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2018年8月29日(水)

世界の若者が共感 ケンドリック・ラマー

和久田
「特集は、今アメリカをはじめ、世界中の若者から絶大な支持を集めているアーティストのインタビューです。」

ヒップホップで初のピュリツァー賞

アメリカのヒップホップミュージシャン、ケンドリック・ラマー。

「差別や偏見がなくならない世界」に生きる苦悩をありのままに歌うその音楽は、世界中で共感を集め、アルバムの売り上げは2,100万枚にのぼります。

(「オールライト」より)
「俺たちは大丈夫さ」

「聞こえるか、わかるか?」

「俺たちは大丈夫さ」

ファン
「彼は僕たちの世代にはすごく刺激的だ。」

ファン
「唯一無二の存在」

優れたジャーナリズムに贈られるアメリカのピュリツァー賞。
今年(2018年)の音楽部門で、ヒップホップミュージシャンとして初めて受賞しました。

受賞後 海外メディア初インタビュー

和久田
「ピュリツァー賞の事務局は、複雑なアメリカ社会に生きる難しさが見事に表現されていると評価しています。」

高瀬
「来日したラマーさんが、受賞後海外メディアとして初めてNHKのインタビューに応じました。」

「ヒップホップは『表現の自由』そのもの」

私たちの前に現れたケンドリック・ラマーさんは、物静かで知的な雰囲気の青年でした。

ケンドリック・ラマーさん
「僕にとってヒップホップとは『表現の自由』そのものです。
他人に対してなかなか言い出せないことが音楽の力を借りて言葉となり、口から出てくるのです。」

(「ハンブル」より)
「邪悪な心か、それとも弱さか?直視しろ」

暴力や差別が絶えないアメリカ。
ラマーさんの歌詞には、そこで生きる苦悩が込められています。

(「DNA」より)
「何か言ってみろ」

「俺になにも言えやしないだろ」

「おまえの話を聞くくらいなら 死んだほうがマシ」

「俺のDNAは偽物のためにあるわけじゃない」

ケンドリック・ラマーさん
「ライブで曲を歌うと、肌の色や民族の異なる多くの人が聴きに来る。
これが究極の目標です。
2時間のステージに存在するのは争いではなく『愛と幸福感』だけなんです。」

過酷な現状を訴えたい

銃撃事件が絶えない カリフォルニア州・コンプトン地区。
この「全米で最も危険」といわれる場所で、ラマーさんは生まれ育ちました。
ラップを始めたのは、友人が銃撃されるなどの過酷な現状を訴えたいとの思いからでした。

ケンドリック・ラマーさん
「僕たちは、自分たちでは手に負えない環境で育った。
ヒップホップは僕にそうした感情を表現するチャンスをくれた。
他人がどう思うかは関係なく、自分にとっては吐き出さなければいけない感情だったんです。」

代表曲の「オールライト」。
やり場のない思いをつづりながら、それでも「大丈夫さ」と語りかけます。

(「オールライト」より)
「俺たちだって傷ついて落ち込んだこともあるさ」

「俺たちのプライドは低く 行き先も分からず 途方に暮れていたんだ」

「俺たちは大丈夫さ」

「俺たちは大丈夫さ」

「俺たちは大丈夫さ」

「聞こえるか、わかるか?」

「俺たちは大丈夫さ」

世界中に広がるメッセージ

この曲が、思わぬ広がりを見せます。
全米に広がった差別撤廃運動。
そのデモで人々が歌いはじめたのです。
この動きはアメリカを超えて世界にも広がりました。

ケンドリック・ラマーさん
「僕の作品や音楽で学んできたことは、僕自身のためだけではなく、逃げ場のない街に育った子どものためだったんです。
今はこうしたコミュニティにとどまらず、世界中に広く伝えることができていると思います。」

若者のシンボル

なぜ彼の歌が支持を集めるのか?
専門家はかつて時代を動かした、あるアーティストとの共通点を指摘しています。

慶應義塾大学 大和田俊之教授
「年配の方々にとってのボブ・ディランが、今の若い人たちにとって ケンドリック・ラマーであると言っていいのではないかと思う。」

  

公民権運動やベトナム戦争に揺れた1960年代。
世界中の若者がボブ・ディランさんの曲を通じて自由と平和を訴えたように、今ラマーさんの曲が若者のシンボルになっているというのです。

慶應義塾大学 大和田俊之教授
「ケンドリック・ラマーの言葉を通して音楽だけでなく“世界とつながる感覚を持つ”若者が増えている。」

日本でも多くの人の心を動かす

ラマーさんの音楽は、日本でも多くの人の心をつかんでいます。
今年のフジロックフェスティバル。
土砂降りの中、多くのファンが詰めかけました。

(フジロックフェスティバルのライブより)
「忠誠心 王族の血が、俺のDNAの中にある」

「コカインと戦争と平和が、俺のDNAの中にある」

「力、毒、痛み、喜びが、俺のDNAの中にある」

  

ファン
「感動しました!
胸に迫ってくる。
いてもたってもいられない気持ちになりました。」

影響を受け新たな行動を起こす人も

彼に影響を受けて、新たな行動を起こす人も現れています。
ラマーさんのアルバムの街頭広告。
黒塗りにされた文書の上に、アルバムのタイトルが書かれています。
行政文書の隠蔽や改ざんのニュースを見た広告デザイナーが、自分なりの問題意識を表現したいと独自に考えました。

広告会社 田中陽樹さん
「彼が発するラップのメッセージには、彼自身が味わってきた生活の中での不満だったり、彼自身が戦っていることに対しての問題提起がたくさん入っていて、僕らなりに問題提起をしたくてこういった広告になりました。」

「メッセージは“自己表現”」

音楽を通じ社会の苦悩をメッセージとして発し続ける、ケンドリック・ラマーさん。
若者たちに自ら考え行動するよう訴えています。

ケンドリック・ラマーさん
「伝えたかったメッセージは“自己表現”なんです。
感情を表に出すことを恐れてはいけない。
僕のストーリーが、普通の小さな男の子のストーリーになり、日本の若い少年少女のストーリーになる。
ヒップホップは世界中に広がっていくはず。
いつか火星にだって。
それは誰も止められない。
音楽の力です。」

世界中の若者が共感する身近なメッセージ

高瀬
「ピュリツァー賞受賞ということで、暴力反対・差別撤廃という直接的なイメージを描いているのかなと思った方もいるかもしれませんが、どちらかというと、現状をありのままに描いていましたよね。」

和久田
「社会がこう変わるべきという方向性を示すのではなくて、感情を吐露している印象でした。」

高瀬
「そして『大丈夫だ』という前向きなメッセージを添えているところも印象的でした。」

和久田
「世界中の若者から絶大な支持を集めるケンドリック・ラマーさんについてお伝えしました。」

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