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2018年9月21日(金)

『AI兵器』 最新動向

高瀬
「特集は、急速に進化を続ける「AI」=人工知能。
その利用がいま、軍事の分野で加速しています。」


和久田
「こちらの、機関銃を備えた車両。
そこに、AIが搭載されています。
AIは目標を識別して、人間の判断を介さずに自動的に攻撃を行います。」

高瀬
「『AI兵器』を巡る、最新の動向を取材しました。」

自動で攻撃できるAI兵器

リポート:北村雄介(モスクワ支局) 

先月(8月)下旬、ロシア国防省が開いた世界最大級の「武器の見本市」。
地元ロシアや中国など18か国、およそ1,200の企業が参加し、世界各国から軍の関係者が集まりました。

今回、大きな注目を集めたのが「無人戦闘車両」。
ロシアを代表する銃器メーカーのカラシニコフ社が開発したAI兵器です。
機関銃とともに、カメラやレーダーを装備。
そこに、AIが搭載されています。

(AI兵器の紹介)
「いま、自動戦闘モジュールがみなさんを監視しています。
AIが目標物をとらえ、識別する技術が使われています。」

  

AIは、カメラに映った映像などをもとに、距離も割り出し、対象の動きを捉えます。
人間の操作なしに、自動で攻撃を行うこともできるといいます。
付けられた名前は「サラートニク」。
ロシア語で、ともに戦う仲間、「戦友」を意味します。

「AI兵器の分野で世界をリードしたい」というロシア政府の意向を受け、開発が進められてきました。

今回、取材に応じた開発の責任者です。
実際の運用では人間が制御するとした上で、内戦が続くシリアで使われる可能性を示唆しました。

カラシニコフ社 ゲンナージエヴィチ副社長
「この兵器をシリアなどで使用することが、(ロシアで)すでに認められています。
私たちは、兵士を危険にさらすことなく任務を遂行できるよう、この兵器をつくったのです。」

規制を検討する国際会議

一方、国際社会では懸念の声が広がっています。
ロシアの見本市と時を同じくして、国連では「AI兵器」の規制を検討する国際会議が開かれました。
参加したのは、70か国以上の政府代表や専門家です。
「想定外の行動をとるリスク」や「責任の所在があいまいになること」を危惧し、規制を速やかに設けるべきという声が相次ぎました。

オーストリア大使
「人間の生死について、AIに意志決定を委ねるべきではありません。」

ブラジル代表団
「標的の選定や攻撃などの判断は、必ず人間が行うよう義務づけるべきです。」

開発を進める国々は「正確に攻撃でき、兵士の被害や負担も減らせる」と主張。
規制に反対しました。

アメリカ代表団
「拙速な規制は、被害を最小限に抑えるAI技術の開発を阻害しかねない。」

ロシア代表団
「すぐに制限したり、禁止したりするのはもってのほか。
AI兵器だからこそ、厳しい戦場でも活動できるのです。」

5日にわたった会議で各国の溝は埋まらず、議論は継続することになりました。

AI兵器について日本は

今回の議論で日本は、AI兵器については、議論がつくされていないとして、国際的な規制を設けるのは時期尚早だとしています。

髙見澤將林軍縮大使
「人間社会の生活の利便性の向上に使われるAIのポテンシャルも考えるべき。
まだまだ共通の認識を得るためには、相当な努力が必要だろうと思っております。」

AI兵器をめぐる現状に、国連の軍縮部門トップの、中満泉事務次長は。

国連 中満泉事務次長
「AIが武力を使う決定をしていいのか。
私たちの考え方では、人間が武力を行使するという決定権は、必ず確保しておくべきだと。
人間が責任をとらなければいけないと考えております。」


和久田
「平行線に終わった議論が次に行われるのは、11月の予定です。」

高瀬
「一方、さまざまなAI技術が兵器に転用されるかも知れないという危惧も広がっています。」

AI技術 兵器転用への危惧

AI技術の軍事への流用の動きは、日本の企業や研究の現場にも及び始めています。
ロボット研究者で、ベンチャー企業の代表を務める広瀬茂男さんです。
災害や事故の現場で活動するロボットを開発しています。

ハイボット 広瀬茂男代表
「これは水陸両用のヘビ型ロボットです。」

  

こちらは、陸上でも水中でも自在に動くことができるロボット。
AIを搭載し、周囲の環境を学習させて、人が立ち入れない場所でも自律して動くよう研究を進めています。
最近、広瀬さんには複数の国の軍関係者から、潜水艦や小型船の共同開発の依頼が届いていると言います。

ハイボット 広瀬茂男代表
「AIでボートを動かす技術を(共同で)やりたいと。」

戦争で使われる兵器につながりかねない。
会社では、軍関係者からの依頼は断ることにしました。
いま、広瀬さんは技術者の倫理観そのものが問われる状況になっていると感じています。

ハイボット 広瀬茂男代表
「下手すると道具ではなく、『意志をもった兵器』になりかねない。
ちゃんと真面目に考えましょうと。
いままさに、それ(規制)をやるかやらないかという瀬戸際にいる気がします。」

新たな枠組みでの規範を考えるべき

高瀬
「『AIが軍事に転用されるのではないか』ということは、かねてから言われていたことですが、議論がまだ尽くされていないということでしたね。」

和久田
「そもそも、“攻撃の際の兵士の心理的負担を減らすこと” が本当に良いことなのか、という気もしました。」

高瀬
「『AIを人間が制御できるのか』というところも含めて、非常に不安、あるいは怖い話だと思います。」

和久田
「国連の中満事務次長は、『政府間だけではなく、研究者や企業なども巻き込んだ、新たな枠組みでの規範を考えるべき局面になっている』と話しています。」

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