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2018年12月23日(日)

“平和への光” 2020へ向けて

おととい(21日)、東京の「表玄関」の景色が大きく変わりました。
皇居外苑の夜を彩る光。
2020年を控え、始まったライトアップです。
皇居外苑全体が光で照らされるのは、歴史上、初めてのことです。

新井
「この皇居外苑のライトアップ。
東京オリンピック・パラリンピックを前に、『日本の顔』となる地域の魅力を向上させたいと、環境省などが計画したものです。」

小郷
「その大仕事を任されたのが、照明デザイナーの石井幹子(いしい・もとこ)さんです。
東京タワーやレインボーブリッジ、パリ・エッフェル塔などのライトアップ。
すべて石井さんがデザインを担当。
鮮やかな色彩や、最新技術による演出が世界で評価されてきました。」

新井
「その石井さんが、2020年に向けて手がける光。
どんな思いが込められているのでしょうか。」

「日本の顔」に適した明かりとは?

照明デザイナー・石井幹子(いしい・もとこ)さん、80歳。
今回、実寸大の模型などを使いながら、2年にわたり、光の当て方や強さの検討を重ねてきました。

照明デザイナー 石井幹子さん
「(光が)なるべく、ここにいた人の目線の邪魔にならないこと。
そういう点、作ってみるのが一番分かる。」

年間400万人が訪れ、「日本の顔」とも言われる皇居外苑。
長い間、“皇居の前庭(まえにわ)に相応しい美観と、静穏を保つ”と定められてきました。
そのため、夜の明かりは、ごくわずかの街灯に限られてきました。

皇居外苑に適した明かりとはどのようなものか。
半世紀にわたり、世界各地を彩ってきた石井さんにとっても、これまでにない難しい仕事です。

石井幹子さん
「ぱっと明るく照らすのなら簡単、楽な話だが、難しい。」

父への思い 同じ舞台で

「オリンピック」に向けた今回の照明。
石井さんには特別な思いがあります。
5歳の時に別れ、二度と会うことができなかった父への思いです。

石井幹子さん
「父が出征する時。
私だけが手をつないでいる。」

昭和19年、太平洋戦争中に招集された父・悌三(ていぞう)さん。
終戦後、シベリアに抑留され、現地で亡くなりました。
実は悌三さんは、オリンピックに出場したサッカー選手でした。

選手たちの真ん中で笑う悌三さん。
日本代表の主将を務めていました。
昭和11年のベルリン・オリンピック。
悌三さん率いる日本代表は、優勝候補のスウェーデンを破り、日本中に勇気や希望を与えました。
「父と同じオリンピックという舞台で、人々の心に届く仕事がしたい」。
そんな思いで、石井さんは今回の大役を引き受けたのです。

石井幹子さん
「やはり父がスポーツマンで、スポーツも明かりも、心に響くものではないかと思う。
暮らしの中で癒やしになったり、明日につながる元気のもとになったりしたら、大変うれしい。」

忘れている“暗みの美しさ”

先月(11月)末。
皇居外苑のシンボルのひとつ、桜田門で照明のテストが行われました。
光の具合を見つめていた石井さん。
明かりの強さが気になっていました。

石井幹子さん
「向こうも、消してください。」

一度、光を落としてみるという指示。
この場所には、「抑えた明かり」がふさわしいと考えました。

石井幹子さん
「高層ビルからもれる光は過度に明るい。
私たちは“暗みの美しさ”というのを忘れていると思う。
じっと目をこらすと見えてくる方が、本当はきれい。」

石井さんは、華やかなライトアップとは全く違う表現を選びました。

石井幹子さん
「清らかな明かり。
静かで穏やかな。」

光があふれる大都市だからこそ、ほのかな明かりが際立つと考えたのです。

石井幹子さん
「明るいところから暗いところまでのグラデーション、そこに美が宿る。
そういうものを再発見、この場所でできると非常にいい。」

平和の象徴 人の心に響く光を

そして、明かりがともる日。
初めて光に浮かび上がった、皇居外苑です。

「写真を撮ろうと思って来たが、しばらく見ていようと。
携帯しまおうと思った。」

「静かな場所、静かな光。
落ち着く感じがする。
これは本当にすばらしい。」

石井さんはこの先、2020年に向け、東京の下町やオリンピック会場のそばにかかる橋などのライトアップを手がける予定になっています。

石井幹子さん
「街の明かり、ライトアップというのは、平和の象徴。
人の心に響くようなものを、来年も再来年も、この先、作り続けていきたい。」

新井
「写真を撮ろうと思った人が、思わず携帯電話をしまったという気持ちが、なんとなくわかりますね。」

小郷
「この時期によく見かける、きらびやかなイルミネーションとは違って、すごく品があって、心が落ちつく、穏やかになる照明ですよね。」

新井
「今回のライトアップは、期間限定ではなく通年で行われるもので、災害時の避難場所として安全性を確保するという目的もあるそうなんです。
そして、冬と夏で光の色合いを変えるということで、そこも楽しんでほしいと石井さんは話していらっしゃいました。」

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