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2018年8月22日(水)

仮設住宅の塾 子どもたちのひと夏

和久田
「熊本地震から2年4か月あまりが過ぎますが、自宅の再建が進まないことなどから、今も3万人近い人たちが仮設住宅などで避難生活を続けています。」


三條
「こうした中、益城町の仮設住宅では、子どもたちのための無料の学習塾が開かれています。
ここで夏休みを過ごす子どもたちに、カメラマンが密着しました。」

唯一集中できる場所 仮設住宅の無料塾

リポート:名古屋純子(NHK熊本)

仮設住宅の一角にある集会場。
朝9時、待っていると次々と子どもたちがやってきます。
夏休みの間、平日の午前中開かれている無料の学習塾。
対象は地域の中学生や高校生です。
ボランティアのスタッフが見守る中、夏休みの宿題や受験勉強に精を出します。

「“box”は複数形にするときに“es”をつけます。」

なぜ、ここに来るのかというと…。

「家だと集中できないから。」

「集中できません。
弟と妹がいて。」

中学2年生の山住春奈(やまずみ・はるな)さんもその1人。
仮設住宅で家族6人暮らし。
自分の部屋はありません。
やんちゃ盛りの妹と弟。
家では夜中にしか勉強できません。
そんな春奈さんにとって、この塾は唯一周りを気にせず勉強できる場所です。

山住春奈さん
「ここに来ると集中できるし、教えてくれる人がいるから、とてもいいところだなって思います。」

「地震で夢をあきらめてほしくない」

塾を運営しているNPOの井下友梨花(いのした・ゆりか)さんです。
子どもの学習を支援したいと、熊本地震の直後に活動を始めました。

NPO カタリバ 井下友梨花さん
「(地震で)自分の夢をあきらめたりとか、将来に向けて意欲が下がったりというのは、すごくもったいないというか、そうなってほしくないので、寄り添える存在として、ここに一緒にいられたら。」

無料塾に通う子どもたちの夢

そんな子どもたちに、夢を書いてもらいました。

「私はパティシエについて学べる高校に行きたいです。」

「私は毎日ここに来て、一生懸命勉強して、志望校に合格できるように頑張りたいです。」

被災から2年 前に進もうとする子どもたち

そんな中、地震の経験を夢に結びつけた子がいました。

中村夢輝(なかむら・いぶき)くん
「将来の夢は、電気と水道の修理屋さんです。
2年前に経験した地震のときに、電気と水道が使えなくて不便だったから。」

中学1年生の中村夢輝くん。
自宅は全壊。
家族四人での避難生活は2年を超えました。
この日は、夏休みの作文のテーマを考えていました。

「これに決めたの?」

中村夢輝くん
「うん、防災。」

夢輝くん、被災した経験について書くことにしました。

“僕は二度にわたる大地震を経験した。”

4月14日の夜、布団の中で大きな揺れを体験した夢輝くん。
家族全員ですぐ避難した、その体験を綴ろうとしますが、突然、書いていた内容を消し始めました。

残っていたのは、地震があった「四月十四日」という日付だけ。

中村夢輝くん
「書こうと思ってるけど、実際書こうとすると頭に文章が浮かんでこない。」

次の日も、その次の日も、夢輝くんは原稿用紙を取り出しては、またしまってしまいます。

作文を書き始めてから6日目、夢輝くんは1人離れた場所に座っていました。
そんな様子を心配そうに見つめる大学生がいました。

水上雄盛(みなかみ・ゆうせい)さん。
高校3年生の時に被災し、仮設住宅からこの塾に通っていました。
同じ境遇の先輩として、夢輝くんに声をかけました。

水上雄盛さん
「覚えてる?2年前のこと。
こんなことあんま聞いちゃいかんけどね。
作文何か書こうとしよったん?」

中村夢輝くん
「すこし手をつけたけど、これだけしか書いてない。」

水上雄盛さん
「正解ないと思うぞ。
だってさ、おまえが経験してるわけじゃん。
おまえがいうことは全部正解だと思うぞ。
だっておまえが思ったことでしょ、真剣な気持ちで。」

水上雄盛さん
「整理できてない感じがありますね。
でも、たぶん整理している人は少ないと思う。
でも作文のテーマを防災にしようと思ってる夢輝くんは、向き合うという姿勢があるんじゃないかと、すごいと思いました。
中学生ですから、彼はまだ。
これからですから、こんなんで負けるなよって正直思ってます。」

2年目を迎えた仮設住宅の学習塾。
厳しい環境にも負けず、前に進もうとする子どもたちの姿がありました。

三條
「熊本地震の直後に避難所の体育館を取材させていただいたことがあるんですけれども、その時に段ボール箱を机の代わりにして勉強をしている女の子がいたんですよね。
ですから、そのことを思い出しまして、意欲のある子どもが一生懸命に勉強できる環境がもっともっと広がっていってほしいなと思いました。」

和久田
「そうですよね。
たとえひと時でも、自分のためだけに使える時間と空間、どうにか持ってほしいと思いますよね。
このNPOでは、寄付を募りながら、なるべく長く子どもたちの学習を支援したいということです。」

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