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2018年11月21日(水)

米どころで「業務用米」生産加速

和久田
「私たちの食生活に欠かせないお米。
その生産と消費をめぐる最新の動きについてです。」

存在感を増す家庭外のお米

東京都内の大手デパート。
朝7時半から販売しているのは、手作りのおにぎりに、ヘルシーなお粥。
朝ごはんを家で作る時間がない会社員に人気です。
年々減少する日本人の米の消費量。
その中で存在感を増しているのが飲食店やコンビニなどで使われる米です。
これにあわせてコンビニ各社も、新商品を次々と展開。
大手コンビニ1社だけで、家庭の外で消費される米の3%を使っています。

大手コンビニ 担当者
「簡単便利、ご飯の消費量は非常に増えている。
炊飯器の米だけを食べる時代ではなくなってきていると思います。」

加速する業務用米の生産

高瀬
「確かに、家庭の外で米を食べる機会は増えてますよね。」

和久田
「家庭以外で消費される米、例えばレストランなどの外食やコンビニなどの中食で使われる米は『業務用米』と呼ばれています。
米の販売量の4割を占めていて、今後、需要はさらに伸びると予測されています。
こうした需要を背景に、全国の米どころでは業務用米の生産を加速させています。」

業務用米 生産拡大する産地

報告:鈴木慎一(NHK仙台)

宮城県・栗原市。
水田全体の1割に当たる700ヘクタールで業務用米を生産しています。
この日、収穫していたのは、「萌えみのり」という品種。
味にくせがなく、どんな料理にも使いやすいため、レストランなどでよく利用されています。
10年前から生産を始め、生産量はこの3年で3.5倍に拡大しました。


かつては、ひとめぼれなど、家庭用のブランド米を売りにしていた栗原市。
しかし、家庭での消費が減り、販売は頭打ちになっていました。
農協の米の販売担当、兵藤健一さんです。
このままでは産地の未来はないと、新たな需要が見込める業務用米に目を付けました。

JA栗っこ 米穀販売課長 兵藤健一さん
「ブランド米一辺倒では、どうしても消費者に飽きられる。
売れるお米を作らないと生き残れない。」

「萌えみのり」は、種もみを直接田んぼにまいてもよく育つため、生産コストを抑えながら、収量を2割増やすことができます。
さらに、卸売会社との契約栽培のため、売れ残るリスクがありません。
農家の収入は10%増えたといいます。

  

米農家 三浦章彦さん
「(萌えみのり)は魅力ある品種だと思います。
来年についても(栽培面積を)もう少し増やそうかなと考えてはいます。」

ライバル産地・業務用米参入

順調に生産を伸ばしてきた栗原市ですが、いま、気になる変化が起きています。

「広島、西日本でも(業務用米栽培を)やってるんです。」

ライバルの米の産地が、次々と業務用米にかじを切り始めたのです。
コシヒカリの一大生産地、新潟県も。

JA栗っこ 米穀販売課長 兵藤健一さん
「有名ブランド地域の参入は恐怖になっていますね。」

今年(2018年)生産を本格化させた新潟の上越地方を取材しました。
倉庫に積み上げられているのは業務用米。
生産量は、去年の10倍に拡大しました。


ブランド米競争が過熱するいま、コシヒカリだけに頼れないと考えています。

新潟 上越 米農家 髙橋進さん
「新潟県は確かにコシヒカリで生きてきたんですが、いつまでも(コシヒカリに)しがみつくわけにはいかないと思う。」

JAえちご上越 常務 石山忠雄さん
「業務用米はこれからも必要不可欠。
勝ち残っていくためには必要。」

次の一手・消費者のニーズを調査

業務用米でも競争が激化する中、栗原市の農協は、次の一手を打とうとしています。
この日、連絡したのは静岡の卸売会社。
「萌えみのり」以外の新たな品種の生産に向けて、消費者のニーズを調査していました。

JA栗っこ 米穀販売課長 兵藤健一さん
「業務用米としては硬めがトレンドか、それとも柔らかめの方がよろしいんでしょうか。」

米卸売会社 社長(電話)
「お客様によっていろいろあると思うが、業務用米はどちらかというと硬めで粒がしっかり見えるほうが好まれるようです。」

農協では、多様なニーズにマッチした複数の業務用米を揃えることで、競争を勝ち抜こうとしています。

JA栗っこ 米穀販売課長 兵藤健一さん
「一番いい物をいろんな業者さんに販売していく。
本当に売れる米だけを作る手法を展開しています。」

農業のあり方に大きな変化が

高瀬
「取材にあたった仙台放送局の鈴木記者です。
家庭向け以外の米の生産競争が激しくなっていることがわかりましたが、そもそも利用する企業などのニーズは、柔らかい硬いなど、そこまで細かいものなんですか?」

鈴木慎一記者(NHK仙台)
「そうなんです。
家庭用の場合、コシヒカリなど単一の銘柄を買って、自宅で炊きますよね。
しかし、レストランなどの場合、複数の銘柄をブレンドして提供することが多いんです。
ブレンドすることで用途にあった食感や見栄えなどを実現できるからなんです。
一方、コンビニでは米の使い分けが行われています。
例えばおにぎりには、米粒がしっかりまとまり、見た目もつややかなもの。
チャーハンならば、粘りけが少ないものといった具合です。
こうした米は、業者が購入しやすいよう、たくさん収穫できて、しかも価格も安いことが重要になっています。」

和久田
「ただ手塩にかけてブランド米を作りたいという農家も多いのではないでしょうか?」

鈴木記者
「確かに安い米を作りたくないと、価格の高いブランド米の生産にこだわる農家が多いのも事実です。
しかし高齢化で農家の数が激減し、耕やすことができなくなった農地が一部の農家に集積して、いま農家の大規模化が進んでいます。
大規模化が進むと田植えや稲刈りなどの作業に時間がかかるため、複数の品種を栽培して作業時期を分散させる必要が出ているんです。
こうした生産構造の変化もあって、家庭向け以外の米を作ることに農家の抵抗感は少なくなっていると言えます。
市場の変化に応じて、これまでの農業のあり方が大きく変わろうとしています。」

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