか。
(限られた)時間内にどれだけの活動ができるかだと思う。
情報は本当に大事。」

小郷
「24年前の公衆電話に並ぶ様子を見ますと、震災からの歳月を感じますけど、いまはSNSといった情報技術が格段に進歩しているだけに、それを生かす仕組みを作っていくことが必要になってきますよね。」

新井
「SNSについては、行政と住民の間だけでなく、地域のコミュニティでも、安否確認に生かそうという取り組みも始まっているんです。」

神戸市では、これまで自治会が声かけなどで行ってきた安否の確認を、フェイスブックを使って迅速に行えないかと、地域で議論を始めています。

「押すだけで、全員に無事だとわかる。」

こうした情報を、救助が必要なとき、地域で助け合うなどの動きにつなげようとしています。

小郷
「災害時に正確な情報をいかに早く集め、救助につなげるかを実感した地域だからこそ、その教訓を生かして、命を救おうという取り組みが進んでいるんですね。」

Page Top