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2018年12月18日(火) NEW

マカオのカジノ・光と影

高瀬
「日本でカジノの導入に向けた動きが本格化しています。
カジノを含むIR=統合型リゾート施設の整備法が、今年(2018年)7月に成立し、いま、複数の自治体で誘致に向け、動き出しています。」

和久田
「一方、16年前からカジノを本格的に導入し、世界一の売り上げを誇るようになっているのが中国のマカオです。
カジノがもたらした、光と影を取材しました。」

富裕層が満足できるリゾート

報告:高島浩記者(国際部)

40を超えるカジノが建ち並ぶマカオ。
わずか数分で億単位の金が飛び交います。
カジノのまわりには、富裕層が満足できるようなリゾート施設が相次いで誕生しています。

スパ スタッフ
「このプラチナマスクは世界でここにしかありません。」

スパでは、プラチナ製のマスクで肌の手入れ。


ホテル最上階のVIPルームには執事が24時間常駐。
価格は非公開。
泊まれるのは、カジノでたくさんのお金を使った人に限られています。


こうした施設が人気を呼び、訪れる外国人の数は年間3,000万人以上。
売り上げはカジノだけでも4兆円に迫る勢いです。

その恩恵によって町は一変。
干潟だった所が、世界有数のリゾートへと生まれ変わりました。

マカオのIR経営者 ローレンス・ホーさん
「カジノは財政上のエンジンだ。
日本でIRが注目されるのはなぜか。
それは新しい挑戦を可能にするからです。
外国人観光客から得たカジノ収入で、大きな発展につなげることが可能です。」

雇用拡大 教育費・医療費が無料

高瀬
「現地で取材をした高島記者です。
『カジノは財政上のエンジン』という経営者のことばもありました。
日本でもカジノに景気や雇用を期待する声がありますが、マカオでは実際にどういう変化があったんでしょうか?」

高島浩記者(国際部)
「まず、大きく変わったのは雇用です。
今ではカジノで労働人口の4人に1人、9万人が働いています。
税収の7割も、カジノがもたらすようになりました。
その結果、市民65万人の教育費や医療費は無料に。
さらに、毎年1人当たり10万円以上の現金が支給されています。
市民に話を聞くと、『家族を養えるようになった』とか、『高級車を買えるようになった』という声が聞かれました。」


和久田
「“いいことずくめ”のように聞こえますが、実際はどうなんでしょうか?」

高島記者
「確かに、地元経済にカジノがもたらした恩恵は大きなものがありますが、一方で、負の影響も深刻になっています。
多くの人がギャンブル依存症に陥っているのです。」

依存症・借金が膨れあがり…

(澳亞衛視 ニュースより)
「従業員が8億円のチップを盗んだ事件についてです。」

最近、マカオではカジノの従業員がチップを盗む事件が相次いでいます。
カジノ従業員みずからが依存症になり、賭け金欲しさに窃盗などの犯罪に走ってしまうというのです。

(澳亞衛視 ニュースより)
「カジノ従業員の団体には相談が寄せられ、多くはギャンブル依存症に関するものということです。」

依存症は、カジノが生活の身近にある一般の市民にも及んでいます。
戴秀雯(たい・しゅうぶん)さんです。
公務員だった妹が深刻なギャンブル依存症になったといいます。

戴秀雯さん
「これが妹です。
妹は最初は勝ちました。
それからカジノに行くようになり、依存症になってしまいました。」


最初は興味本位で、3万円程度から始まったカジノ遊び。
負けが重なり、みるみるうちに、借金は1,200万円に膨れあがっていました。

戴秀雯さん
「これが妹の新聞記事です。」


ばく大な額を取り戻そうと、詐欺に手を染め、そのまま海外に逃亡してしまいました。

戴秀雯さん
「ギャンブルは大嫌い。
家庭も何もかも、壊してしまうんです。」

呼びかけと最新システムの導入

ギャンブル依存症の疑いのある人が、ピーク時には成人人口の6%、2万5,000人にのぼったマカオ。
こうした事態を受け、対策も広がっています。
カジノにほど近い広場では、家族が依存症になった人たちが参加する市民グループが、注意を促しています。

ボランティア
「少しの額ならいいですが、大金をつぎ込んではいけません。」


さらに、政府も最新のシステムを導入。
指紋など、個人情報を登録すれば、依存症の疑いがある家族などの入場を制限できるといいます。

マカオ政府 ギャンブル依存症 対策担当者
「2012年に運用を始めてから、7万人が登録して、効果を上げている。
カジノ従業員のカジノへの入場を、法律で全面禁止にするなど、政府として対策を講じている。」

ギャンブル依存症の具体的な対策を

和久田
「草の根の呼びかけと最新システムの導入と。
これ対策の効果はどうなんでしょうか?」

高島記者
「はい。
一定の効果は出ています。
ギャンブル依存症の疑いのある成人の割合は、ピーク時の6%から、2.5%に減っています。
ただ、人口でいえば1万5,000人あまりと、いまだに多くの人が依存症のリスクを抱えているのも事実です。
マカオでは、十分な対策がないままカジノが増え、依存症が深刻な社会問題になっただけに、市民からは『現金を配るのもいいが、対策にもっとお金をかけてほしい』という声も多く聞かれました。」


高瀬
「日本でも同様の、ギャンブル依存症への懸念というのは指摘されていますよね。」

高島記者
「日本では、競馬やパチンコなどが原因で、ギャンブル依存症の疑いがある成人の割合が、マカオよりも高い、3.6%、実に320万人にのぼると推計されています。
こうした現状で、賭け金がより高額で勝負が短時間に決まるカジノが導入されることに、警戒する声も出ています。
今回のカジノを含むIR整備法では、日本人に対して、7日間で3回といった入場制限を設けていますが、早ければ6年後とも言われるカジノ開業までに、すでに存在するギャンブル依存症も含めた、具体的な対策を進めていけるかが問われていると思います。」

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