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2018年5月9日(水)

“減反廃止”でも コメの生産が増えない

高瀬
「今年(2018年)からコメ作りでの、いわゆる『減反政策』が廃止されました。
およそ半世紀ぶりの政策の転換です。」

和久田
「『減反』は、国が、コメ余りを防ごうと、生産を制限する仕組みです。
それが廃止され、今年から、自由に生産できるようになります。
貿易自由化に備えて、日本のコメ作りの競争力を高めようというのが、主な狙いです。」

7割を超える都道府県 前年並みの作付

和久田
「では、それで生産が増えそうなのか、というと、こちらをご覧下さい。
今年の作付の見通しです。
黄色で示した通り、7割を超える都道府県が、前年並みです。」

高瀬
「なぜなのか、現場を取材しました。」

コメの生産は増やさない 現状維持

北海道の妹背牛町。

こちらの農家では、およそ33ヘクタール、東京ドーム7個分の土地でコメを生産しています。
佐藤忠美(さとう・ただみ)さんです。
土地も資金にも問題ありませんが、コメの生産は増やさないと言います。

コメ農家 佐藤忠美さん
「現状維持ですね。
いまのところはね。」

町の人口2割以上減少 深刻化する人手不足

生産を増やさない理由は深刻化する人手不足です。
家族3人で米作りをしていますが、田植えなど繁忙期には、他の人たちに作業を手伝ってもらってきました。
しかし、町の人口は、この10年で2割以上も減少。
地元では人手の確保が難しくなっているのです。

農作業を請け負う会社も対応苦慮

この日訪ねてきたのは、およそ40キロ離れた旭川市の会社の担当者。
農作業などを請け負う会社です。
佐藤さんは、今月下旬の田植えを依頼しました。

コメ農家 佐藤忠美さん
「25日ぐらいから1週間程度なんですが、お願いしたい。」

しかし…。

農作業を請け負う会社の担当者
「(田植えが)いちばんピークになるのが21日の週になってくると思います。
できるかとなると微妙なところ…。」

今でさえ人手が回らないのに、さらに生産を増やすのは難しい状況です。

コメ農家 佐藤忠美さん
「人を集めてつくる、そこが本当にこれからの時代は大変で難しい。
お米を増産は、人の確保を考えるとできなくなってくるだろうと思います。」

高齢化・人手不足 増産は簡単ではない

和久田
「取材にあたった楠谷記者です。
減反廃止でも、生産が増えそうにないのは、人手不足の問題もあるんですね。」

楠谷遼記者(経済部)
「そうなんです。
大規模に低いコストで生産できる、北海道はいまやコメの主要な産地です。
しかし、その北海道でも、人手不足で、増産はそう簡単ではないということなんです。
農業は高齢化も進んでいますので、全国的にも、この問題は深刻だと思います。
また農家の側からすると、減反が廃止されたからといって、生産を増やして、コメの価格が下がるのは避けたい、といった意識も根強いようです。」

業務用米が高値 外食業界などで懸念が高まる

高瀬
「下がるというより、コメは高値が続いている。
減反廃止で、生産量が増えて価格が安くなる期待もあったのでは?」

楠谷記者
「そうなんですが、期待通りにはいかなそうだ、ということで、特に、外食業界などでは、懸念が高まっています。
私たちが口にするコメは、『家庭用』と、弁当やレストランなどで使う『業務用』に分けられますが、特に『業務用』が高値になっているんです。」

弁当店は 業務用米の価格上昇に悩む

都内のお弁当屋さんです。
安くてボリュームがある弁当が人気です。
売れ筋は、200円から300円の弁当。

1キロもある、大きなおにぎりを買う人も。

お客さん
「350円でボリュームがあって。」

お客さん
「この値段でおなかいっぱいになるっていうのが、コンビニやスーパーだとあんまりないので。」

しかし、コメの価格上昇に頭を悩ませています。
この店では、コメの仕入れ価格が去年より、3割も上昇した、ということです。
商品は値上げできないので、比較的値段が高い弁当の種類を増やしていますが、それも限界だといいます。

キッチンDIVE 宗石慶太店長
「どの弁当にも使う材料なので、3割アップは経営的にはしんどい部分はあります。」

コメを卸す会社は 業務用米の確保に危機感

こうした中、コメを扱う会社では、危機感を強めています。
外食業界などにコメを卸しているこの会社は、いかに安く確保するか検討を重ねています。

「(値段が)数年でここまで上がるのはユーザーにとっても厳しい、死活問題」

「(業務用米を増やす産地を)もっと探していかないといけない。」

担当者は、業務用米を確保しようと、産地を回っています。
この日は150軒の農家のコメを扱う、千葉県の会社を訪ねました。

コメ卸会社 神明 奥寺大樹さん 
「業務用のお米が、いま絶対的に足りない状況の中で、秋にとれた段階で弊社のほうに(業務用米を)融通いただけないかなと。」

「(増やすのは)なかなか難しいのが現状ですよ。」

確保できる確実なメドがたたない、厳しい状況が続いています。

減反が廃止されても『業務用』は増えにくい

高瀬
「弁当や外食、安くはならなそうな印象ですね。」

楠谷記者
「そうなんです。
これには、構造的なものもあります。」
農家は、比較的、高値が見込まれる『家庭用』にシフトしています。
さらに、この他に、家畜のエサになる『飼料用米』があるんです。
ここには、国から手厚い補助金が出るため、生産が増えています。
この両方の影響で『業務用』は増えにくい状況なんです。」

和久田
「この構図が、減反が廃止されても変わってないんですね?」

楠谷記者
「はい。
こうした中で、地方の弁当チェーンの中には、価格が安い、輸入米の使用を増やす動きまで出てきているんです。
業務用米の高値が続いて、このような国産離れが進むようなことは、コメ農家にも、さらには消費者にも、望ましいことではないはずです。
今後、人手不足への対応や、飼料用米に対する補助制度なども含めて、政策全体を、改めて検証することが求められそうです。」

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