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2018年12月2日(日)

世界に広がる“IKIGAI”

小郷
「日本の『ある言葉』に、注目が集まっています。」

「IKIGAI。」

今、世界各地で、日本語の「生きがい」という言葉が広がっています。
きっかけとなったのは、1冊の本。
その名も『IKIGAI』。
外国人の視線でとらえた「日本人の人生観」が、世界各地で共感を呼んでいるのです。

『IKIGAI』の編集者
「西欧社会は変化のスピードがとても速く、今と明日のことしか考えられなくなっている。
この本は、生きる意味について興味深いメッセージを与えている。」

「生きがい」という言葉が、なぜ人々の心をとらえているのか、探りました。

“IKIGAI”は意味深い言葉

『IKIGAI』の作者、スペイン人のエクトル・ガルシアさん、37歳です。
IT企業に勤めるエンジニアとして12年前に来日。
朝から晩まで仕事に追われる中で、日々の暮らしに満足感を得られなくなっていました。

『IKIGAI』作者 エクトル・ガルシアさん
「自分はなぜここにいるか、なぜ生きているのか。
人生の意味が、ふわふわになっていた。」

そんなとき、住民の多くが長生きするという、沖縄県のある村の存在を知ったのです。
訪ねてみると、そこには、笑顔あふれるお年寄りたちの姿がありました。
80歳をこえてなお、畑仕事をしながら、日々支え合って暮らしていました。

お年寄りたちの笑顔の背景には何があるのか。
ガルシアさんは、ある概念が当てはまるのではないかと考えました。

得意なこと、好きなことをし、社会からも必要とされる。
そして、さらに収入が得られる。
その重なり合うものが、「生きがい」だと考えたのです。

エクトル・ガルシアさん
「人に会ったら笑顔があった。
生きがいを持って、笑顔で生きていくのが一番だと気づいた。
(村の人もそれを)サポートしていく。
何をやっても隣の人は助けてくれるから大丈夫。
みんなハッピーな気分になる。」

この沖縄での体験をもとに、日本人の人生観を本にしたところ、ヨーロッパでたちまちベストセラーとなったのです。

“人生に、意義や満足感、幸福感をもたらすこと。
それこそが『生きがい』なのです。”

エクトル・ガルシアさん
「僕はスペイン人ですが、スペインに“生きがい”という言葉はない。
英語も“meaning of life=生きる意味”で(“生きがい”とは違う)。
“生きがい”は、すごく意味の深い言葉。
自分の人生がむだじゃない気分は、すごく大事。」

幸せで喜びに満ちた人生を送るためには?

景気の低迷に加え、移民の流入などで不安定感が増すヨーロッパ。
『IKIGAI』は、各地で人々に影響を与えています。
フランス、パリに住むミカエル・ラムセイエさん。
政府系の機関で働いていましたが、忙しい上に仕事も評価されず、退職しました。
何を糧に、この先、生きていけばいいのか。
そんなとき出会ったのが、『IKIGAI』でした。
「本当に好き」で、「得意」で、そして「社会の役に立つ」ことは一体なんなのか。
突き詰めて考えたといいます。

ミカエル・ラムセイエさん
「この本には、私の悩みを解消するヒントが的確に表現されていました。
充実し、幸せで喜びに満ちた人生を送るために何をすべきか、大いに役立ちました。」

小さいころから人を喜ばせることが好きだったラムセイエさん。
「生きがい」という言葉に触発され、パーティなどのイベントを企画する会社を自ら立ち上げました。

ミカエル・ラムセイエさん
「人々が喜ぶ表情を見ることが私の喜び。
それを仕事として生きていく。
『IKIGAI』が自信を与えてくれたのです。」

“IKIGAI” 企業の人材育成にも

「生きがい」を人材育成に活用しようという動きも出始めています。
企業コンサルタントのパウロ・ドンクルシュさん。
今、従業員のモチベーションを向上させるため、「生きがい」の考え方を説いています。

企業コンサルタント パウロ・ドンクルシュさん
「“生きがい”を見つけるために、3つのことに目を向けて下さい。」

研修の対象となるのは、企業の幹部社員たちです。
部下たちの得意なこと、好きなことは何か。
それをいかに引き出すことが重要かを、説明しました。

参加者
「非常に興味深い。
私自身の隠れた才能も分かった気がします。」

「自分が何をしたいのか、何が強みなのか、徹底して考えることが重要ね。」

企業コンサルタント パウロ・ドンクルシュさん
「人生において何をしたいのか、大事なことは何か、誰もが考えることですが、
“生きがい”の特徴は、何と言ってもシンプルで分かりやすいことです。
それによって人々は“生きがい”を求めて前に進んでいけるのです。」

報告:藤井俊宏(ヨーロッパ総局)

小郷
「ヨーロッパの人のほうが『人生を楽しむ』というイメージがあったんですが、“生きがい”にあたる言葉がないというのは意外でしたね。

新井
「現地の専門家によりますと、ヨーロッパでは仕事とプライベートをきっちり分けて考えることが多く、一方が充実していても、もう一方で不満がある人も多いそうです。
“生きがい”は、その両方を合わせて人生の喜びを得るという考え方なので、ヨーロッパの人たちには新鮮で、受け入れられているのではないか、ということでした。
この『IKIGAI』、42か国で翻訳され、スペインやフランスではベストセラーになったそうです。」

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