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2018年12月15日(土)

平成30年の歩み 林真理子が語る 平成の女性

平成6年。
宇宙に飛び立ったのは、日本人で初めての「女性」宇宙飛行士、向井千秋(むかい・ちあき)さん。
平成は、さまざまな職場に女性が登場した時代でもありました。
トレンドやファッションでも次々と社会現象を巻き起こし、日本社会を引っ張っていく存在になったのです。
彼女たちが駆け抜けた、この30年。
今日(15日)は、女性の視点で平成を振り返ります。

小郷
「シリーズ6回目は『女性』がテーマです。
社会部の山屋記者とお伝えします。」

山屋智香子記者(社会部)
「こちら、平成の新語流行語大賞の中から、女性に関するものを並べました。」

新井
「『アッシーくん』もありましたね、女性の勢いを感じますよね。
それから時がたって『アラフォー』、40歳前後で活躍する女性が注目されました。
飛躍していく女性の姿を表したものも多くありましたね。」

山屋記者
「これらの流行語をもとに、平成が女性にとってどんな時代だったのか、この方に聞きました!」

小郷
「直木賞作家の林真理子(はやし・まりこ)さんですね。」

山屋
「はい。
平成の女性たちを、ユニークな視点で語ってくれました。」

林真理子が語る “平成の女性”

山屋記者
「平成は、女性にとってどういう時代だった?」

作家 林真理子さん
「すごくいい時代だった。
働くのが当たり前になっていき、社会も完備されていった。
不備なことはいっぱいあるが、働くお母さんにも優しくなっている。」

今年(2018年)、デビュー36年になる林真理子さん。
小説やエッセイなど、これまで200あまりの作品を執筆してきました。
恋愛や歴史など、さまざまなジャンルに挑んできましたが、一貫して描いてきたのは、「女性たちの姿」です。
平成に入ってライフスタイルが様変わりする中で、仕事にも恋愛にも全力で打ち込む女性を見つめてきました。

そんな林さんに、女性に関する流行語をもとに話を聞きました。

林真理子さん
「『女子会』。」

平成22年の流行語、「女子会」。
女性だけで集まって、気兼ねなくお酒を飲む。
そんな姿に林さんは、平成の女性のたくましさを感じていました。

林真理子さん
「『オヤジギャル』という言葉も出てきて、飲み屋で女の子たちが、くだを巻いていてびっくりした、それも普通の世の中になって。
私、いいことだと思いますよ、女の人たちがお酒を飲みながら本音を言い合うというのは。
その女子会を生んだのは、オヤジギャルだと思うんですよ。
この大きな流れは、バブルのときからあった。
バブルのときに最盛期を迎えた、“女が自分が払うものじゃない、男に払わせてこその女だ”というのが、なくなったのかもしれないですね。」

次の話題は…。

林真理子さん
「『セクシャル・ハラスメント』。
私が昔いた広告業界なんて、卑わいなことを言われたり、触られたりするのは当たり前の世界で。
それはそういうもんだと思っていたんですよ、男社会で働くってことは。
うまくかわして、笑いで返してっていう。
それは間違ってたなと本当に思いますよね。」

山屋記者
「『パワハラ』『セクハラ』『マタハラ』。
平成ってハラスメントだらけだったのか、それともそれが認識されるようになったのか?」

林真理子さん
「認識されるようになったのだと思いますよ。
“嫌なことは嫌なんだ”とはっきり言える世の中になった。」

平成の時代は、人と比較するよりも、「自分らしく生きる」という価値観が広がりました。

「がむしゃらに頑張るというよりは、マイペースに頑張ってきた。
無難に楽しく生きたいなと思う。」

「なかなか努力も報われづらいのかなと。
ありのままに頑張りたい人も、ありのままに努力したくない人もいる。」

林さんが最も反応したのも、この言葉でした。

林真理子さん
「“ありのままで”、私にとって非常に大きなテーマ。
私は“ありのまま”を、わりとマイナスに捉える人間で。
こんなにだらしなく世俗に満ちて、なまけ者の私が、ありのままの私だと思っているので。
こんな私はいけないと思っているので、“ありのままの私で生きていきたい”という言葉がよく分からない。
どういうふうに、何でみんながこんなに取り上げるのかっていう感じ。」

そして林さんは、こんな表現で“ありのまま”という価値観を分析しました。

林真理子さん
「現状満足していたら、人間って何の進歩もないんじゃないかなって。
若いときは飢(かつ)えた気分で、“このままでは嫌だ”と、このままの私だったら、絶対もう生きている価値もないっていうぐらい悩んで、自分をとことん見つめる作業を、今の人はしてないんじゃないかと思います。
自分って一体、どれだけの価値がある人間なんだろうって。
じゃあ、これっぽっちだったら、“もっと何か身に付けたい”“こんなところにいるの嫌だ”と思わないと、ちょっと私は残念だなと思います。」

山屋記者
「やっぱり努力をしたくないというか、できなかったり?」

林真理子さん
「そうそう、それそれ、それなんですよ。
“あんなおばさんみたいに頑張らなくたっていいよね”とか、そういうふうに、“私たち、十分幸せだもんね”とか。
いいじゃん、いいじゃんって、おいしいスイーツ食べて、インスタやって、みんなから『いいね』って言われて、“これ以上のこと、何を望むの”みたいな女性も多いと思いますけれども、ひとこと言いたいのは、中年になるっていうことを考えなって。」

30年以上にわたって、女性たちの心をつかんできた林さん。
平成の次の時代を担っていく世代に伝えたいメッセージがあります。

林真理子さん
「すごく古くさい言葉になるけれども、“努力と野心”ですよね。
これに尽きると思いますよ。」

山屋記者
「報われないかもしれない努力はしても…。」

林真理子さん
「(努力は)しなければいけないと思う。
一生懸命努力した人には、風格なようなものが備わる。
ほかの人と違う輝きを持っているはずだから、それはいろんなことで生かせるんじゃないかなって、私は思ってるんですけどね。」

山屋記者
「努力することで何か見えてくる?」

林真理子さん
「人間って、いかにいい個性を身に付けて魅力的な人間になるかというのが、一生かけてやる作業だと思ってるんですよ。
そのための努力をしなかったら駄目だと思う。
努力をした人と、しない人は本当に差が出るということを、大きな声で言いたい。」

“次の時代を切りひらいて”

小郷
「『努力』という言葉がとても印象に残りましたが、きっと林さんご自身、昭和から平成にかけて努力されてきた方なんだろうなと感じました。
これから新しい時代を迎えるにあたって、自分自身、ちゃんと努力し続けてきたかな、足りていたかなと、はっとさせられましたね。」

山屋記者
「林さんはインタビュー中、『努力』という言葉を何度も話していました。
それは林さんご自身が、大学卒業後、就職活動がうまくいかないなど、自分の思い通りにならない経験をして、このままではダメだと自分自身で気づき、努力で乗り越えてきたからだということでした。」

新井
「そうしたご経験があったんですね。」

山屋記者
「平成の30年間、女性たちはさまざまな分野で努力しながら活躍し、社会的な地位や制度を確立してきました。
まだまだ制度面などで不備はありますが、林さんの『もっと努力しようよ』という言葉には、現状に満足せずに、平成の女性たちが次の時代を切りひらいていってほしいというメッセージが込められていると感じました。」

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