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2018年5月21日(月)

ひきこもり「8050問題」 共倒れを防ぐために

高瀬
「買い物などで外出する以外は、家にとどまり続ける、いわゆる『ひきこもり』。
その高年齢化が課題となっています。」

83歳の父親を亡くした 53歳のひきこもり男性

関東地方に住む53歳の男性です。
20年近く自宅にひきこもっています。
何度も働こうと考えましたが、自信が持てず、仕事ができないといいます。

男性(53)
「これが最新だね。」

去年、父親が83歳で亡くなり、すでに貯金はほとんどありません。

男性(53)
「お金が入らなくなったら生きていくすべがない。今のままだったらのたれ死ぬだけ。どうしよう。」

これまで国は、ひきこもりを若者の問題として捉え、こうした40歳以上の人たちの現状を、把握してきませんでした。

「8050(ハチマルゴーマル)問題」 孤立が深刻化

和久田
「こちらの言葉、ご存じでしょうか。

『8050(ハチマルゴーマル)問題』。
8050とは、“80代の親とひきこもる50代の子ども”という親子を表しています。
ひきこもる本人、そして親の高齢化が進んで、経済的にも精神的にも追い詰められ、孤立が深刻化するという問題のことなんです。」

高瀬
「国も危機感を強め、今年(2018年)秋をめどに、40歳以上の実態調査に乗り出すことを決めました。」

和久田
「この『8050問題』のような状況を防ぐため、ひきこもる人たちにこれまでにないアプローチで、仕事をする意欲や自信を持ってもらおうという取り組みが始まっています。」

【取り組み1】専門家とともに 将来の生活設計

お金の専門家、ファイナンシャルプランナーの阿部達明さんです。
社会福祉法人に所属し、ひきこもる人や家族からの相談を受けています。

ファイナンシャルプランナー 阿部達明さん
「息子さんが60歳の時に貯金もゼロになってしまう。」

この日は、70歳の母親と、ひきこもる32歳の息子という2人暮らしの親子からの相談です。
阿部さんは、家計や資産の状況を聞き取り、将来の生活設計を考えていきます。

今は、貯金と母親の収入などがあり、やりくりできているものの、いずれ立ちゆかなくなると母親は心配していました。
阿部さんが試算すると、母親の収入や年金がなくても、資産と合わせ、息子に年間39万円の収入があれば、暮らしが維持できることがわかりました。

「強迫観念が取り払われて ハードルが下がる」

阿部さんは、その試算結果を本人に直接伝えます。
息子は、職場になじめずに仕事を辞めた経験があり、就職は難しいと考えていました。

ファイナンシャルプランナー 阿部達明さん
「いい、ちょっとキャッシュフロー表のほうを…。月で言えば、39万円で割る12にだから。」

ひきこもりの本人
「3万2千500円。
これぐらいだったら何とかなりそうなかなっていうのは正直感じました。
32,000円、3万円ぐらいでいいのかと。
自分の無理のないペースで働いていけばいいんだという。」

ファイナンシャルプランナー 阿部達明さん
「そうだよね。」

今後は、悩みを受け止めながら本人と仕事を探していく予定です。
この2年間で、阿部さんへの相談者のうち20人が、少しずつ働き始めています。

ファイナンシャルプランナー 阿部達明さん
「正社員じゃなければとか、収入が20万円30万円じゃなければいけないという、強迫観念が取り払われて就労に対してのハードルがすごく下がる。
そうすると、『これでいいんだ』と、自分らしく生きていける次の段階に進める。」

【取り組み2】出社せず ひきこもりながら働く

一方、企業のサポートを受けて「ひきこもりながら働く」ことに踏み出す人も出てきています。
平野立樹さん、34歳です。
大学受験のプレッシャーなどで高校に通えなくなり、それから断続的にひきこもりの状態でした。
去年(2017年)から都内の会社で働き始めた平野さん。
出社せず、自宅でホームページの制作や管理などの仕事をしています。

平野立樹さん
「時間に間に合わないといけないプレッシャーと(通勤する)物理的体力の消耗がないのは大きい。」

ひきこもりの人のきめ細かさを生かす

平野さんが勤めているIT企業。
社員10人すべてが、平野さんのようなひきこもりの当事者や経験者です。
社長の佐藤啓(けい)さんです。
別のIT企業を経営していた佐藤さんが、この会社の立ち上げを思いついたのは、いとこがひきこもりだったためでした。

社長 佐藤啓さん
「ひきこもりの方々に関しては、非常にまじめで優秀な方も多いのかなと。
そのきめ細かさ、こういった部分がおそらく生きるだろうなと思ったということです。」

メンタルや体の調子を数値で表し情報共有

特に気をつかっているのが、ひきこもりの人が働きやすい環境作りです。
社員は、毎朝、始業時に自分の体調をチャットで会社に報告します。
メンタルや体の調子を数値で表して、社員全員でその情報を共有するのです。

佐藤さんは、この日、体調が悪いという平野さんに気遣いのメッセージを送りました。

社長 佐藤啓さん
「調子が悪いときはみんなでサポートする。」

時には休みながら、一歩一歩仕事をこなせるようになってきた平野さん。
この春、正社員になりました。
今後も、自分の収入だけで暮らしていけるようにしていきたいと考えています。

平野立樹さん
「今後どうなるかという不安は正直あるが、ここまできたということは1つの事実として1つの自信になる。」

「“自分らしい働き方”の選択肢を企業や自治体が示していくことが大切」

和久田
「取材にあたった高橋記者です。
親子ともに高齢化する前に『8050』になる前に、これから、さらに対策が求められそうですね。」

高橋大地記者(ネットワーク報道部)
「高齢の親と共倒れになるような事態を防ぐためには、ご紹介したように“就労”は一つの手段です。
これについて、こちら。

愛知教育大学の川北稔准教授は、
「働く意欲を高めるためには、本人が達成感を感じたり『必要とされている』と感じられる、“自分らしい働き方”の選択肢を、企業や自治体が示していくことが大切だ」
と話しています。」

プレッシャーを感じている人が“就労”を選び取れるように

高瀬
「『働きたい、働かなきゃ』と思っても、なかなか踏み出せない人がいるのも事実ですよね。」

高橋記者
「実は、長くひきこもる人たちの中には、『働くことが当たり前だ』という社会や周囲の声に、プレッシャーを感じている人が多くいます。
そうした人たちでも、今後の人生を生きていく1つの選択肢として“就労”を選び取れるような、柔軟な社会環境を作っていくことが大切だと感じました。」

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