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2018年12月25日(火)

大学スポーツを変える 東大アメフト部の改革

高瀬
「大学スポーツの新たな動きです。」

東大アメフト部「法人化」の動き

先週、大学王者が決まったアメリカンフットボール。
2年ぶりに頂点に立った関西学院大が、来月(2019年1月)3日、日本一をかけて社会人王者の富士通と対戦します。
シーズンがクライマックスを迎えるその裏で、ある大学の組織改革に注目が集まっています。

「東大のウォリアーズクラブは法人化します。」

東京大学アメフト部が進める「法人化」の動きです。
“資金の管理はどうなっているのか”、“部の責任は誰が負うのか”。
これまで不透明だった動きを“見える化”するのがねらいです。
大学スポーツの新たなモデルをめざす取り組みに迫ります。

組織運営の改革に乗り出した東大アメフト部

報告:河村信(映像取材部)

創部62年を迎えた東京大学アメフト部。
部員は170人。
学内で最も規模の大きい運動部のひとつです。

今シーズン、リーグ戦で優勝。
関東学生リーグの最高峰、「トップ8」への昇格を決めました。
チームが躍進する中で、東大アメフト部は組織運営の改革にも乗り出していました。
それが、部の活動を支援する社団法人「東大ウォリアーズクラブ」の設立です。

社団法人 東大ウォリアーズクラブ代表理事 好本一郎さん
「われわれ全員で若者を支えていこう。」

法人の代表理事に就任した、アメフト部OBの好本一郎(よしもと・いちろう)さんです。
マクドナルドやスターバックスなどで取締役を務めてきました。

社団法人 東大ウォリアーズクラブ代表理事 好本一郎さん
「やるからには軽々しくできない。
性根を入れて、新しく日本の大学スポーツに先べんをつけなければならない。」

運営の中身を“見える化”

日本の大学の運動部の多くは「任意団体」。
建前上はスポーツ好きな学生が集まって活動しているという扱いです。
部費を監督の個人口座で運用するケースもあり、不透明な資金運用につながるとの懸念があります。

さらに、権限が監督に集中しやすいことも問題点として上げられています。
こうした点を解消するため、東大アメフト部では支援法人が監督の人事権を持つほか、予算管理など部の運営全般を担います。

さらに、法人自体のチェック機能を強化するため、OBやOGだけでなく、父母会からも代表を選出。
新たに立ち上げたファンクラブの代表も監督人事や予算の承認に関わります。

ガバナンス向上に向けた動き

今回、ファンクラブの代表として法人に参加したのが、部員がよく訪れるうどん屋のオーナー、寺尾将幸(てらお・まさゆき)さんです。

社団法人 東大ウォリアーズクラブ代表理事 好本一郎さん
「みんなの兄貴分ですから。」

部員と頻繁にコミュニケーションを取っている人物として、監督人事や予算承認の議決権を与えられています。

社団法人 東大ウォリアーズクラブ代議員 寺尾将幸さん
「ただの“うどん屋のおっさん”なので、しゃべりやすいと思う。
そういう部分で役割を果たせたらプラスになると思う。」

社団法人 東大ウォリアーズクラブ代表理事 好本一郎さん
「運動部の活動をいろいろな立場から見て見守っていくのがガバナンス上、大事。」

組織の“透明化”で資金力強化

ガバナンスの向上に加え、法人が力を入れているのが、資金力の強化です。
コーチの人件費や用具の購入費など、何かとお金がかかる大学スポーツ。
法人として組織を“透明化”することで、多くの企業から協賛してもらおうとしています。

社団法人 東大ウォリアーズクラブ代表理事 好本一郎さん
「いま部費は2,500万円くらい、実は(選手の)親の負担。
ここから先(収入)を伸ばすのは、われわれの努力で企業協賛(の交渉)に行くべき。」

この日、法人のスタッフが部員とともに訪ねたのが、都内のIT企業。
しっかりとアメフト部を法人が支援していることを説明。
法人が相手だと責任の所在が明確になるため協賛しやすいと企業側も前向きな回答を示しました。

IT企業 担当者
「契約でいうと、法人と契約するという安心感は大きい。」

獲得した資金は、学生たちが競技に集中できる環境づくりに生かしています。
これまで部員が自費で購入していたヘルメットやプロテクターなどの用具。
一式そろえるだけで10万円近くかかりますが、選手全員に支給しました。

選手
「今まで金銭的な理由でやめてしまう人もいた。
いろいろな人から支援をもらって、練習機器が整ってきて、ありがたい。」

法人設立から5か月。
東大アメフト部は、日本の大学スポーツのこれからのあり方を示そうとしています。

社団法人 東大ウォリアーズクラブ代表理事 好本一郎さん
「大学の運動部に対する制度という意味で、必ずしもサポートが十分でないという部分がある。
それを支えるひとつの仕組みとして、法人の体制をつくってみて、まだまだ成功とは言えないが、ひとつ投げかける形としてトライしてよかった。」

大学スポーツ“法人化” 今後の動きは?

高瀬
「取材した河村カメラマンです。
東大アメフト部の取り組み、大学スポーツのあり方に一石を投じそうですね。」

河村信カメラマン(映像取材部)
「私も20年近く前に大学でアメリカンフットボールをしてたのですが、当時も防具一式や合宿や遠征費などの費用を捻出するのが大変でした。
こちらのヘルメットは、東京大学が使っているものをお借りしてきたのですが、中が二重構造になっていて、より安全性を意識したものになっています。
その分、お金もかかってしまうんです。
こういったことは、アメフトに限ったことでなく、どこの部でも同じことが言えると思います。
法人化を通して支援の輪が広がって学生が競技に専念できる環境ができることは、大切だと思います。」

和久田
「環境の整備と、何より組織の透明性を高めていく動きは、今後も広がっていくのでしょうか?」

河村カメラマン
「今年(2018年)は、慶応大学ラグビー部も法人を設立しました。
この動きは加速していくと話す専門家もいます。
大切なのは、運動部に限らず、大学の部活動は次世代の社会を支える人たちを育てる教育の場だということです。
東大アメフト部では、学生に法人と企業との交渉の場に参加してもらい、社会を学ぶ場にもしています。
いまは一般企業でも透明化やガバナンスの強化は求められています。
大学スポーツの世界も例外ではなく、この流れはますます進んでいくと思います。」

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