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2018年12月3日(月)

『鉛中毒』再びリスクが高まる

高瀬
「いま、高度経済成長期に作られた高速道路などのインフラが老朽化し、建て替えや修繕の時期を迎えています。」

和久田
「その工事現場で『鉛中毒』という、新たな問題が浮かび上がっています。
どんな危険が見えてきているのでしょうか。」

鉛中毒のリスク

報告:目見田健(ネットワーク報道部)

鉛中毒のリスク。
それが特に高まってるのが、老朽化した高速道路や橋脚の工事現場です。

作業員
「黒く見えているところが鉄のサビです。
赤く見えているところが鉛を含んだ下塗り塗料になります。」


古くなった塗料をはがすことによって表れる、この赤いものに「鉛」が含まれています。
鉛は、かつて、高速道路や鉄道の橋脚などに、鉄のサビ止めとして、塗料に混ぜて塗られていました。

その後、誤って吸ってしまった人たちに健康被害が出たため、平成8年に、塗料メーカーの団体が自主的に使用を禁止しました。
しかし、今、古い建物の改修工事が増えたことで、鉛が空気中に飛散する危険が出てきているのです。

血液中から異常な値の鉛

取材を進めると、最近になって鉛中毒が疑われるケースが出ていることがわかってきました。
診察に当たった毛利一平医師です。

今年(2018年)5月、高速道路で補強工事をしていた作業員の定期検診で、血液中から異常な値の鉛を相次いで検出しました。
血液100ミリリットル中40マイクログラム以上だと中毒のリスクが高まるといいます。
検診した33人中、8人がこの基準を超えていました。

ひらの亀戸ひまわり診療所 毛利一平医師
「高濃度の鉛にさらされた人たちがこれだけ出てくるのは、びっくりした。
現状のまま(各地で作業が)続くと、相当程度の鉛にさらされる労働者は相当数出てくると考えています。」

鉛中毒とは?

鉛中毒は、古くなった建物などから空気中に飛び散った鉛を鼻から吸い込んだり、はがれた鉛に触れた手をなめたりすることで発症します。
鉛は体内に蓄積され、徐々に全身にまわり、手足のまひや筋肉のけいれんがおき、激しい痛みにみまわれるのです。


重症の場合、死に至ることもあるという鉛中毒。
しかし、その実情は、多くの医療従事者の間であまり共有されていないこともわかってきました。

鉛中毒を発症した患者を治療した、中村賢治医師です。
その患者は40代の男性。
腹部や胸、背中に激しい痛みが続き、眠ることすらままならない日々が一か月も続いていました。

のざと診療所 中村賢治医師
「ご本人からするともう死ぬほど痛い。
(皆さん)足をつった経験があると思いますけど、足のつった状態がおなか全体に起きる。」


実は男性は、ここに来るまでに、4つもの病院を受診していました。
しかし、診断は全て原因不明。
困り果てていたと言います。
男性の症状は、高速道路の塗装工事を始めた後から出ていました。
化学物質の影響を研究していた中村医師。
詳しい血液検査を行い、鉛中毒だとわかったのです。
男性は半年間点滴し、ようやく回復。
発見がもう少し遅れれば、体にまひが残った危険もあったといいます。

のざと診療所 中村賢治医師
「症状だけからすると(多くの医師は)、何の病気かさっぱり分からないと思います。
見過ごされてる患者さんは多いと思います。」

広がる情報共有の動き

改めて認識され始めた鉛中毒のリスク。
情報を共有し、診断・治療に結びつけようという動きが広がっています。

医師
「鉛中毒について発表させて頂きます。」

先月の学会では、愛知県の医師が鉛中毒と診断した50代の男性の症例を発表しました。

医師
「新しく体験したことを思い出せない、作業手順をわすれてしまうなど…。」


鉛を扱う工場で働いていたこの男性は、記憶障害も起きるほど重症化しました。
最初に診察を受けてから10年近く、鉛中毒と分からなかったといいます。

参加した医療関係者
「すごく驚きました。」

参加した医療関係者
「お医者さんが(鉛について)何らかの知識を持っていたから表に出たが、そうでなかったら、認知症の始まりとかそんな形で過ぎていくんじゃないかなと思います。」

改めて情報発信・対策を徹底

高瀬
「取材した目見田記者です。
鉛中毒の情報が浸透せず、医師の診察が難しくなってしまっているのはなぜなのでしょうかか。」

目見田記者
「鉛を含んだ塗料は、国内ではおよそ20年前からほとんど使われなくなり、医師の間で鉛中毒を診察する機会は少なくなりました。
いわば、過去の病気とされてきたため、その情報はきちんと継承されてこなかったのです。
しかし、鉛中毒のリスクが再び高まっている中で、改めて情報を発信し、対策を講じるべきだという声が上がり始めています。」

和久田
「その対策というのは具体的に進んでいるんですか?」

目見田記者
「取材した高速道路会社では、専用のマスクや防護服を着用するなど、対策を徹底していました。
老朽化したインフラの改修工事が今後も増えるとみられる中で、国は中小零細を含めた企業全体に対策を徹底させたいとしています。」

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