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2018年12月27日(木)

西日本豪雨から5か月 「あきらめない」農家たちの奮闘

和久田
「こちら、いま旬を迎えているみかん。
そして、おいしそうなみかんジュースです。
西日本豪雨で大きな被害を受けた愛媛県宇和島市で、この冬、収穫されたばかりのものなんです。」

高瀬
「生産したのは、被災した農家の人たち。
豪雨から5か月、厳しい状況の中で立ち上がろうとする姿を取材しました。」

被災した地区を明るく 宇和島市に誕生した小さな会社

報告 川本聖記者(NHK松山)

今月(12月)、愛媛県宇和島市に小さな会社が誕生しました。
「株式会社 玉津柑橘倶楽部」。

新会社 社長
「今日、会社の登記を申請しました。」

設立したのは、市内、玉津地区の20代から30代の若手みかん農家10人です。
加工品の販売など、みかんに関するビジネスを広げ、被災した地区を明るくしたいと考えました。
発起人のひとり、山本利輔さん、37歳です。
広告代理店で働いていましたが、10年前にUターンして、家業のみかん栽培を継ぎました。

山本利輔さん
「できることをみんな一生懸命やっている。
使命感がみんなあるんじゃないか。」

深刻な被害 みかん畑にも

7月の西日本豪雨。
大学の調査などによると、宇和島市では、2,000か所以上もの土砂崩れが発生。
特に、玉津地区は被害が大きく、特産のみかんの畑のうち2割が流され、影響も深刻でした。

山肌にある、みかん畑へ続く農道は、至るところで崩壊。
復旧は、生活道路が優先され、メドは全く立ちませんでした。
さらに、多くの農家で農機具が土砂に押しつぶされ、畑の手入れが全くできない状況だったのです。

山本利輔さん
「絶望感もあった。
みかんはもうあきらめるしかない。」

みかんを守りたい 立ち上がった若手農家

「残ったみかんだけでも守りたい」。
立ち上がったのが、山本さんたち若手農家でした。
被災1週間後には重機を持ちより、農道の補修に取りかかります。

夏には、山本さんのアイデアで、インターネットで資金を募る「クラウドファンディング」を開始。
農機具の修理費用の一部を賄おうと考えます。
みかんを収穫できたあかつきに、ジュースにして返礼品とすることにしました。
1か月半後、全国から集まったのは1,100万円を超す資金。

山本利輔さん
「本当に驚いた、ここまで広がるんだなと。
大事にしていきたい。」

山本さんたちは、地区の農家で資金を分配、農機具の修理に充てることができたのです。

復旧への課題 「再編復旧」の動き

ところが、いま地区は大きな課題に直面しています。
崩れた畑をどう復旧するかという問題です。
この日開かれた復旧方法についての説明会。
県の担当者が案を提示しました。

愛媛県 担当者
「元の土地を全部改編、全く真っ白にして、新たに区画等を整備し直す。
『再編復旧』を進めていこうと。」

山全体を削って、一から畑を作り直す「再編復旧」という方法です。
日当たりと水はけがよい山の斜面で栽培されるみかん。
山を切り崩して、なだらかな斜面に畑を作り直し、作業効率がよく、土砂崩れも発生しにくくしようというのです。

ただ、準備や工事にかかる期間は少なくとも8年。
被害を受けた場所以外も含め、山全体の畑で、その間、みかんが収穫できなくなります。

みかん農家
「収入がない期間ができる。
その辺、どうしようか。」

みかん農家
「我慢せよ、というのもなかなか難しい。」

結局、意見はまとまらず、議論が続けられることになりました。

新会社のねらい 異例の事業内容とは?

こうした地域の問題も解決したいと、若手たちは議論を重ね、会社を立ち上げることにしたのです。

新会社 社長
「会社の目的、ここが重要になってくる。」

会社の業務に、みかんの加工品を作ることだけでなく、「農業に関する土木工事の請け負い」や「労働者派遣」などを加えました。
農家が作る法人としては異例の事業内容です。

地区の農家から希望者を募り働いてもらい、「再編復旧」で収入が断たれた場合でも、生活できる道を確保しようというのがそのねらいでした。

新会社 社長
「再編(復旧)、まだ手が着いていない被災の園地。
そういうところを含め、玉津を元気にしていくのが、会社のいちばんの目的。」

みかんのように強く 農家の思い

そして、今月上旬。
みかんは収穫の最盛期を迎えました。
被害を免れた畑には、多くの農家の心配をよそに、黄色く色づいたみかんがしっかりと実を結んでいました。

山本利輔さん
「みかんがここまで、きれいに育つと思っていなかった。
すごくうれしい。
農家自身がもっと強くなって、この地区を守っていく。
僕らもみかんみたいに強くないといけない。」

山本さんたちは、出荷するみかんに1枚の紙を添えています。
綴ったのは、地区の人たちの思いです。
「諦めない強さは、いつだってみかんが教えてくれた」。

復興をめざす地域のヒントに

和久田
「8年も生産ができなくなるかもしれないというのは、いま見てきた以上に、たくさんの課題もあると思います。
それでも何とか知恵を絞って、地域の皆さんが納得できるかたちで、希望を持って乗り越えられるようにしよう、という山本さんたちの気持ちが伝わってきました。」

高瀬
「専門家によりますと、農家が会社を作って人材を活用して問題を解決しようというのは珍しい試みで、復興をめざす地域は他にたくさんありますけれども、そういった地域にとってもヒントとなるのではないかということでした。」

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