
小郷
「阪神・淡路大震災から、まもなく24年。
当時、現場で救助に当たった消防は、情報が限られた中での活動を余儀なくされ、必ずしも効率的な救助を行うことができませんでした。」
新井
「救える命をどう確実に救うのか。
当時の教訓を生かそうという試みが始まっています。」
小郷
「阪神・淡路大震災から、まもなく24年。
当時、現場で救助に当たった消防は、情報が限られた中での活動を余儀なくされ、必ずしも効率的な救助を行うことができませんでした。」
新井
「救える命をどう確実に救うのか。
当時の教訓を生かそうという試みが始まっています。」
24年前のあの日。
震度7の揺れに襲われた神戸市では、12万棟が全半壊。
多くの人ががれきの下敷きになりました。
「消防に連絡が取れないため、付近の住民が生き埋めになった方たちを助けようとしています。」
助けを求めても、消防による救助が来ないという事態が相次ぎました。
当時、何が起こっていたのか。
震災直後、電話はつながりにくい状況が続き、119番通報もほとんど機能していませんでした。
住民たちは、消防署に直接、救助要請に駆け込んでいたのです。
神戸市で最大の被害が出た東灘区。
震災当日の消防の動きです。
黄色い点が救助を行った場所。
救助要請があった場所にはかけつけましたが、消防に情報が届かなかった場所には救助が及びませんでした。
その結果、被害が甚大だった赤い部分では、救助の空白地帯が生まれていたのです。
当時、東灘消防署で指揮をとっていた菅原隆喜(すがはら・りゅうき)さんです。
被害状況の把握がままならない中、消防隊員の数も限られ、救助は思うように進まなかったといいます。
東灘消防署 救急隊係長(当時) 菅原隆喜さん
「通報のない場所でも、相当の倒壊家屋はあった。
そこには、生き埋めになった方々もたくさんいたけれども、通報できなかったエリアがたくさんあると思う。」
被害の大きかった地区で救助を待つ人たちがいました。
震災当日、消防による救助が1件もなかったとされる深江北町です。
母親を亡くした山中美樹(やまなか・みき)さん。
母親の鐵子さんは当時、マンションの1階で一人暮らしをしていました。
山中さんが撮影した映像です。
駆けつけたとき、マンションの1階は完全に潰れていました。
山中美樹さん
「名前を呼んだ。
そうしたら『はい』とひと言、声がした。
でも、コンクリートがすごいんで、どうしようもない。」
一刻も早く助け出したいと、消防隊員を探そうとしましたが、地区に隊員の姿はなく、地震発生から3日目、鐵子さんは自衛隊によって遺体で発見されました。
山中美樹さん
「消防とか自衛隊が来たのは、3日目が初めて。」
「なぜ、もう少し早く来てくれなかったかという思いは?」
山中美樹さん
「あります。
それを言ってもしかたない。」
東灘消防署 救急隊係長(当時) 菅原隆喜さん
「がれきの中で、助けを待ちながら亡くなっていった方は、多かったんじゃないか。
あのときにたくさんの命が、助かる命が助けられなかった。
本当につらかった。」
救助に必要な情報をどう集めるのか。
今、注目されているのがSNSです。
去年(2018年)7月の西日本豪雨。
救助要請が次々とSNSで発信されました。
地元の消防局には、SNS上の救助要請が市の職員によって持ち込まれ、その数は100件を超えました。
しかし、救助に活用することはできなかったといいます。
倉敷市消防局 警防課主幹 山﨑敏隆さん
「どの情報が正しい情報なのか、精査するのに緊急時であればあるほど、困難さを感じる。
ただ実際に、こういった(SNSによる)通報があるのも事実なので、どう取り扱っていくか考えていかないといけない。」
震災から24年がたった今、神戸市では、かつての教訓をふまえた取り組みが始まっています。
SNSの一つ、LINEを使って被害の把握をしようというのです。
先月(12月)、実証実験が行われたこのシステムでは、災害が起こると、LINEで市民に被災状況を尋ねるメッセージが自動的に送られます。
市民は自分がいる場所の被害状況について、メッセージや画像を送ります。
被害状況は市民の現在位置の情報とともに送られ、瞬時に地区ごとの情報として地図に表示されます。
情報が曖昧な時や足りない場合は人工知能=AIがさらに細かく被害状況を尋ねます。
たとえば「建物の倒壊が激しい」という情報があれば、そこでのけが人の数を尋ね、情報を収集していくのです。
こうして整理した情報を元に被害の大きな地区を割り出し、限られた消防力を優先的に割り振ることを目指しています。
阪神・淡路大震災で東灘区の救助を指揮した菅原さんです。
現在、神戸市の消防局長となった菅原さんは、情報不足で命を救えなかった苦い経験を、繰り返したくないと考えています。
神戸市 消防局長 菅原隆喜さん
「災害の時の判断、決断はいかに正確に、早くやるか。
いかに多くの情報を集めて、正確で早い判断をするか。
(限られた)時間内にどれだけの活動ができるかだと思う。
情報は本当に大事。」
小郷
「24年前の公衆電話に並ぶ様子を見ますと、震災からの歳月を感じますけど、いまはSNSといった情報技術が格段に進歩しているだけに、それを生かす仕組みを作っていくことが必要になってきますよね。」
新井
「SNSについては、行政と住民の間だけでなく、地域のコミュニティでも、安否確認に生かそうという取り組みも始まっているんです。」
神戸市では、これまで自治会が声かけなどで行ってきた安否の確認を、フェイスブックを使って迅速に行えないかと、地域で議論を始めています。
「押すだけで、全員に無事だとわかる。」
こうした情報を、救助が必要なとき、地域で助け合うなどの動きにつなげようとしています。
小郷
「災害時に正確な情報をいかに早く集め、救助につなげるかを実感した地域だからこそ、その教訓を生かして、命を救おうという取り組みが進んでいるんですね。」