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2018年5月17日(木)

通学路の安全 犯罪者はここを見ている

和久田
「新潟市の小学生の女の子が殺害されJRの線路に遺棄された事件。
専門家が『ここが危険』と指摘した、まさにその場所で連れ去られた可能性があるんですね。」

『安全そうな通学路に危険な場所が潜んでいる』

井原
「はい、そうなんです。

犯罪学が専門で、これまでに数千か所の事件現場を分析した立正大学の小宮教授によると、今回の事件は『一見、見通しが良くて安全そうな通学路にも、周囲の目が届かない危険な場所が潜んでいることを示している』と言います。

事件のあった線路沿いの道には、他にも、こうしたブロック塀が続いている場所があります。
こちらは塀で視界が遮られ、反対側も線路で目が届かない。
ここが、犯罪者にとっては周りの目が届かないトンネルのような場所に見えて『密室』と呼んで犯行を行いやすい場所だと考えるんだそうです。」

高瀬
「犯罪を行おうと狙って街を見ると、私たちとは違うものが見えてくるんですね。」

井原
「小宮教授は、そうした犯罪が起きやすい場所を『ホットスポット』と呼んで、注意を呼びかけています。」

「犯罪者はどちらを選ぶか」という視点

小宮教授が、防犯対策の指導を行っている神奈川県藤沢市です。
住宅街を一緒に歩いてみると…。

立正大学 小宮信夫教授
「子どもの性犯罪(被害)多い場所が階段の踊り場。
右側に階段がある。

奥にも階段がある。
犯罪者はどちらの階段、選ぶか。」

正解は、奥のマンションの階段。
壁があって、下が見えないからです。

「不審者が入りやすく周囲から見えにくい場所」とは?

こうした、不審者が入りやすくて、周囲からは見えにくい場所が町の中にはたくさんあります。

まず、フェンスや壁がなくて入りやすい駐車場。
ミラーで周囲を物色できて、待ち伏せしやすい場所です。

公園の遊具の近くにあるベンチは、不審者が子どもに声を掛けても不自然に見えません。

そして、空き地。
見通しはきくものの民家から離れていて、連れ去られても気づきにくい場所です。

犯罪者は こんなふうに声をかけて 連れ込む

木で完全に視界が遮られている、このトイレもホットスポットです。

立正大学 小宮信夫教授
「犯罪者が子どもに声をかけて、“面白いものがあるよ”と連れてくる。

“おかしいな、いたいた、かわいい赤ちゃんの猫がいる、こっちこっち、かわいい”と言って、連れ込んで閉めちゃう。」




さらに、歩道に植え込みのある、この道路。
植え込みが切れている場所がホットスポットです。

立正大学 小宮信夫教授
「学校の先生が呼んでるよ、すぐ来てって、早く来て、行こう。」

誘拐犯は、植え込みやガードレールの切れた場所に車を止めて待ち伏せすることが多く、一瞬の隙をつきます。
こうした場所で、人が乗ったまま長時間止まっている車には注意が必要です。

ホットスポットを意識したパトロールが大切

小宮教授は、子どもの安全を守るには、ホットスポットを意識したパトロール「ホットスポット・パトロール」をすることが大切だと指摘します。

立正大学 小宮信夫教授
「従来のパトロールの手法はホットスポットを意識せず、ただ漫然と行ったり来たりしているだけ。
ホットスポットをまずは探して、そこに入り込んで、そこに留まる、たたずむ。
犯罪者にプレッシャーを与えれば、犯罪者は“ここのパトロール隊はやり方が違う”、“もしかしたら、われわれの存在を知っているのかもしれない”と思って、脅威に感じて犯罪を諦める。」

見回り 声かけ ルート変更

藤沢市では、7年前から小宮教授の指導を受けて、町にあるホットスポットを分析。

取材した地区には、公園や駐車場など主に10か所のホットスポットがありました。
市民ボランティアが、小学校の下校時間に合わせて防犯パトロールを行います。

出発すると、まっすぐホットスポットへ。
途中、駐車場やガードレールの切れ目などに、人が乗ったまま止まっている車がないか、注意深く見ます。
止まっていたら、ノックして声をかけるんだそうです。

ホットスポットに着くと、車を降りて見回ります。
ゴミが落ちていれば拾って、人の目が行き届いている場所なんだと示します。
さらに公園では…。

井原
「パトロール隊の内の2人が公園の奥の方に入っていきました。
見えないところに誰かいないかを確かめています。



声をかけていますね。
コミュニケーションをとりながら活動されてます。」

ベンチに座っている人には声をかけて、パトロール隊の存在を知らせます。



トイレは、ドアを開けてチェック。
パトロールのルートが固定化すると見破られてしまうため、毎回、回る順序を変えたり、同じ場所を何度も回ったり、ホットスポットを「犯罪を起こしにくい場所」にしようと努めています。

犯罪認知件数が5年間で6割減少

今回取材した地域では、「ホットスポット・パトロール」を始めて以降、警察が犯罪と把握した認知件数が、この5年間で6割減少するなど、大きな成果をあげています。

藤沢市 湘南大庭地区 防犯協会 柳沢知子会長
「(ホットスポットの)ポイントを役員全員が共有して持っているので、十分なパトロールができる状況を作っていけると思う。」

“防犯ボランティアの高齢化”にも大きな効果が

高瀬
「犯罪の認知件数が6割も減ったというのは、大きな成果ですね。」

井原
「犯罪者の心理を読んで、先回りしてパトロールの目が光っていることを示す。
そうすることで、犯罪を諦めさせられるんですね。
さらに、ホットスポット・パトロールにはもう1つ『防犯ボランティアの高齢化』という悩みにも効果があります。
というのも、防犯パトロールは、全国で高齢のボランティアに依存していて、メンバーの確保が難しいのが実態です。

こちら、取材した藤沢市の防犯パトロール隊も、平均年齢70代だったんですが、ホットスポット・パトロールであれば、限られた人数であっても、効率的・効果的に回れるので、子どもの安全を守ることができる。
ボランティアの確保に困っているところは多いと思いますが、ホットスポット・パトロール、大きなヒントになりそうです。」

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