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2018年5月23日(水)

孤島の野生馬 その姿が人をひきつける理由

高瀬
「厳しい自然を生き抜くある動物の物語です。」

過酷な自然の中で野生化した馬

北海道・根室半島の沖合に浮かぶ、「ユルリ島」。
切り立った断崖。

真冬の厳しい気候が人を寄せ付けない、無人島です。
この過酷な自然の中で、何十年もの間、自らの力で命をつないできた馬がいます。

北海道・根室市 周囲7kmほどのユルリ島

和久田
「こちらがユルリ島です。

北海道・根室市にある、周囲7kmほどのテーブルのような小さな島です。
海鳥の繁殖地で、貴重な草花が数多く残されていることから、人の立ち入りは厳しく制限されています。」

高瀬
「この島には、人と関わることなく生きる、野生化した馬がいます。
その姿を捉えた貴重な写真が、静かな反響を呼んでいます。」

「荒野で生き抜く意志」「人の力では考えられない生命力」

無造作に伸びた、たてがみ。
厳寒の冬。


草花が咲き誇る夏。


やがて命は、自然へと帰っていきます。


今、都内のギャラリーで、ユルリ島の馬の姿を伝える写真展が開かれています。

来場者
「何もない荒野で生き抜いていかなくちゃいけないという、強い意志が感じられた。」

来場者
「人の力では考えられないような強い生命力とか、そういうものを感じる。」

「この島で生きていくために 馬たちが身につけてきたもの」

北海道出身の写真家・岡田敦さんです。

根室市からの委託で、島に上陸し、特別に撮影を続けています。
7年間にわたり、馬のさまざまな姿をとらえてきました。

写真家 岡田敦さん
「これを撮影した時は、急に吹雪になって、馬の様子を見ていたら急に一列に並んだんですよね。
ほかの馬が風に当たらないようにしたりとか、この島で生きていくために体温を下げなかったりとか、馬たちが身につけてきたものなのかなと思います。」

昆布漁の拠点 機械化・・ 時代の変化に翻弄されて

岡田さんが、ユルリ島の馬に興味をもったのは、この地域に暮らす人々の営みと馬が深い関わりを持ってきたからです。
戦後ユルリ島には、多くの漁師が暮らしていた時代がありました。
番屋が建てられ、昆布漁の拠点となっていました。
当時、その漁を支えたのが、昆布を運ぶのに欠かせない馬でした。
ユルリ島にも、多くの馬が持ち込まれます。

しかし、1960年代になると漁の機械化が急速に進み、馬はその役目を終えました。
漁師は島を去る際、馬をそのまま残しました。
連れて帰えれば食肉用として売る以外になく、水もエサもある島で暮らす方が幸せだと考えたのです。
時代の変化に翻弄されながらも、世代を重ね強く生き抜いて来た、ユルリ島の馬。
岡田さんは、その生命力に圧倒されるといいます。

写真家 岡田敦さん
「正直かわいそうだなって思っていた部分もあったが、実際島に行って馬と触れてみたり写真を撮ってみると、馬は全くお構いなしに、たくましく生きていて、人間が想像してることをはるかに超越した次元で生きている姿っていうのが美しく見える。」

「あの島で生きてきた証しを残す」

かつて30頭近くいたユルリ島の馬は、毎年、少しずつ減り続けています。
12年前(2006年)、最後の雄馬がいなくなり、繁殖が止まり、今では3頭の雌馬が残るだけになりました。
岡田さんは、消えていく運命にあるこの馬たちの姿を、最後の一頭まで、写していこうとしています。

写真家 岡田敦さん
「風土とか歴史とか文化とか、継承する人がいないことで、どんどんなくなってしまうものはたくさんあると思う。
あの島で生きてきた証しをきちんと残すことが、未来につながると思うので、そこを責任持ってやることが、いま一番大事だと思っています。」

写真をきっかけに ユルリ島の自然や歴史を学ぶ市民の会が発足

高瀬
「過酷な自然の中で生きている馬たちの、気高さのようなものを感じます。
歴史的な経緯を踏まえると、岡田さんが言うようにかわいそうだなと私たちも思ってしまうのですが、超然と、超越した姿でたくましく生きている姿には、いろいろ感じさせるものがあると思いました。」

和久田
「力強く、そして美しくありましたね。
地元・根室市では、岡田さんの写真をきっかけに、ユルリ島の自然や歴史を学ぶ市民の会が発足し、島をもっと知るための勉強会も始まっているということです。
この写真展は、東京・豊島区の大正大学で来月24日まで開催しています。」

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