これまでの放送

2018年11月30日(金)

娘を奪われた母の悲しみ…演奏に乗せ

高瀬
「こちらの女の子、山下玲奈ちゃんです。
17年前に起きた事件で、命を奪われました。」

和久田
「事件後、玲奈ちゃんの母親が書いた手記を元にオーケストラの曲が作られました。
その曲は、いまも人々に、いのちの意味を問いかけています。」

手記を元にしたオーケストラの曲

報告:竹平晃子(NHK横浜)

先月(10月)横浜で開かれた、神奈川フィルハーモニー管弦楽団のコンサート。
演奏されたのは、『子守歌』と名付けられた曲です。
およそ30分の演奏時間の半分近くを占めるのは、事件で命を奪われた山下玲奈ちゃんの母親の言葉です。

観客
「胸がえぐられるような曲調で、心にずっしり重くのしかかるような音楽でした。」

観客
「非常に心が痛い、そういう気持ちになる。」


平成13年に起きた大阪教育大学附属池田小学校事件。
刃物を持った男が侵入し、子ども8人の命を奪いました。
玲奈ちゃんの母親、山下和子さんです。

山下和子さん
「未だに悔しい思いは常にある。」

玲奈ちゃんは当時小学2年生。
明るく活発な女の子でした。

宇多田ヒカルさんが大好きだった玲奈ちゃんに向けて、
和子さんは、一通の手紙をしたためました。

“車の中で、歌、よく歌ってくれたよね、なぜママの傍には玲奈がいないんだろう。”

事件から4年後、この手記を元にオーケストラの曲が作られたのです。


玲奈ちゃんの母親 山下和子さん
「娘に対しての思いを書き込んだ私の気持ちの手記だった。
歌で皆さんに感じていただいて、心に残るのが一番嬉しい。」

お母さんの気持ち

コンサートに出演した、小学5年生の宮上真悠子さんです。
山下さんの言葉を朗読することになりました。

宮上真悠子さん(朗読)
「車の中で宇多田ヒカルさんの歌、よく歌ってくれたよね。」


指揮者
「表面的にならずに(心の)中から。」

しかし、娘を失った母親の思いをなかなか理解することができません。
真悠子さんは、家に帰ってお母さんに自分の気持ちをぶつけてみました。

宮上真悠子さん
「お母さんの気持ちわからないから、ママに聞いたらどうかなと思って。」

事件で娘を失った山下さんの手記を見たお母さん。
娘を思う率直な気持ちを話し始めました。

真悠子さんの母 かおるさん
「絶対、我が子が痛い目にあうのなんて、想像するのも嫌。
実際目の前であったら体を盾にしてかばうよね。
みんなそうだと思うよ。
だけど(玲奈ちゃんのお母さんは)それができなかったことも、息があるうちに『頑張れ』と言うこともできなかったんだから、本当につらいと思うよ。
でもつらいのを(玲奈ちゃんの)お母さんは『つらい、つらい』と言ってるばかりじゃなくて、それを力に変えて、この手記に自分の気持ちを全部乗せているから、ね。」


自分に対する母親の深い愛情を感じました。

演奏家として 1人の母親として

一方、団員の中には、冷静に演奏できるか不安に思う人もいました。
フルート奏者の江川説子さん。
小学生と中学生の子どもがいます。
この曲と出会って初めて、演奏中に母親である自分を意識したと言います。

江川説子さん
「子どもを持って初めて、こんなに大事なものがあるのかと。
子どもを亡くしたお母さんの想像はできるけれど、本当に同じ気持ちになるというのは絶対無理だと思う。
(演奏中に)自分がもう無理、みたいになってしまうんじゃないかと。」


演奏家として、1人の母親として、練習に打ち込みました。

母親の悲しみを演奏に乗せ

そして、コンサート当日。


演奏に乗せて、日々の幸せを突然奪われた母親の悲しみが歌われます。

そして、真悠子さんのソロのパート。

宮上真悠子さん(朗読)
「車の中で宇多田ヒカルさんの歌、よく歌ってくれたよね。
宇多田ヒカルさんのように英語が上手になって歌手になるのが夢だったんだよね。
母の日にもらったお手伝い券たくさんあるのにもう使えないね。」


舞台上の一人一人が曲と向き合い、それぞれの思いを表現しました。

江川説子さん
「今でも、17年経っても(娘を)思い続ける気持ちというのは、自分も共有できる。
お母さんの気持ちが届くと良いな。」


宮上真悠子さん
「私が生きられているのは、お母さんお父さん、学校の先生お友達のおかげ。
玲奈ちゃんの代表として、これからも元気に楽しく生きていきたいと思いました。」

  
  

和久田
「会場には玲奈ちゃんのご家族もいらしていました。
演奏を聴いて、『永遠の愛情までは奪われなかった 今回のコンサートで、玲奈との思い出がまた一つ増えた』と話していたと言うことです。」

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