これまでの放送

2018年12月20日(木)

埋もれた公害『騒音』

高瀬
「特集は、『騒音』について考えます。」

和久田
「今年(2018年)10月、WHO=世界保健機関のヨーロッパ事務所が、『環境騒音ガイドライン』というものを発表しました。」

高瀬
「例えば道路の場合、WHOの勧告は53デシベル以下にすること。
日本の環境基準では70デシベルですから、とても厳しい内容なんですが、WHOは『健康を守るために騒音レベルをこれ以下に保つべき』として、世界各国に採用するよう求めています。」


和久田
「このような厳しい勧告値を出したのは、最新の研究で、『騒音』がさまざまな病気の原因になることが分かってきたからなんです。」

騒音は“埋もれた公害”

早朝から深夜まで稼働する、イギリスのヒースロー空港です。
2013年、周辺住民360万人分の医療データを分析した調査結果が報告されました。
日中の平均が、63デシベルを超えるような激しい騒音の地区では、脳卒中や心臓の病気のリスクが、およそ2割高くなることがわかったのです。
WHOの騒音ガイドラインを作った責任者は。

ロンドン大学 スタンフェルド教授
「騒音は、ある意味で“埋もれた公害”なんです。
特に重大なのが、夜間騒音に睡眠が妨害されることです。」

「ぐっすり眠れるということがない」

日本でも、騒音が生活に影響を与えているケースが多くあります。
広島市内を貫く国道2号線。
騒音レベルを独自に計測してみました。
平均は、日本の環境基準70デシベルをギリギリクリアしているものの、WHOの勧告値は大きく越えています。

  

周辺住民
「移り住んで来た時はなれなかったので、こんなに音がするんだという驚きがありました。」

住民
「ぐっすり眠れるということがない。
寝られんよね。」

風車の騒音・対策を急ぐべき

騒音は都会だけの問題ではありません。
WHOが対策を急ぐべきだと指摘しているのが風車です。
空気を裂く「ゴー」という音が響きます。


「ウォーンウォーンていう音が聞こえる。
ゴーン、ゴーンていう。
夜ね、寝られないのよね。」

嘉手納基地の「爆音」

報告:松岡哲平(NHK沖縄)

騒音が特に大きな問題となっているのが沖縄です。
アメリカ軍の航空機の騒音は「爆音」とも呼ばれています。
嘉手納基地に隣接する住宅の屋上にテントを張って、一晩、騒音を計測しました。
夜11時、訓練から戻った機体が次々と住宅地のそばを通り過ぎます。
翌朝4時半、エンジンを調整する低い音が響き始めました。
そして、朝6時半、戦闘機が訓練を開始。


2機、3機と連続で離陸し、猛烈な騒音が繰り返されます。

沖縄県が昨年度、嘉手納基地の周辺で行った調査結果です。
21の観測点のうち19か所で、WHOの勧告値、一日平均45デシベルを超えました。


基地の周辺では、多くの住民が、体の不調を訴えています。
眞喜志福一さんと、妻の和子さんです。
県の調査では、自宅周辺の航空機の騒音は平均59デシベル。
WHOの勧告値を大きく超えています。
さらに、自宅は幹線道路に面しており、常に自動車の騒音にもさらされています。
夜も昼も満足に眠れず、不眠症と診断されています。

眞喜和子さん
「めまいがして眠れなくて、こっちもめまいでしょう。
睡眠薬飲まないと絶対に眠ることができない。
本当に寝られないほど苦しいものはないです。」

騒音が病気の原因・放置できない

和久田
「単純にうるさくてわずらわしいというだけでなく、睡眠の妨害がさまざまな病気の原因になるのであれば、放置できないですよね。」

高瀬
「WHOは睡眠への影響を重く見て、夜間の騒音は、さらに厳しい勧告値を示しています。
一方、日本は、WHOよりもゆるやかに設定している上に、夜間については、道路以外、基準を設けていません。」

和久田
「WHOガイドラインについて日本の環境省は、『健康影響に関する内容も含めて、ガイドラインで示された値や知見を精査する段階だ』としていて、すぐに環境基準を見直す考えは示していません。
しかし、専門家は、早急な対策が必要だとしています。」

早急な対策が必要

北海道大学工学部 松井利仁教授
「(日本の環境基準は)かなり古い。
50年くらい前の知見で定められたものが多い。
(WHOガイドラインと)大きな差ができてしまっています。
騒音は健康影響が生じる環境要因ですから、ほかの有害化学物質と同様に、健康影響を防ぐための科学的知見に基づいた基準値を決めないといけない。」


高瀬
「健康がまず大事ということはもちろんですが、便利な暮らしや経済活動を制限すると影響も大きいと。
どう折り合いをつけるのかというのはなかなか難しいと感じます。
ただ、元々住んでいた人など、騒音と隣り合わせで暮らさざるを得ない人たちをどう守っていくのかについて考える必要がありそうです。」

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