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2018年11月29日(木)

教員の働き方改革 先生の負担は減らせるか

高瀬
「特集は、子どもたちの教育にも大きく影響する、教員の働き方です。」

教員の過度な働き方に警鐘

名古屋大学 准教授 内田良さん
「先生の尊厳を踏みにじっているとしか思えない。」

法政大学 特任教授 尾木直樹さん
「本気で手を打たなきゃダメです。
学校がつぶれると思っています。
学校はつぶれます。」


いま、教員の過度な働き方に警鐘が鳴らされています。
長時間勤務が原因で亡くなる教員も、相次いでいます。

嶋田友生さん。
福井県の新人教員だった4年前、自ら命を絶ちました。

嶋田さんの父親 富士男さん
「息子の遺書になります。
『疲れました 迷惑をかけてすみません』。」

時間外勤務は、最大で月161時間。
公務災害、つまり労災と認定されました。

嶋田さんの父親 富士男さん
「正直、異常でしかない。
抜本的な取り組みをしないと、第2、第3の友生が生まれるかも分かりません。」

時間外勤務・月80時間超 中学校で6割

文部科学省が2年前に行った実態調査です。
時間外勤務、いわゆる残業が「過労死ライン」とされる、月80時間を超える恐れのある教員は、小学校で3割、中学校で6割に上りました。

学校に求められるもの

残業が膨らむのは、学校に求められるものが増えているからです。
埼玉県伊奈町の小室小学校。
2年生の担任、安部仁美先生です。
毎月およそ70時間の残業をしています。
教員の負担が増えているのは、授業が終わった後です。

その1つが、「下校指導。」
登下校中に巻き込まれる事件や事故が増え、安全管理が学校に求められるようになりました。
時には、学校の外まで付き添います。

打合せをしていると…。
午後4時45分。
あっという間に定時の退勤時間です。

安部先生が自分1人の仕事を始めようとすると、急に呼び出されました。
最近様子が気になる子どもの背景に、家庭の問題がないか話し合うためです。
不登校やいじめ、複雑な家庭などへの対応が、年々増えています。

翌日の授業の準備にとりかかる頃には、すっかり夜になっていました。
小学校では、英語が導入され、道徳が新たな教科になったことで授業の準備や研修の負担が増えています。

小室小学校 教諭 安部仁美さん
「授業は命だと思いますが、授業にかける教材研究の時間も(定時の)16時45分までには取れないことが多くて、自分1人でできる仕事はどうしても後回しになっていくんです。」

「業務アシスタント」残業12時間減

教員の負担を減らす取り組みも始まっています。
1つが、「業務アシスタント」です。
教員経験のある人などを新たに雇って、配布物や掲示物を手伝ってもらっています。
ほかにも、会議の回数を見直すなどして、業務を減らしました。
その結果、先月の残業の平均は、去年(2017年)より12時間減って、65時間になりました。
しかし、現場で出来る対策には限界があると言います。

小室小学校 校長 加藤浩之さん
「ここから先は厳しいかなと思います。
子どものことを考えると、どうしても削れないことがたくさんあるので、厳しい部分もあるなと思っています。」

「変形労働時間制」トータルが変わらない?

和久田
「スタジオには取材にあたった荒川記者とお伝えします。
ベテランの先生があんなに手際よくやっても大変ということは、やはり負担が大きということですよね。」

荒川真帆記者(社会部)
「そうなんです。
こうした中で、文部科学省も教員の働き方の見直しを進めていて、年明けに大きな方向性を示す方針です。」

高瀬
「ということは議論は大詰めなんですね。
では、この残業時間どう削るつもりなんでしょうか。」

荒川記者
「いま文部科学省が導入を検討しているのが、『変形労働時間制』という制度です。
これは、忙しい時期の勤務時間を増やす代わりに、業務に余裕がある時期、例えば8月にまとまった休みを設けて、1年間を通じて労働時間を調整しようというものです。」


和久田
「学期中は多く働く代わりに、夏休みにはしっかり休むということですね。」

高瀬
「メリハリのある働き方、良さそうな気がしますけど。」

荒川記者
「必ずしも、そうとは言えないんです。
このグラフは、ある1か月の勤務時間を表しています。
青が定時の勤務、赤が残業です。
変形労働時間制は、定時の分を増やすので、残業時間が減ります。
ただ、見かけ上でしかなくて、忙しさは変わりません。」


高瀬
「トータルの働いた時間自体は変わらないんですね。」

荒川記者
「しかも、文部科学省は8月に長期休暇を取ることを想定していますが、8月も教員は忙しいんです。
まずはプール指導。
そして、部活動。
夏休みには練習や大会が多く、教員はそれに立ち会わなければなりません。
さらに、研修というのも、いま増えています。
英語やプログラミング教育など、新たな教科や指導が増えることで、研修の回数も増えています。
つまり、夏休みは先生にとって余裕がない、休めない時期なんです。
しかも、教員の給与体系は独特で、たくさん残業したとしても、それに見合う残業代が支払われることはありません。
つまり、多くがサービス残業と化しているのが実情なんです。」


和久田
「そうですか。
となると、ほかに新たな手立てを考えないといけませんね。」

荒川記者
「そうですね。
そこで専門家の提案が、大きく2つあります。
1つは『大幅な業務の削減』、2つめが『教員の数を増やす』ことです。
いずれも、何年も議論されてきたのですが、なかなか実現されないていないというのが現状です。
この『学校の働き方改革』、教員のためだけでなく、その教員に学ぶ子どもたちのためにも、今まさに思い切った見直しを進めるべきだと思います。」

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